個人情報保護委員会は、個人情報破棄規定を改善し、個人情報保護法規の違反による課徴金・過料の減免規定を整備する内容を盛り込んだ『個人情報保護法施行令』の改正案を2022年2月9日より立法予告しました。
- 今回の施行令改正は、個人情報保護委員会が2021年9月に発議し現在国会において議論されている『個人情報保護法』の二次改正とは別途のもので、現行の『個人情報保護法』体系において至急改正が必要な事項を中心に推進されました。
『個人情報保護法施行令』改正案の主な内容および示唆点については、次のとおりです。
1. 主な内容
(個人情報破棄規定の改善) 技術的特性により個人情報の永久削除が著しく困難な場合には、匿名情報として処理し復元が不可能なものとして措置した場合、個人情報を破棄したものと見ることができるように個人情報破棄に関連する規制が緩和されます。
- 匿名情報として処理するということは、時間・費用・技術等を合理的に考慮する際、他の情報を使用してもこれ以上個人を識別することができない情報として処理することを意味します(個人情報保護法第58条の2)
(課徴金・過料減免規定の整備) 『個人情報保護法』違反の程度が軽微な場合には、課徴金と過料の減軽や免除ができるように課徴金・過料の減免規定が整備されます。
- 課徴金算定時、違反行為者の負担能力やその違反行為が及ぼす効果、違反行為者が属する市場・産業の与件の著しい変動または持続的な悪化、経済危機、違反行為によって発生する被害の賠償の程度等を総合的に考慮して減軽や免除ができるように変更する予定です。
- 過料の場合にも、小規模な自営業者等の軽微な違反については、減軽や免除ができる根拠が設けられます。
2. 示唆点
今回の改正案の個人情報破棄規定は、変化する新産業分野における技術発展に合わせ、個人情報の規制を改善するために設けられました。これまでブロックチェーン技術等の最先端技術を用いる企業らは、技術的に一部情報の永久削除が事実上不可能であったため、保有期間の経過等により個人情報の破棄に当たり問題等を抱えていました。
また、これまで課徴金・過料の減免規定が不備の状態であったことにより、違反の程度が軽微な場合にも、課徴金・過料の減免を受けるのが難しい状況にありました。
予定どおり、2022年上半期中に施行令が改正される場合、現行法の体系において、個人情報の破棄および課徴金・過料に対する事業者の負担が大幅に緩和されるものと期待されるところ、今回の施行令改正は、国会で議論されている『個人情報保護法』二次改正とは別途に、施行令改正を通じて可能な委任範囲内で、即時に規定緩和が推進されたという点で、意義を見出せるものと思われます。
ご参考までに、課徴金の減免に関連し、具体的な事項については、今後の『個人情報保護法規違反に対する課徴金賦課基準』に規定されるものと見られ、その具体的な減免事由は、個人情報保護委員会の2021年9月9日付『軽微な違反行為対象制裁基準』に規定されている情報通信サービスの提供者等の軽微な違反行為に対する課徴金の未賦課基準と類似する水準で決定されるものと予想されます。
< 軽微な違反行為に対する課徴金未賦課基準 >
◎ 次の各号の事由のいずれかに該当する場合には、個人情報の内容、規模等を総合的に考慮して個人情報委員会にて決定する場合、課徴金の賦課を是正措置命令に代えることができる。 ① 最終課徴金の賦課金額が300万ウォン以下として課徴金賦課の実効性が高くない場合 |
* ①~④の事由により、課徴金賦課の代わりに是正措置命令処分を受けたにもかかわらず、同違反行為により摘発された個人情報処理者に対しては、当該事由を再適用しない。
ただし、現在国会において議論されている『個人情報保護法』二次改正案は、課徴金規定の適用対象を情報通信サービス提供者から個人情報処理者へと拡大し、課徴金上限額の基準を「違反行為と関連する売上高の100分の3」から「全体売上高の100分の3」に変更することを内容としており、今後、関連事業者の課徴金・過料に対する負担が緩和され得るか否かについては、実質的に『個人情報保護法』二次改正案の議論内容によって異なってくるという点に留意してください。
About Shin & Kim’s ICT Group
法務法人(有)世宗は、個人情報分野における独歩的な専門性と人的ネットワーク(元行政安全部次官の金榮浩顧問、元科学技術情報通信部次官の崔在裕顧問等)を擁しており、企業らのための個人情報保護法とGDPRをはじめとする国内外の個人情報規制、個人情報漏洩事件への対応、個人情報保護コンプライアンス体系の樹立等の個人情報保護に関する専門的アドバイスをご提供しております。特に、データ三法の改正および下位法令の制定、関連制度改善において、民間領域において主導的な役割を担っているところ、ICT産業の全般に対する規制動向の把握や官公庁向けの業務、立法コンサルティング、規制の影響力の分析と企業の戦略づくり等に対するリーガル・アドバイスをご提供しております。より専門的な内容やご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。
※ 法務法人(有)世宗のニュースレターに掲載された内容および意見は、一般的な情報提供の目的で発行されたものであり、ここに記載された内容は、法務法人(有)世宗の公式的な見解や具体的な事案についての法的な意見ではないことをお知らせ致します。