1. 改正刑事訴訟法施行による警察・検察の捜査権調整

2021年1月1日より施行された改正刑事訴訟法は、警察に1次的捜査権を与え、検察に対しては、腐敗・経済・公職者・選挙・防衛事業・大惨事の6大重要犯罪、警察公務員の犯罪、警察が送致した犯罪およびこれらの犯罪と関連して追加認知した犯罪までとして、その捜査範囲を制限しています。また、警察は、捜査の結果、犯罪の疑いが認められない場合、「不送致決定」を行うことで、独自で捜査を終了できる権限を持つことになりました。

 

2. 事件処理統計に基づく警察捜査の重要性

このように、警察に1次的捜査権および捜査終結権を与える改正刑事訴訟法の施行から約6ヵ月が経過しました。警察庁によると、新しい捜査システムの定着に時間がかかり、警察の今年1月の事件処理件数は、前年同期と比べ65%に減少しましたが、3月頃からは97%から99%まで回復しました。

2021年6月を基準として警察の捜査後に起訴意見として送致した事件に対する検事の補完捜査要求は9.7%と前年比5.6%上昇しましたが、これは、検事が控訴維持のため記録の厳正検討により一層集中し、直接補完捜査を行うよりも、警察に対する補完捜査要求の原則に従った結果とみることができます。これに対し、警察が不送致決定を行った事件に対する検事の再捜査要請は3.2%と前年比1.8%減少していること、また、警察の不送致決定に対して告訴人等が直接異議を申し立て検察に送致された事件は、全体の不送致決定事件のうち5.7%に過ぎないということに関心を払う必要があります。全体の不送致決定事件のうち91%に当たる事件が、検察の再捜査要請や告訴人等からの異議申立てなしに、警察の決定により終了しました。

改正刑事訴訟法の施行前には、警察捜査の結果、嫌疑がなくても検事が最終的に不起訴処分を行うまでは不安定な状態での待機を余儀なくされたものの、現在は、警察捜査終了と同時に、原則的に被疑者の身分から解放されることになりました。また、警察の不送致決定により、検察に再出頭して取り調べを受けていた「二重調査」の慣行が徐々になくなる傾向にあります。

 

3. 警察の捜査人材および専門性の強化

警察は、事件を独自で判断し不送致決定を行うことができる捜査終結権を持ったことにより、各官署に対し、令状申請・不送致決定等のような事件全般に対する審査および分析を担当する捜査審査官、終了後に捜査過程・適正性等を審査する責任捜査指導官を配置し、警察庁と市・道警察庁において弁護士・教授等の外部委員を中心に審議申請・不送致決定等を審議する「警察捜査審議委員会」を設けるなど、「三段階の審査システム」を構築し、自主的に統制装置を強化しました。

また、新設した「国家捜査本部」に捜査業務を総括させており、従来の市・道警察庁の傘下で警正級の隊長の指揮を受けていた知能犯罪捜査隊と広域捜査隊を、総警級隊長の指揮を受ける4つの直属専門捜査隊(強力犯罪捜査隊、金融犯罪捜査隊、麻薬犯罪捜査隊、反腐敗(反不正)・公共犯罪捜査隊)として強化し、いわゆる「特殊捜査」に対する捜査人材と専門性を大幅に強化しました。警察署の重要事件の合計18,642件が市・道庁に報告され、指揮手続を経ており、そのうち44%が市・道庁の直接捜査部署に移管されることもありました。

 

4. 豊かな経験を備えた弁護士による警察捜査段階への対応必要

前述のように、改正刑事訴訟法が施行された後、警察の捜査権が大幅に拡大し、多数の刑事事件捜査が警察内で行われ終了に至っているだけに、告訴人や被疑者の立場からは、警察捜査段階から集中して対応していくことが極めて重要になっています。特に、警察捜査組織およびシステムに大きな変化があったため、随時に変わる捜査状況に合わせ、即座に効果的な対応を行うためには、豊かな警察勤務経験を有している弁護士からの助力を得るる必要性がより高まりました。

法務法人(有)世宗は、元警察のエキスパートを多数迎え入れ、警察捜査への対応力を大幅に強化しました。最近、ソウル地方警察庁長(治安正監)を歴任した金正勳(キム・ジョンフン)顧問、警察庁国家捜査本部に勤務し、江南警察署長を歴任した李在訓(イ・ジェフン)弁護士(警務官)を迎え入れました。上記の内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。

 

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