2020年1月29日施行された改正商法施行令第31条第3項では、上場会社が取締役・監査役の選任に関する事項を目的とする株主総会の招集公告時に、(ⅰ)株主総会開催日を基準にここ五年以内に候補者が「国税徴収法」または「地方税徴収法」に基づく滞納処分を受けた事実があるか否か、(ⅱ)株主総会開催日を基準にここ五年以内に候補者が役員として在職した企業が「債務者の回生および破産に関する法律」に基づく回生手続または破産手続を行った事実があるか否か、(ⅲ)法令に定めた就業制限事由等の取締役・監査役の欠格事由の有無(上記の(ⅰ)ないし(ⅲ)を総称して「適格性関連情報」といいます。)を全て公告するものとしています。

そのため、株主総会の招集公告の際、取締役・監査役・監査委員の選任案件の内容に、上記の適格性関連情報を下表の様式に従って記載しなければなりません。

候補者の氏名 / 滞納事実の有無 / 不良企業の経営陣か否か / 法令上欠格事由の有無
   
ところが、上記のように、株主総会の招集公告時における適格性関連情報は、具体的な事案毎に、該当事項の有無に関する判断が困難である場合もあり得るため、留意する必要があります。例えば、(ⅰ)株主総会開催日を基準にここ五年以内に候補者が滞納した事実はあるものの、滞納処分には至らなかった場合、(ⅱ)株主総会開催日を基準にここ五年以内に候補者が役員として在職した企業が、候補者の退任後に回生手続または破産手続を行った事実がある場合、または(ⅲ)社外取締役や監査役、監査委員の欠格事由に該当するか否かについて判断するための事実関係を確認できる資料が不十分な場合や、欠格事由に該当するか否かが法律的に明確でない場合等に、十分な検討および説明もなく、単純に該当の有無を記載してしまうと、以降、適格性関連情報の真偽に対する議論が生じる可能性があり、株主総会決議取消訴訟等を通じて該当役員の選任の効力について争われる虞もあります。

従って、上場会社が株主総会の招集公告を行う時に適格性関連情報を記載する前に、候補者の陳述や確認書の他にも、客観的にかかる陳述や確認内容の真偽を裏付けられる証拠書類を通じて検証し、議論の余地のある事実関係や法律判断に対しては、適格性関連情報についての内容を適切に付記することで、今後発生じ得る紛争を防ぐ必要があります。これは、最近の一連の法改正を通じて、上場会社の社外取締役の資格要件が強化され、登記役員候補者に関する公示事項が一層詳細化したことから見ても、そうであるといえます。