2021年5月18日に改正された生活化学製品および殺生物製の安全管理に関する法律(以下「化学製品安全法」という。)の施行により、2021年12月31日から環境部長官が製造物責任法に基づく製造物の欠陥がある殺生物製品(殺虫剤、殺菌剤等)の使用により、健康上の被害が生じた被害者に対して迅速に救済給与を支給し、原因製品の製造・輸入業者に対し分担金を賦課・徴収できるものとする『殺生物製品被害救済制度』が施行されました。

 

1. 殺生物製品とは

「殺生物製品」とは、(人体に使用しない物品として)有害生物の除去等を主な目的とする、(i)一つ以上の殺生物物質によって構成される、または殺生物物質と殺生物物質ではない化学物質・天然物質または微生物が混合する製品または(ii)化学物質または化学物質・天然物質または微生物の混合物から殺生物物質を生成する製品をいいます(化学製品安全法第3条第8号)。

被害者は、健康被害を起こす製品が被害救済対象となる殺生物製品であるか否かを、チョロクヌリ(ecolife.me.go.kr)または化学製品管理システム顧客支援センター(1800-4840)に問い合わせる方法等を通じて確認した後、韓国環境産業技術院を通じて環境部長官に対し殺生物製品被害救済給与を申請することができるようになりました。

 

2. 主な内容

(1) 救済給与の支給

化学製品安全法第20条第1項により、環境部長官の承認を得た殺生物製品のうち、製造物責任法に基づく製造物の欠陥がある製品に晒されて発生した人の生命または健康上の被害(後遺症を含む。)として、次の各号のいずれかに該当し、被害者が賠償を受けられない、または被害を迅速に救済する必要がある場合、被害者またはその遺族は、環境部長官に対し殺生物製品被害の救済のための給与(以下「救済給与」という。)の支給を申請することができます(化学製品安全法第48条の4第1項および第48条の2第1項および同法施行規則第45条の2)。

  • 1.    殺生物製品被害の原因を提供した者(以下「原因者」という。)が無資力である場合
  • 2.    集団的被害が発生するなど、殺生物製品被害の規模が相当であり、迅速な措置が必要な場合
  • 3.    殺生物製品被害が深刻で緊急の治療や療養が必要な場合
  • 4.    殺生物製品被害の原因が近い期日内で完全に除去されず、将来にも被害が持続するものと判断される場合 
  • 5.    その他環境部長官が必要であると認める場合

環境部長官は、金融機関からの借入金、化学製品安全法第38条による課徴金、殺生物製品被害救済分担金等を財源として運用する救済勘定を通じ、被害者等に対して次のような種類および内容の救済給与を支給します。

区分 主な内容 支給金額(*)
(2021年基準)
診療費 療養機関で殺生物製品被害による障害または疾病の治療費用のうち、被害者が負担する金額 療養給与費用のうち本人負担金全額
葬儀費用 殺生物製品被害により被害者が死亡した場合には、その葬儀を執り行った遺族に対して支給 277万ウォン
死亡一時補償金 救済給与の支給申請当時、殺生物製品被害により死亡した被害者の遺族に対して支給 4,154万ウォン
障害一時補償金 殺生物製品被害により負傷したり疾病に罹患し治癒した後、障害がある被害者に対して被害等級*に基づき差等支給

* 大韓医学会障害評価基準を活用して被害等級を算定

※1級(全身障害率80%以上)
2級(全身障害率60%以上)
3級(全身障害率40%以上)
4級(全身障害率20%以上)
等級外(全身障害率20%未満または判断不可)
(1級)8,800万ウォン
(2級)6,336万ウォン
(3級)4,224万ウォン
(4級)2,112万ウォン

(*) 支給項目別の支給金額は、国民基礎生活保障法に基づく基準の中位所得に法定比率を乗じて算定することになり、本ニュースレターにおける金額は、2021年基準の中位所得に基づいて算定したものである。

この際、救済給与の支給決定の有効期間は5年で(化学製品安全法第48条の5第1項および同法施行令第37条の5)、原因者が賠償する責任がある殺生物製品被害に対して救済給与を支給した場合であれば、環境部長官は支給した救済給与の範囲(ただし、原因者が殺生物製品被害救済分担金を納付した場合には、その金額を除く。)で、その被害者が原因者に対して有する損害賠償請求権を代位することができます(化学製品安全法第48条の2第2項)。

(2) 殺生物製品被害調査団の構成および運営

環境部長官は、救済給与の支給に関する事項を審議するにあたり必要な事項を調査・研究するために、環境部長官の指名する団長1名を含み、化学・環境・保健等の関連分野の専門家、韓国環境産業技術院の役職員等20名以内の団員により構成される殺生物製品被害調査団を設置および運営することができ、専門的な判断や疫学調査が必要な場合には、非常任調査専門家を委嘱して運営することができます(化学製品安全法第38条の3同法施行令第27条の3)。

(3) 殺生物製品被害調査団の構成および運営

環境部長官は、救済給与の支給審議に必要な事項の調査および研究を実施するため、関係中央行政機関、地方自治団体、被害者および遺族、殺生物製品の製造・輸入業者および殺生物製品の販売・流通業者、その他環境部長官が被害事実、殺生物製品と被害との間の因果関係の究明、救済給与の範囲および救済給与の支給制限等に関する調査・鑑定等が必要であると認める資料を保有する機関、法人、団体に住民登録、家族関係登録、医療記録、健康保険、殺生物製品情報等の資料を要請することができます(化学製品安全法第48条の3第2項および同法施行令第37条の4)。

(4) 殺生物製品被害救済分担金の賦課・徴収

環境部長官は、殺生物製品被害救済に必要な財源の確保に向け、殺生物製品被害を発生させた殺生物製品(以下「原因製品」という。)の製造・輸入業者に対し、次のように算定される殺生者製品被害救済分担金を賦課・徴収することになります(化学製品安全法第48条の16および同法施行令第37条の8)。

  • 「総被害規模」は、被害受付後、殺生物製品被害調査団の調査、殺生物製品被害救済審査専門委員会の検討、生活化学製品および殺生物製管理委員会の審議を経て確定した被害者の被害等級および確認された被害者数を基に算定する。
  • 「原因製品使用比率」は、被害者らが使用した原因製品らの合計量のうち、各個別企業製品の割合を意味する(中企業および小企業に対して減額を適用する場合には、中企業の製品数の3分の1、小企業の製品数の3分の2は除外して計算する。)。
  • 「原因製品販売比率」は、殺生物製品被害調査団の調査により確認された原因製品らの販売量の合計のうち、各個別企業製品の市場シェアを意味する(中企業および小企業に対して減額を適用する場合には、中企業の製品数の3分の1、小企業の製品数の3分の2は除外して計算する。)

殺生物製品被害救済分担金を賦課する際、環境部長官は、納付金額、納付期限および受納機関を記載した分担金納付告知書を原因製品の製造・輸入業者に対して通知し、原因製品の製造・輸入業者は、環境部長官から分担金納付告知書の通知を受けた日から30日以内に、分担金を納付しなければなりません(ただし、中小企業基本法施行令第8条第1項に基づく中企業および小企業については、各算定された分担金の3分の1および3分の2が減額され得ります。)(化学製品安全法施行令第37条の8)。納付期限内に分担金を納付しなければ、納付期限の翌月から納付日の前日までの期間に該当する日数に滞納した分担金の1000分の1を乗じた金額を加算金として支給しなければならないという点に留意する必要があります(化学製品安全法第48条の16第7項および同法施行令第37条の9)。  

なお、賦課された分担金につき異議のある事業者は、分担金納付通知を受け取った日から30日以内に、環境部令にて定める異議申請書に異議申請の事由を証明できる資料を添付して環境部長官に対し提出しなければならず、環境部長官は、異議申請を受け取った日から30日以内に、異議申請の内容を調査し、その結果を申請人に対して通知することになる点(化学製品安全法第48条の16第9項および同法施行令第37条の10)を参考にしてください。

 

3. 示唆点

殺生物製品の使用により健康被害が発生する場合、政府は、調査団の調査、専門委員会の検討および管理委員会の審議・議決手続きを通じ、被害の原因を究明し、被害者に対して迅速に救済給与を支給した後、原因製品の製造・輸入業者に対し損害賠償請求権を代位行使するか、または事後に分担金の賦課ができるようになりました。

これにより、殺生物製品を製造したり輸入する企業らは、殺生物製品関連の法規を遵守するためのコンプライアンス体系の構築と共に、殺生物製品被害救済制度が開始される場合に備え、予め段階別の対応体系策を備えておく方案の考慮が必要であるものと思われます。

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