去る11月11日付で代理店取引の公正化に関する法律(以下「代理店法」といいます。)の改正案が国会本会議において議決されました。今回、国会本会議を通過した改正案は、政府への移送、国務会議への上程等の手続きを経て公布される予定となっており、公布日から6ヶ月が経過した日より施行される予定です。今回の代理店法改正案は、①供給業者が報復措置として代理店に損害を与えた場合に対し、懲罰的な損害賠償制度を導入し、②代理店分野への同意議決制度の導入をその骨子としています。

 

1. 代理店法改正案の主な内容

イ.報復措置に対する懲罰的損害賠償制度の導入

現行の代理店法においては、供給業者が不公正行為を行うことにより代理店に損害を与えた場合には、代理店に発生した損害の3倍以内で賠償責任を負うものとする懲罰的損害賠償制度を設けています(代理店法第34条第2項)。

ところが、現在の懲罰的損賠賠償制度は、購入の強制、経済上の利益提供の強要行為についてのみ適用され、代理店に対する報復措置(紛争調停の申請、公取委への申告、調査協力等を理由とする代理店へ不利益を与える行為)などのように、違法性が高い行為であるにもかかわらず、適用対象ではない場合もありました。今回の改正案においては、懲罰的損賠賠償制度の適用対象に報復措置を追加するとともに、供給業者において故意または過失のないことを立証した場合には、上記規定が適用されないものとして但書を新設しています(改正代理店法第34条第2項)。

ロ.同意議決制度の導入

代理店分野においても、不公正行為による被害をより迅速かつ効果的に救済すべき必要性が提起されたことにより、公正取引法および表示・広告の公正化に関する法律に続き、代理店法にも同意議決制度*が導入されました(改正代理店法第24条の2、第24条の3)。
* 同意議決制度:公取委の調査や審議を受けている事業者が是正策を公取委に提出し、公取委が適切であると認める場合、当該行為の違法性を判断せずに、是正策等の趣旨の議決をすることにより事件を終結させる制度

ハ.調停調書の効力規定の整備

現行の規定は、調停手続きを経て協議会が作成した調停調書に対してのみ、裁判上の和解の効力を与えていました。しかし、紛争当事者が調停手続き開始前に自ら調停をした後に協議会に要請して作成した調停調書についても、合意事項の履行を担保する必要があるため、裁判上の和解の効力を与え(改正代理店法第21条第5項)、合意事項を履行する際、公取委が是正措置および是正勧告を賦課しないものとしました(改正代理店法第21条第5項)。

ニ.自律的取引慣行の改善を通じた法違反予防策づくり

今回の改正案には、供給業者および代理店が公取委に標準代理店契約書の制定・改正を要請できるようにする規定を新設し、標準代理店契約書に現場の特性や取引慣行等が適切に反映されるようにしました(改正代理店法第5条の2)。なお、公取委が公正な代理店取引秩序の確立に向け必要な場合、事前に望ましい業種別の取引基準を定め、供給業者に対して勧告することができるものとする法的根拠も設けました(改正代理店法第12条の3)。

 

2.示唆点

代理店への報復措置についても、懲罰的損賠賠償制度が適用されることにより、供給業者としては、今後の紛争調停、公取委の調査等がある場合、代理店との関係において、ややもすると報復措置として誤解を受けたり問題となり得る行為をしないよう留意する必要があります。

また、今のところ同意議決制度の活用事例はそれほど多くないものの、最近、公取委が同意議決制度の活性化に向けて精力的に広報・制度改善等の努力を行っているため、代理店法違反が問題となる場合、同意議決制度の利用も考慮してみる必要があるものと思われます。

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