韓国企業支配構造院は、国内外の社会環境の変化によりESG(環境・社会・支配構造)の重要性が日増しに高まっている傾向であるにもかかわらず、韓国支配構造院制定におけるESG模範規準の制定または改正から長期間が経過しているため、国内外の動向および経営環境を反映できていません。この点を改善するため、ESG模範規準を改正することとし、2021年3月10日にESG模範規準(案)を公開しました。
上記につき、法務法人(有)世宗は、以下のように三回にわたって新しく発表されたESG模範規準(案)の内容と示唆点をご紹介する予定です。本ニューズレターでは、その一回目として環境模範規準(案)の主な改正内容と示唆点についてご案内します。
(1) 環境模範規準改正案の主な内容および示唆点
(2) 企業支配構造模範規準改正案の主な内容および示唆点
(3) 社会模範規準改正案の主な内容および示唆点
1. 環境リスクおよび機会要因の把握・管理に関する基準の大幅な新設
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環境リスクおよび機会の経営戦略への反映勧告
旧環境模範規準の場合、環境リスクの予防に重点を置き、それに対する事前管理システムおよび事後措置を構築することを求めることにとどまっていましたが、新しく発表された環境模範規準(案)(以下「本件模範規準(案)」といいます。)の場合、環境リスクのみならず、環境機会を把握し、これを企業経営に積極的に反映することに一層重点を置いています。具体的には、本件模範規準(案)は、環境関連規制の強化、投資環境の変化等に備え、企業に対し、資源活用の効率性の増大、エネルギー源の低炭素化、研究・開発を通じた環境に優しい製品およびサービスの開発、環境に優しい供給網づくり、グリーンボンドの発行による資金調達、環境に関する非財務的リスクに備えるための投資強化、環境責任保険付保による環境事故対策等のような環境経営の拡大を求めており、これを会社の経営戦略に積極的に反映することを勧告しています。 -
環境リスクおよび機会の識別・評価・管理方策づくり勧告
また、本件模範基準(案)では、一般の環境リスクと気候変動による環境リスクを分け、前者に対しては環境経営リスクと機会識別のためのプロセスを構築し、各リスクおよび機会要因の重要性を評価し、経営戦略を樹立するよう案内しています。さらに、気候変動による環境リスクと関連しては、気候変動による座礁資産に対する再評価、かかる資産の低炭素化のための新再生エネルギー、環境に優しい技術・金融の開発および活用を拡大するなど、気候変動の観点から経営戦略の新規樹立を求めています。 -
周期的モニタリング・システムづくり
上記以外にも、本件模範基準(案)は、PDCA(Plan-Do-Check-Act)を考慮した周期的モニタリング・システムを構築し、その点検結果を基に中長期的な環境目標を樹立するよう案内しています。
2. 情報公開等利害関係者とのコミュニケーションに関する基準の強化
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利害関係者範囲の具体化
旧環境模範規準では、利害関係者とのコミュニケーションのため非公式会議、ワークショップ、公聴会等の開催、国内外の環境プログラムへの参加等という単純なものとして定めていました。しかし、本件模範基準(案)では、利害関係者を顧客、役職員、株主、協力会社、地域社会、政府および市民団体、国内外投資家等と具体化しており、企業に対して、環境的影響に関する利害関係者を把握し、かかる利害関係者らの利益を企業の経営活動に反映することを勧告しています。 -
環境情報公開義務の具体化
また、従来は単純に環境関連情報の公開義務のみを賦課していたのに対し、本件模範基準(案)では、報告の範囲を国内または国内外の全事業所に設定し、報告対象を1年以下と設定しており、年間もしくは四半期毎に、時宜にかなった環境情報を定期的に公開するよう案内しています。さらに、環境情報の公開窓口についても事業報告書、持続可能経営報告書、ホームページ等不特定の利害関係者がアクセスできるチャンネルを利用することを勧告しています。
3. 有害化学物質の管理に関する基準の大幅な新設
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本件模範基準(案)は、有害化学物質の使用低減および管理のための規定を大幅に新設し、企業に対し、(ⅰ)企業において使用する化学物質に関する細部情報を共有し、(ⅱ)化学物質インベントリーを構築し、(ⅲ)有害化学物質を低毒性の原材料・副材料に代替するか、関連設備や工程を改善するなど有害化学物質の利用および排出低減策をつくり、(ⅳ)化学物資法規の遵守に関する規制に対して能動的に対応することを強調しています。これは、化学物質管理法の施行後に化学物質関連の事故が減っている傾向ではあるものの、化学事故の場合、発生するとその被害の規模および範囲が膨大であることを考慮し、旧環境模範基準を補足したものと思われます。
4. 環境模範基準(案)改正の示唆点
国内外的に企業の経営または企業への投資時において、過去重視されていた財務的指標を超え企業の環境的影響力等の非財務的成果を考慮する傾向が拡大し、これ以上企業の経営一般と環境経営とを分離することが困難になりました。また、従来は環境に関連する規制の強化または環境へのマイナス影響の減少を図る費用が、企業にとって「リスク」要因に過ぎなかったとすれば、現在は、これらのリスクに速やかに対応して企業の体質改善を行うことにより、新しい機会を作り出せる時代になったといえます。
改正の環境模範基準(案)は、このような傾向を反映し、企業が環境リスクの中で機会を捉え活用するためには、如何なる体系およびシステムを導入し、これを如何に企業経営一般に反映および活用しなければならないのかについてガイドラインを提示したものといえます。また、環境模範基準(案)の勧告・指針は、今後環境関連法令の改正等により、一定規模以上の企業に対して義務付けられる可能性が相当であるため、企業としては、これに対し持続的に関心を持って対応戦略を講じていく必要があるといえます。
上記内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。
5. 今後の日程
① 公開意見のとりまとめ(3月予定)
韓国企業支配構造院は、ESG模範基準改正案をホームページに公開しており、今後3週間に亘り意見をとりまとめる予定です。
② 公聴会の開催(4月予定)
韓国企業支配構造院は、4月中に公開的な意見取り纏めを行って反映した最終改正案をもって公聴会を行う計画です。
③ 改正ESG模範基準の発表(4月予定)
4月中にESG評価委員会でESG模範基準改正案を確定した後、報道資料等を通じて改正ESG模範基準を発表する予定です。
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