2011年IMM PE、未来アセットPE、ハナ金融投資PE(財務的投資家ら)は、斗山インフラコアの中国子会社であるDICC持分の20%を3,800億ウォンに買い付ける方法により投資を行い、斗山インフラコアと投資金回収(Exit)に関する株主間契約を締結しました。すなわち、財務的投資家(FI)らは、3年内にDICCが上場(IPO)されれば、これを通じて投資金を回収し、上記の期間内に上場されなければ、「Drag & Call」約定により投資金を回収することができるようにしました。
非上場会社に対する少数持分投資家が、その少数持分のみを売却することは非常に難しいですが、大株主の持分まで一緒に売却Drag along)することになれば、経営権のある持分を取引相手にするものであるため、経営権プレミアムが付いた価格により売却を進めることができるようにする一方、大株主に対しては、経営権を維持するためにその少数持分を優先買付(Call))をすることのできる権利を与えることで、小数持分投資家がDrag又はCallを通じて投資金を回収することができるよう考案されたのが「Drag & Call」です。
実際に、3年が経た後にもDICCの上場がなされなかったため、財務的投資家らはDrag along(共同売却請求権)を行使しようとしました。ところが、少数持分投資家の財務的投資家らが有するDICC持分を大株主の持分と一緒に売却する手続を行うためには、売却準備のための売却者デューディリジェンスが先行されなければならず、大株主の協力が必須であるにもかかわらず、DICC持分の80%を有する斗山インフラコアは、株主間契約における売却者デューディリジェンスに協力する義務が明示されていないという理由から全く協力しなかったため、投資家らは売却手続を進行することができませんでした。
そのため、財務的投資家らは、斗山インフラコアが株主間契約において当然に認められる共同売却請求権手続への協力義務に違反したところ、これは、共同売却請求権の行使のための条件である買付予定者及び売却価格の決定を妨げたものであり、同条件が成就されたものとしてみなされなければならず、その結果、選択債権特定の法理に基づき斗山インフラコアは、投資の当時に目標していた収益率を加算した金額である約7,000億ウォンでDICC持分を優先買付する義務があると主張し、売買代金支払請求の訴えを提起しましたが、1審では敗訴したものの、控訴審において1審判断を完全に覆し、その請求が全て認容される判決が宣告されました。
この事件は、少数持分投資家が有するDrag along(共同売却請求権)の意味に関する韓国初の訴訟であり、ややもすれば財務的投資家らの投資金3,800億ウォン全額を全く回収することのできない危機状態において、法務法人世宗は、投資家らを代理し、単純に契約違反による損害賠償請求ではない条件成就の妨害と選択債権特定という民法の原理を適用して論理を構成し、金&張、キヒョン、シンアンドリの連合軍との激しい法理の争いで勝利し、共同売却請求権の意味を確認され、投資の当時目標していた収益まで全て受け取ることができる判決を導き出しました。このような論理構成は、どの法務法人も考えられなかったものであり、法務法人世宗の企業合併・買収(M&A)チーム、訟務チーム、金融チーム、中国チームが一体となって論理を構成し、M&Aの実務、民法の法理、中国法等をはじめとする、参考になるような外国の法原理及び判例等を法院に詳しく説明し、相手方の主張に対して説得力のある反駁で対応したために可能であったものでした。
もし、大株主が少数持分投資家のDrag alongの行使に協力しないことが正当化されれば、Drag & Call構造は、投資契約における投資金回収(Exit)方案として使用されないものと思われます。さらに、このように、大株主が少数持分投資家のExitに協力する義務がないのであれば、企業への大規模投資も行なわれなくなるものと思われます。すなわち、今回の判決により「Drag & Call」構造が投資金回収方案として企業投資において引き続き活用され得ることを確認しており、財務的投資家らの正常的な投資金回収(Exit)にも役に立つものと思われます。