環境部は、循環資源認定の要件緩和を骨子とする「資源循環基本法施行令」の一部改正案(以下「本施行令改正案」といいます。)を8月31日から10月11日までの40日間立法予告しました。本施行令改正案は、循環資源として認められる廃棄物の範囲を拡大し、資源の循環利用の極大化をその目的としています。
今回のニュースレターでは、本施行令改正案の主な内容とその示唆点について検討していきます。
[1]本施行令改正案の主な内容
循環資源認定制度は、人体と環境に害がなく、活用価値が高い廃棄物を循環資源として認め、廃棄物管理法上の規制免除を行う制度として、資源循環基本法をその根拠としています。同制度によって循環資源として認められる場合、当該物質または物は、廃棄物管理法に基づく規制の対象から除外され、自由に排出・運搬・保管・使用することができ、何らの制限なしに、これを有償販売することも可能になります*。
*循環資源として認められていない廃棄物の場合、経済的価値があるとしても、これを自由に販売することはできず、適法な許可を取得した廃棄物処理業者に対してのみ販売・処理委託ができる。
循環資源として認定されるためには、資源循環基本法に基づき一定の要件を満たす必要がありますが、同法においては「▲人の健康と環境に害がないこと、▲有償取引が可能で放置される虞がないこと」という2つの要件を提示しており、追加として施行令で9つの細部要件を提示しています。これにより、現行の資源循環基本法と同法施行令によると、循環資源として認められるためには、合わせて11の要件を満たす必要があります。
本施行令改正案は、従前の9つの細部要件のうち、8つを廃止、1つを新設して循環資源認定可能な範囲を拡大しています。
現行 | 本施行令案 |
①固体状態(水分含有量85%以下または固形物含有量15%以上) | 削除 |
②他の種類の廃棄物の混合☓、他の物質を含む ☓ | 削除 |
③生ゴミの廃棄物、有機性汚泥類、動物性残滓物等に該当しないこと | 削除 |
④追加加工の必要なく製品の原料・材料として使用できること | 削除 |
⑤「循環資源の異物質および重金属等の有害物質基準」告示により使用されること | 維持 |
⑥(有機性廃棄物)の飼料、肥料等の一定の用途でのみ使用すること | 削除 |
⑦当該物質・物を直接使用しようとする者に対して供給されること | 削除 |
⑧循環利用に関する他の法令の用途、方法、基準等に適合すること | 削除 |
⑨(輸入廃棄物)輸出入管理廃棄物の輸入申告時に提出される処理計画書に基づき処理されていること | 削除 |
(新設)焼却・埋立またはこれに準ずる活動に使用するか、海域へと排出しようとする物でないこと |
本施行令改正案が施行される場合、「①人の健康と環境に害がなく、②有償取引が可能で、放置される虞がないこと、③「循環資源の異物質および重金属等の有害物質の基準」告示に基づき使用されること、および、④焼却・埋立またはこれに準ずる活動に使用するか、海域へと排出しようとする物ではないこと」の4つの要件のみを満たせば、循環資源として認められるため、廃棄物の循環資源の認定がより一層容易になるものと予想されます。特に、従前の循環資源認定の代表的な障害となっていた使用者に対する直接供給の要件が廃止されたということからも、そうであると言えます。
[2]示唆点
循環資源認定制度は、世界的な資源循環*の流れに歩調を合わせ、2018年1月1日に初めて導入・施行されました。循環資源として認められる場合、廃棄物管理法に基づく規制を受けなくなるため、コスト削減が可能となり、廃棄物を原料として活用することで経済的な利益を得られるにもかかわらず、厳格な認定要件と複雑な認定手続きのため、これの積極的な活用が出来ずにおり**、認定品目についても、廃紙・廃金属等が主流となっていました(環境部2021年循環資源認定事例集参照)。これにつき、環境部は、昨年から積極行政制度を活用し循環資源の認定基準および手続きを緩和することにより、コーヒーかす、籾殻、米ぬか等を循環資源として認めてきました。
*資源循環とは、資源を取得して製品を生産・消費した製品を廃棄するライン型(linear)構造と対比する概念として、生産および消費の過程で発生する物質等をリサイクルするか、原料として生産等に投入することをいう。
**2020年基準の全体の廃棄物発生量(1億9000トン)に比べ循環資源認定量(169万トン)は0.8%にすぎない。
本施行令改正案は、このような規制の流れを制度的に反映し、循環資源の認定要件を大幅に緩和することで循環資源認定の範囲を拡大したという点に意義があります。本施行令改正案が施行される場合、経済的価値のある廃棄物の活用に混乱が生じていた事業者らにおいて、循環資源の認定制度を通じ、当該廃棄物を適法に販売・使用できるものと思料されます。
これにより、廃棄物を排出する事業者としては、本施行令改正案の立法経過をモニタリングし、自らが排出する廃棄物が改正された施行令に基づく循環資源認定の要件を満たしているのかについて積極的に検討し、廃棄物を「コスト」ではない「収益源」として積極的に活用できる方案を検討していく必要があると言えます。