「化学事故予防管理計画」施行に関する細部事項を規定している「化学物質管理法」施行令の一部改正案(以下「改正案」といいます。)が去る3月23日付で国務会議の議決を通過したことにより、4月1日から施行される予定です。改正案は、別途運営されていた場外影響評価書と危害管理計画書を「化学事故予防管理計画書」として統合・運営することを骨子とする化学物質管理法の改正案施行(2021年4月1日施行予定)に備え、場外影響評価書と危害管理計画書に関する事項を化学事故予防管理計画書に関する事項として関連規定の整備をその目的としています。
以下では、化学事故予防管理計画の導入を含め、2021年4月1日の施行を控える化学物質管理法改正案に基づく主な変化および示唆点について検討します。
1. 化学事故予防管理計画制度の導入の背景
改正前の化学物質管理法によると、有害化学物質の取扱施設を設置・運営しようとする者は、あらかじめ化学事故の場外影響評価書*を作成・提出しなければならず、有害化学物質のうち事故対備物質**を一定規模以上取り扱う者は、これとは別に、5年単位で危害管理計画書***を作成・提出する義務も負っていました。
しかし、(i)場外影響評価書と危害管理計画書との重複または代替され得る内容が相当あり(約47%)、(ii)化学事故の予防(場外評価)制度と対応(危害管理)制度との間の連携性を高める必要があるという点を考慮し、環境部は、場外影響評価書と危害管理計画書を統合して一つの「化学事故予防管理計画書」として提出するものとし、これに対する統合審査を実施することとしました。
* 化学事故発生時の周辺環境に及ぼす影響を評価した報告書
** 有害化学物質の中の急性毒性・爆発性等が強く化学事故の発生可能性が高いか、化学事故が発生した場合、その被害規模が大きいものと懸念される物質
*** 取り扱う事故対備物質および該当物質の取扱施設に関する情報、関連する化学事故発生時への対備システム等を盛り込んだ報告書
2. 化学事故予防管理計画の施行および化学物質管理法改正による主な変化
(1)化学事故予防計画導入等による主な変化
改正前 | 改正後 |
有害化学物質取扱時の場外影響評価書および危害管理計画書の提出義務の負担、各々審査を進める | 2つの書類を化学事故予防管理計画書として統合 → 提出書類の減少化および審査期間の短縮(60日 → 30日) |
有害化学物質の取扱施設を取扱量と無関係に場外影響評価書の提出 | 学校、実験室等の事故時の外部影響がない少量取扱施設は提出免除 |
有害物質上下車作業時の化学物質管理者が直接参加する義務の負担 → 同時多発的な作業進行時の作業に長時間所要 | 管理者だけでなく安全教育を受けた取扱者のうち指定を受けた者も参加可能 → 現場で柔軟な安全管理が可能 |
有害化学物質取扱の請負時の一部内容が変更される場合にもすべての内容を再作成して請負申告 | 請負申告変更規定の新設、変更された事項のみを作成して申告可能 |
有害化学物質取扱施設は危険度とは無関係に定期・随時検査の実施 | 研究室と学校施設は定期・随時検査対象から免除 |
(2)化学事故予防管理計画書の作成・履行義務の差等化
分類 | 改正前 | 改正後 | |
1群 | 事故対備物質・有害化学物質の上位規定数量以上の取扱事業場 | 場外影響評価書・危害管理計画書の提出 | 化学事故予防管理計画書の提出(1群用) |
2群 | 有害化学物質の上位・下位規定の数量取扱事業場 | 場外影響評価書の提出 | 化学事故予防管理計画書の提出(2群用、1群用から外部非常対応計画を除く) |
3群 | 有害化学物質の下位規定の数量未満取扱事業場、臨時使用施設等 | (簡易)場外影響評価書の提出 | 免除 |
(3)改正案の主な変化
分類 | 内容 |
有害化学物質管理者の職務変更 | 危害管理計画書の作成・提出から化学事故予防管理計画書の作成・提出および履行に必要な措置へと変更 |
有害化学物質取扱担当者の範囲変更 | 危害管理計画書の作成担当者から化学事故予防管理計画書の担当者へと変更 |
3. 示唆点
改正化学物質管理法は、場外影響評価・危害管理計画書を統合して事業場における関連書類の作成および審査に関する負担を軽減し、現場運営の難点を法改正に反映することにより、各事業場が実質的な化学事故予防活動により集中し、提出した化学事故予防管理計画書を忠実に履行するようサポートすることに、その目的があると言えます。ただし、今後実質的な側面においては、化学事故に対する管理・監督が強化されるものと予想されるところ、これに対する各企業における対策づくりが必要であると言えます。
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