『気候危機対応のための炭素中立・緑色成長基本法』(以下「炭素中立基本法」といいます。)の施行に関する細部事項を規定している『炭素中立基本法施行令』(以下「本施行令」といいます。)が、3月22日付の国務会議において議決され、3月25日から施行されました。本施行令は、2022年3月25日の炭素中立基本法の施行に基づき、同法から委任された事項とその施行のために必要な事項とを規定することを目的としています。
この度のニュースレターでは、炭素中立基本法施行令の主な内容とその示唆点について検討していきます。
[1]炭素中立基本法施行令の主な内容
本施行令の主な内容は次のとおりであり、その中でも▲気候変動影響評価制度の導入の対象およびその方法が具体的なものとなったということ、▲温室効果ガス管理業者の指定および削減目標の設定に関する事項を具体化したということ、及び、▲2030年中長期における国家温室効果ガス削減目標を2018年温室効果ガス排出量に比べ40%と明示したということに注目する必要があります。特に中長期の国家温室効果ガス削減目標の場合、現時点において企業らに対し何らかの規制や負担が賦課されるというわけではなく、政府の各部処(機関)が当該目標の達成に向け、個別の法令上追加される規制の新設に乗り出す可能性があるということに重要な意味があります。
内容 | 炭素中立基本法 | 本施行令 |
気候変化影響評価制度の導入 |
気候変化影響評価の対象、方法等に関する施行令への委任 |
● 対象
● 方法
● 導入時期
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中長期削減目標の設定 |
排出量削減目標の下限のみの提示 |
● 2030年中長期の国家温室効果ガス削減目標を2018年国家温室効果ガス排出量対比40%を削減することで決定 |
基本計画樹立手続きの具体化 |
政府・地方自治団体に基本計画の樹立義務の賦課 |
● 基本計画樹立手続きの具体化
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管理業者の温室効果ガスの目標管理 |
管理業者の指定基準、目標設定等についての概括的な規定 |
● 当該企業における全体事業所の温室効果ガス排出量に基づく管理業者の指定 ● 1年以内に達成すべき温室効果ガス削減目標につき、管理業者との協議・委員会の審議を経て決定 ● 温室効果ガス総合情報管理システムを通じた企業別の管理目標の達成の如何等の公開 |
緑色経営の促進 |
緑色経営の促進、緑色技術・緑色専門企業の指定に対する概略的事項の規定 |
● 緑色技術の適合性の認証、緑色専門企業の確認制度の導入
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[2]示唆点
本施行令が議決・施行されることにより、3月25日に施行された炭素中立基本法の法体系が完備され、韓国は2050年の炭素中立のビジョンを法制化した14番目の国家となりました。韓国の場合、GDP対比の製造業の割合(26.1%、2020年基準)が高いだけでなく、鉄鋼・化学・精油・セメント等の炭素多排出業種の割合がG5国家の約2倍の水準であるという点に照らし合わせてみると、炭素中立基本法の本格的な施行が産業界に及ぼす効果は大きいものと予想されます。
代表的なものとして、炭素中立基本法施行を通じて環境影響評価に気候変化影響評価が盛り込まれることにより、関連の手続きにかかる時間およびコストが増加するものと見込まれており、企業においては、事業計画の樹立段階から気候変化影響評価に所要する追加の負担について考慮せざるを得ないものと予想されます。今後、気候変化影響評価制度の導入に伴うガイドラインが設けられ、関連実務例も定立していくものと思われるため、関連開発事業の施行者は、持続的に進捗状況を注視していく必要があります。
さらに、本施行令に炭素中立基本法上の最低削減目標(2018年対比35%)よりも強化された中長期の国家温室効果ガス削減目標(2018年対比40%)が明示されることで、今後同目標を履行するための個別法令上の規制が強化されたり、新たな規制の新設が行われる可能性があります。
強化された排出規制は、製造原価の上昇および施設転換のための投入資金の増加というコスト面での負担をもたらし得るだけでなく、政府は、企業別の管理目標達成の如何を公開する予定であるところ、このような関連規制を遵守できなかったという事実の公開がなされる場合、企業におけるESG評価等において否定的な影響を与えることもあります。よって、今後は、国家の基本計画等の政府政策に対する持続的なモニタリングを通じ、予想される規制への先制的な対応策づくりを行い、コンプライアンス体系を構築する必要があります。;
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