2021年9月29日に、法務法人(有)世宗の労働グループは、自動車部品メーカーのA社を代理する裁判において、経営成果給(特別成果賞与金)が賃金に該当しないという判決を受けました。特に本件は、最近の経営成果給を賃金と見なす下級審判決の流れにより、経営成果給を賃金とした第一審判決を覆す事例として、その意味は大きいものといえます。

A社は2010年、会社に当期純利益が発生する場合に、当期純利益の25%以内で支給できる「特別成果賞与金」を労使合意により新設し、これを平均賃金に算入しないものとして団体協約等に明示しました。ところが、A社の元・現職の労働者らは、会社が退職年金負担金の基準である平均賃金を計算する際、特別成果賞与金等が含まれていないと主張し、退職年金納付履行請求訴訟を申し立てました。

特別成果賞与金等を労働の対価である賃金として見ることができるかが主な争点となりましたが、原審においては、特別成果賞与金の支給事由と支給基準が団体協約等に定められており、会社が2010年以降、労働者に対して特別成果賞与金を継続的に支給しており、その金額が個別労働者の年俸において相当な割合を占めるという理由により、これを労働の対価である賃金として認めていました。

控訴審にて新たに事件を担当することになった法務法人(有)世宗の労働グループは、特別成果賞与金は、当期純利益が発生した場合にのみ支給されるが、当期純利益はその年の会社経営成果の総体として、原資材価格、会社の財務状況、関連業界と市場全体の状況等、労働者が統制できない複数の要因によって異なり、毎年確定して発生するものではないため、労働の対価と見るのは難しいという点を集中的に論証しました。また、労使いずれも、特別成果賞与金が超過利益の分配として賃金ではないと合意し、これを平均賃金に含まなかったという点を強調しました。

控訴審は、このような法務法人(有)世宗の主張を受け入れ、特別成果賞与金の賃金制を否定し、労働者側の請求を全部認容した原審判決を取り消し、大部分の請求を棄却しました。

本判決は、経営成果給の支払基準が予め定められていたとしても、その本質が企業の利益分配の性格を有するものであるならば、賃金に該当しないと明らかにしたことに意味があります。最近、経営成果給の賃金性につき、法院の判断が分かれている中、法院が経営成果給の本質的な性格に注目し、賃金性の如何を判断したということに示唆を受ける点があるといえます。

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