1. 仮想資産規制基本法案(MiCA、日本では「仮想通貨規制案 」という。)の欧州議会・経済・金融問題委員会 通過

2022年3月14日(現地時間)、欧州議会(European Parliament)経済・金融問題委員会(Economic Monetary Affairs Committee)は、欧州連合の仮想資産規制に関する基本法案として評価されるMiCA(Market in Crypto-assets)を通過させました。これによりMiCAは、今後の欧州議会、欧州連合政策執行委員会(European Commission)、並びに加盟国の長官により構成されている欧州連合理事会(EU Council)の三者間協議を経て、早ければ、今年6月に最終確定されるものと見込まれます。

この度、欧州議会の経済・金融問題委員会において議論された核心の争点は、プルーフ・オブ・ワーク(proof-of-work, PoW)(*)方式の仮想資産の採掘を禁止する条項を盛り込むのか否かについてのものでした。PoWの仕組みは、ブロックチェーンの地方分権化の特性には合致するものの、エネルギー集約的なコンピューティング・プロセッシングにより作業量が増えるにつれエネルギーの消耗が激しくなり、環境破壊に一助するという問題が指摘されてきました。このような理由により、MiCAにPoW禁止条項を盛り込もうという動きがあったものの、当該条項が施行される場合、PoWの仕組みを採用しているビットコインおよびイーサリアムが事実上禁止される効果が生じるという強い懸念が訴えられることとなり、論争を経た上、表決を通じて、結局、PoW禁止条項は除外されました。その代わりに、欧州議会の経済・金融問題委員会は、欧州連合政策執行委員会に2025年1月1日までに、気候変動に実質的な影響を与える全ての仮想資産の採掘活動を、EU Taxonomy(EUの環境考慮型の分類体系)に盛り込まれるものとする立法案の提出要請を行いました。

(*)PoWの仕組みとは、ブロックチェーンで取引の記録情報を無作為特性を有するナンス(Nonce、ノンスともいう。)の値とハッシュ(Hash)アルゴリズムを適用・設定された難易度を満たすハッシュ値を導き出す方法のことを言います。ブロック生成者(採掘者または検証者)らがコンピューター演算を通じ、ブロックチェーンのブロックヘッダーに提示されている難易度の条件を満たすブロック・ハッシュの値を競争を通じて見つけると、新たなブロックを追加する作業が完了となり、補償されます。このようなPoWの仕組みは、グロックチェーンの地方分権化の特性に符号するものの、コンピュータの性能が発達するにつれ難易度の条件がUPし、コンピューター・パワーの浪費とエネルギーの消耗が増すというデメリットがあります[出所:韓国情報通信技術協会、用語で知る5G/AI/Blockchain]

 

2. MiCAの意義および期待される効果

MiCAは、欧州連合政策執行委員会において推進されているデジタル金融戦略(Digital Finance Strategy)の一環として、2020年9月に欧州議会に提出された法案であり、仮想資産の発行および取引に関する透明性、公開、認証および管理・監督に関する内容で構成されています。これに関し、MiCAは、仮想資産に対する公示義務、インサイダー取引の規制、発行者の資格要件の規制等、従来の資本市場規制システムと類似する規制を適用する計画であるものと知られています。

欧州連合は、MiCAが行われる場合、仮想資産投資家は、仮想資産の市場および個別仮想資産に関する情報をより一層容易に取得することができ、仮想資産市場は健全性・安全性を確保することとなるのは勿論のこと、仮想資産市場が資金洗浄(マネーロンダリング)やテロリスト等の犯罪集団における資金確保の手段として悪用されるリスクを防止してくれるものと期待されています。MiCAが欧州議会と欧州連合理事会を最終的に通過すれば、同法が施行されると期待される2024年から、欧州連合の全加盟国は、仮想資産に対する単一の規制体系の下に置かれることとなります。

 

3.  韓国における仮想資産関連の規制現況および展望

韓国の場合、仮想資産の全般を規律している法令は未だ設けられていないものの、昨年から『特定金融取引情報の報告および利用等に関する法律』(以下「特金法」という。)の改正を通じ、仮想資産事業者の金融情報分析院(FIU)への申告義務、基本的な資金洗浄防止義務等について規律しています。しかしながら、特金法だけでは、急速に成長を遂げている仮想資産市場にうまく対応し難いという指摘が引き続きなされており、現在国会では、仮想資産全般に対して規律する法律案が発議され係留中の状態となっています。

新政府の発足を契機に、仮想資産関連の立法および政策に関する議論がより活発になるものと予想される中、欧州連合の仮想資産規制関連の基本法案であるMiCAが欧州議会と欧州連合理事会を最終通過することになる場合、国内における仮想資産関連の規制体系にも少なからず影響を与えるものと展望されます。これにより、仮想資産事業者および仮想資産関連のビジネスを現在行っている、または計画中の事業者は、これにつき持続的にモニタリングを行う必要があるものと判断されます。

 

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