[1]直接PPA告示制定の施行

再生可能エネルギー電気供給事業者と電気需要者間における直接電力取引(以下「直接PPA」といいます。)を許容する改正電気事業法(2021年4月)および電気事業法施行令・施行規則(2021年10月)の後続補完立法として、直接PPAの細部内容について定める「再生(可能)エネルギー電気供給事業者の直接電力取引等に関する告示」(以下「直接PPA告示」といいます。)が2022年9月1日付で制定・施行されました。

 

[2]直接PPA告示の主な内容

区分 内容 備考

直接電力取引契約

再生可能エネルギー電気供給事業者(再生可能エネルギー発電事業者の再生可能エネルギー電気供給事業者を含む。)と電気使用者との間に締結される直接電力取引に関する契約

第2条
第10号

基本原則

1.電気事業法令等を遵守すること
2.電力需給と電力系統の安定性を侵害しないこと
3.特定当事者に対し過度な経済的利益や損害が生じるか、他の電気使用者に対して不当な負担がもたらされないこと

第3条

適用対象

1.エネルギー源:再生可能エネルギー(太陽エネルギー、風力、水力、洋上エネルギー、地熱エネルギー、バイオエネルギー)
2.発電設備:設備容量1,000kW超過(発電設備が2つ以上の場合には合算)
3.電気使用者:300kW以上の一般用電力(を)または産業用電力(を)使用する顧客若しくは電気使用場所に300kVA(キロボルトアンペア)以上の受電設備を設置する者

第2条
第3号
第4条

取引条件

1.再生可能エネルギー発電事業者:再生可能エネルギー電気供給事業者に対し年間の保障供給量以上の再生可能エネルギー電気を供給しなければならない
2.再生可能エネルギー電気供給事業者:電気使用者に対し年間の保障供給量以上の再生可能エネルギー電気を供給しなければならない
3.電気使用者:時間帯別の供給量を全て購入しなければならない
4.共通;送電・配電事業者の電気設備利用が必要な場合、送電・配電用電気設備の利用契約を締結しなければならない

第5条

分割取引

直接電力取引と電力市場取引を分割して進めることが可能 (直接電力取引対象の設備容量を除く設備容量が20MWを超える再生可能エネルギー発電設備の場合)

第5条
第5項

不足電力量

電気使用者は時間帯別の供給量が時間帯別の電気使用量に達しない場合、電力市場において直接購入するか、電気販売事業者から供給を受けることができる。

第6条

超過発電量

再生可能エネルギー発電事業者は、時間帯別の供給量を超える再生可能エネルギー電気を電力市場において取引し、これに対するRECの発給を受けることができる。

第7条

契約の締結

1.契約方式:
-  単一の再生可能エネルギー発電設備において生産した電気を一か所以上の電気使用場所に供給できる
-  1つ以上の再生可能エネルギー発電設備において生産した再生可能エネルギーを単一の電気使用場所に供給できる

2.契約条件:
-  電気使用者が複数の場合、各々の電気使用者が設備規模の要件を満たす
-  再生可能エネルギー発電事業者が複数の場合、各再生可能エネルギー発電事業者の設備容量を合算して設備規模の要件を満たす

第8条

契約期間

契約当事者らが合意して1年単位で定める。1年未満では定められない

第9条

契約の申告

契約による最初の電力供給予定日から最低2カ月前までに、韓国電力取引所を経由して産業通商資源部長官に申告する。

第10条

契約の更新

契約期間を5年以下とする場合、再生可能エネルギー電気供給事業者または電気使用者が契約期間の終了する6カ月前から2カ月前までに、他の相手方に対して契約条件の変更または契約解約の意思を通知しなければ、同一条件で契約が延長されたものと見做す。

第11条

契約の解約

1.合意解約:当事者間での合意解約が可能であるが、この場合、効力発生予定日の2カ月前までに解約事実通知書を韓国電力取引所を経由して産業通商資源部長官に対して提出しなければならない。
2.法定解約:電気使用者若しくは再生可能エネルギー供給事業者は、一定の事由が生じた場合、契約を解約することができ、この場合、解約をする当事者は直ちに解約事実通知書を韓国電力取引所を経由して産業通商資源部長官に対して提出しなければならない。

第12条

電力取引代金の算定

直接PPAの電力取引代金は、①電力量の代金、②送電・配電用電気設備の利用料金、③韓国電力取引所に対する取引手数料、④電力市場運営規則に基づく付加精算金額、⑤電力産業基盤基金負担金等に基づいて算定する。

第16条

 

[3]示唆点

再生可能エネルギー電気供給事業者(電気新事業)の登録を行っている再生可能エネルギー電気供給事業者は、直接PPA告示による直接電力取引契約を締結し、従来の電力取引市場を通さずに、電気使用者に対して電気の販売を行うことができます。第三者PPAが認可制で運営されているものとは異なり、直接PPAは申告制を採用するなど、規制が緩和されるため、今後は関連取引がより活性化されるものと期待されます。

取引方法について、再生可能エネルギー発電事業者が直接、再生可能エネルギー電気供給事業者となり、電気使用者に対して電力を販売する方法と、別途の再生可能エネルギー電気供給事業者が再生可能エネルギー発電事業者から電力の供給を受け、これを電気使用者に対して販売する方法(一種の仲介方式)とに区分されます。また、直接PPA告示の導入に関する議論の過程で、分割取引(直接電力取引+電力市場取引)は許容されなかったものの、実際の直接PPA告示においては、一定規模以上の発電設備に対する分割取引を明示的に許容しています。さらに、直接PPAは、単一の発電設備‐単一の電気使用場所、単一の発電設備-多数の電気使用場所、多数の発電設備-単一の電気使用場所の方式いずれも可能となっています。これにより、事業者において直接PPAに関連する多様なビジネスモデルを再現できるものと予想されます。

新再生可能エネルギー供給認証書(REC)に関連し、直接PPAによる電気供給の際、RECは発給されないものの、超過発電量についてはRECが発給され、分割取引の方法により取引する場合にも、電力市場取引分についてRECが発給されます。直接PPA事業を推進する発電事業者にとっては、超過発電量、分割取引等に関連して発給されたRECを通じ、追加の売上創出が可能になるといえます。

設備要件について、複数の再生可能エネルギー発電事業者が取引に参加する場合、各再生可能エネルギー発電事業者の発電設備容量を合算して設備規模の要件を満たすことが可能であるものの、複数の電気使用者が取引に参加する場合には、各々の電気使用者別の設備規模の要件を満たす必要があります。

網使用に関連し、再生可能エネルギー発電事業者は、電気使用者に対する電力供給に向けて韓国電力公社における送電・配電用電気設備を利用できるものの、その利用が必ずしも義務化されているわけではありません。産業通商資源部の報道資料によると、直接PPA制度の参加を活性化させるため、中小・中堅企業に対しては、網利用料金が1年間支援される予定であるとしています。

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