韓国の個別消費税法によると、天然ガスは2015年から使用用途(発電用、発電用外)に応じた弾力的な税率の適用がなされており、現在は、4つの使用用途(発電用基本税率、発電用弾力税率、発電用外基本税率、発電用外弾力税率)別に異なる税率の適用を受けています。なお、個別消費税法は、天然ガスを輸入・搬出する場合、天然ガス輸出入業者をもって管轄税関長等に対し、輸入天然ガスの用途別「使用予定量」を記載した使用予定書を提出させることで、上記の使用予定量を基準として用途別の税率適用を行っています。

しかし、天然ガスは、生産基地内の数十個の貯槽タンクに分けて貯蔵されており、それを数千キロに渡る配管を通じて移動させた後、需要先に供給される時点で初めてその用途が区分されます(用途別販売物量が確定となるには、通常、輸入申告時点から3ヵ月を要します。)。すなわち、天然ガスの場合、輸入申告時における用途別「使用予定量」と、それ以降確定する「販売確定量」との間には、物量の差が必然的に発生することになります。

それにもかかわらず、個別消費税法は、上記の物量の差を精算する手続きが設けられていませんでした。上記のような理由から、天然ガス輸出入業者であるH社は、使用予定書上の使用予定量に応じて個別消費税を申告・納付した後、用途別販売物量が確定すれば、かかる使用予定量と販売物量の間の物量の差による税額の差につき、毎月場合に応じて「補正申請(修正申告)・更正請求」を行う方法により、天然ガスに対する個別消費税の精算業務を行っていました。

しかしながら、毎月上記のように物量の差に対する税額を精算することは手続上非常に複雑であるだけでなく、上記の精算は「補正申請(修正申告)・更正請求」の方法により行われるため、納税義務者および課税当局としては、還付加算金、加算税等の不要な費用支出が生じる不合理な問題がありました。

そのため、法務法人(有)世宗は、H社から立法諮問の依頼を受け、H社の税務申告負担を減らせる様々な策を講じて、企画財政部の税制室消費税制課および関税庁の審査政策課等の関係部署と協議を行いました。また、法務法人(有)世宗は、その過程において「当初輸入申告時において、使用予定書に記載した使用予定量を基に天然ガスの用途別使用量に応じた税額を確定した後、輸入した天然ガスの在庫を用途別に管理し、上記の使用予定量と販売確定量との物量の差を次の輸入申告の使用予定量に反映する方法」を、法令の改正ではない質疑応答の方法(関税庁審査政策課担当)により提案しました。

その後、関税庁審査政策課は、法務法人(有)世宗が提案した方法を検討した後、2021年6月29日に同方法による輸入天然ガス精算業務の改善が可能である旨で回答をしており、これにより、H社をはじめとする天然ガス輸入業者らは、用途別在庫管理方法を導入する場合、使用予定書に基づき個別消費税の申告・納付を行った後、別途の税額精算手続きなしに税額を確定することができるようになりました。

本事案は、法令の不完全により、納税義務者と課税官庁において発生していた過重な業務負担と不合理な問題に関し、合理的な法令の解釈および実務的な適用方法を講じて提案することにより解決したという点で大きな意義があるといえます。

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