企画財政部は、2021年7月26日付で「2021年税法改正案」を発表しました。本ニュースレターは、今般の税法改正案の内容のうち、企業において注目すべき国際租税の部分を主に検討しながら主要内容を整理しました。ただし、下記でご説明する内容は改正案として、国会議決を経た法律として確定される前のものです。
1. 外国法人連絡事務所の現況資料提出義務の新設(法人税法第94条の2新設)
現行法上、外国法人が国内において単純な連絡業務、広告・宣伝、情報収集等の外国本社のための予備的・補助的な活動を行うだけの場合には、連絡事務所を設置・運営しており、そのような連絡事務所には、韓国において別途の課税が賦課されません。
今般の改正案においては、外国法人が連絡事務所を設置した後、事実上の固定事業所として運営すること(支店、工場、倉庫等)で租税負担を回避しようとすることを防ぐために、外国法人連絡事務所をもって連絡事務所の現況(代表者の人的事項等の基本事項、外国本社の現況および、国内の他支店の現況、国内取引先の現況等)を翌年の2月10日までに提出するよう租税協力の義務拡大がなされました。新設規定の適用時期は、2022年1月1日以降に開始となる課税年度に関する現況資料の提出分から適用されます。
2. 電子的サービスを供給する国外事業者に対する取引明細の保管・提出義務の新設(付加価値税法第53条の2)
現行法上、国外事業者が情報通信網を通じて国内にゲーム・音声・動画・ソフトウェアまたはクラウドサービス等の電子的サービスの提供を行う場合、付加価値税法に基づき、国税情報通信網を利用して簡易事業者として登録した後、付加価値税の申告・納付をしなければなりません。
今般の改正案においては、このような簡易事業者に対する税源管理を強化するため、申告後の5年間、サービスの種類、被供給者、取引金額・件数・供給時期等の電子的サービスに対する取引明細を保管するよう規定しており、国税庁長が簡易事業者に対し、取引明細の提出を求める場合には、60日以内に当該資料を提出することになりました。新設規定は、2022年1月1日以降に電子的サービスを供給する分から適用されます。
3. 国際取引資料未提出等による過料の減軽(国際租税調整に関する法律(以下「国租法」といいます。)第60条、国租法施行令第100条 )
現行法上、国外の特殊関係者との取引における適正性の有無について判断(海外の特殊関係者との取引の際、価格を調整して海外に所得を移転するかどうか)するため、納税者をもって事業年度の終了後12ヶ月以内に国際取引関連の資料を提出させるものとし、不履行(提出期限以内に未提出または偽りの提出)の際には、1億ウォンを限度として過料の賦課がなされています。
今般の改正案においては、国外の特殊関係者との取引情報を確保するため、自発的な資料提出の督励に向け、過料賦課以前に、国際取引の資料を修正提出するか、または申告期限後に提出する場合にも、当該提出時期により、30~90%の過料減軽を行う規定が盛り込まれています。但し、課税当局からの過料賦課を事前に知って提出した場合を除き、同改正規定は、関連規定の施行日以降に資料を提出したものから適用されます。
4. 納付遅延加算税率の引下げ(国税基本法(以下「国基法」といいます。)第47条の4)
現行法上、納税者が法定期限内に国税を納めなかったり、過少納付した場合には、賦課される納付遅延加算税率は、納付期限の翌日から納付日まで一日当たり0.025%(年9.125%)になります。今般の改正案においては、該当納付遅延加算税率を一日当たり0.019%~0.022%(年6.935%~8.03%)の範囲以内で決定するよう引下げ、納税者の負担が緩和されるものと予想されます。具体的な加算税率は、当該施行令改定時の市中銀行における連帯利子率を考慮して決定され、この改正規定は、当該改正施行令の施行日以降に賦課される分より適用(但し、当該改正施行令の施行日以前に納付期限を経過したものについては、従前の規定を適用)される予定です。
5. 外国人就労所得に対する恩恵適用期限の延長(租税特例制限法第18条及び18条の2)
エンジニアリング技術の導入契約に基づき、国内において技術提供を行ったり国内の研究所において研究員として勤務するなどの外国人技術者が、国内で初めて就労を提供する場合、就労所得につき5年間所得税の50%が減免されます。また、外国人役職員等の外国人労働者が、国内において初めて就労を提供する場合の就労所得については、最初の勤務から5年間は総合所得累進税率の代わりに、19%(地方所得税を含む際には20.9%)の単一税率(非課税、控除、減免および税額控除の排除)を選択することができます。このような外国人に対する税制メリットを各々2023年12月31日までに適用するよう、日没期限が延長されました。
6. 間接投資会社等の外国納付税額控除方式の改善(法人税法第57条、第73条、57条の2、所得税法第129条)
間接投資会社等(資本市場法上の投資会社、投資目的会等)または投資信託等(資本市場法上の投資信託、投資合資組合等)(以下「間接投資会社等」といいます。)を通じて海外投資を行う場合、投資により発生した所得につき、外国政府に納付する税金(以下「外国納付税額」といいます。)として二重課税の問題が生じます。この問題の解消に向け、現在は間接投資会社等が負担する外国納付税額を国内において還付し(国外投資所得の14%を限度とする。)、投資家への配分時に、税法に基づき14%の税率で源泉徴収しています。
このように、課税官庁から還付された後、配分の際に再度源泉徴収して納付する二段階手続きを簡素化し、納税の便宜を図るため、間接投資会社等が投資家に対し所得支給(利子、配当、金融投資所得)の際に源泉徴収すべき税額から、外国納付税額を差し引いた金額を源泉徴収するよう改善される予定です。なお、間接投資会社等が法人である投資家に対して 投資信託利益以外の配当支給をする場合には、源泉徴収の対象ではないため、法人投資家の外国納付税額控除時に、間接投資会社等の外国納付税額を含めて控除を受けられるようにしました。ただし、改正規定は2023年1月1日以降、間接投資会社等の所得支給分に関して適用されます。
7. 国外投資機構の特例上実質帰属者見做しの要件と租税条約との間の関係の明確化(法人税法第93条の2、所得税法第119条の2)
外国法人が国外投資機構を通じて国内源泉所得の支給を受ける場合、一般的には国外投資機構は導管に該当するため、外国法人を実質帰属者とみるものの、一定要件を満たす場合には、国外投資機構を実質帰属者と見做しました。今般の改正案においては、このような判断基準に租税条約にて定める要件を反映し、租税条約との一貫性を維持するものとしました。
現行 | 改正案 |
次のいずれかに該当する場合、国外投資機構を実質帰属者と見做す | (同左) |
1. 次の各目をすべて充足する場合
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1. 次の各目をすべて充足する場合
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2. 国外投資機構が租税条約にて実質帰属者として認められる場合 | 2. 1に該当しない国外投資機構が
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3. 国外投資機構に投資した投資家の立証ができない場合 | 3. (同左) |
改正規定は、2022年1月1日以降、国内源泉所得を支給するものから適用されます。
8. 正常価格算出方法適用時に損失発生企業を比較可能な取引対象に含む根拠 づくり(国租法第8条、同法施行令第15条)
現行法上、国外特殊関係者との取引の時には正常価格により取引しなければならず、国租法においては、正常価格の算出方法によって比較可能な第三者との通常的な取引で適用される価格の算定方法等を提示しています。今回の改正案においては、正常価格の算出に向け、比較可能な取引対象を選定する際、経済低迷等の経済状況に応じ、損失が発生している企業も含まれるようにすることで、コロナウイルス等の特殊な状況下においても、経済的実質を反映して正常価格を算出できるものとする根拠を設けました。同改正規定は、2022年1月1日以降に決定・更正する分から適用されます。
9. 所得対比の過多利子支給金額関連規定の明確化(国租法第24条、同法施行令第54条)
国内法人が国外特殊関係者からの借入金額がある場合、借入金に対する純利子費用が各事業年度の所得金額に減価償却費と純利子費用を加算した金額(以下「調整所得金額」といいます。)の30%を超える場合、その超過金額は損金として算入しません。今回の改正案を通じて、調整所得金額の範囲と損金不算入の順序を明確にしました。
現 行 | 改 正 案 |
<新設> | 調整所得金額が負の数である場合「0」とみなす |
損金不算入の順序
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損金不算入の順序
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<追加> |
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<追加> |
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改正規定は、2022年1月1日以降に開始する事業年度の分から適用されます。
10. 判決等の確定による賦課除斥期間特例適用範囲の拡大(国基法第26条の2)
国税の一般的な賦課除斥期間は5年となっているものの、異議申し立て、審査請求、審判請求または行政訴訟等に対する決定や判決が確定となる場合、判決の対象となった課税標準または税額と連動する他の課税期間の税額等についても調整が必要になり得るため、これらに対しては判決が確定となった日から1年間、賦課除斥期間の特例規定を定めています。
当初は、このような特例規定が判決と連動する同一税目の他の課税期間の税額等についてのみ適用されていたものの、今回の改正案では、判決と連動する他の税目の税額等についても適用されるように範囲が拡大されました。改正規定は2022年1月1日以降、行政訴訟等の不服に対する判決、決定が確定したものから適用されます。
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