1.はじめに
韓国取引所は、2022年10月5日に『第3次金融規制革新会議』での議論の結果を基に、「企業負担の緩和と投資家保護のための退出制度の合理化推進」に向けた上場廃止制度の改善方案を発表しました。韓国取引所が発表した改善方案の主な内容を検討してみると、従前の形式的上場廃止事由であった財務要件関連の事由を実質審査の事由へと転換する、または一部の形式的上場廃止事由に対する異議申立てを許容するなど、企業における負担を減らす一方、一般投資家をより保護できる方向に改正されるものと予想されます。これにつき、本ニュースレターでは、韓国取引所における上場廃止制度の改善方案の主な内容についてご紹介させて頂きます。
2.財務要件関連の形式的上場廃止事由の実質審査事由への転換
上場会社の財務要件関連の上場廃止事由は形式的上場廃止事由に該当し、異議申立て等の疎明機会の付与および上場廃止の如何についての審査を行わず、上場廃止手続きを進めてきました。しかしながら、韓国取引所は、今回の改善方案を通じて、今後、上場会社が異議申立て等により企業の今後の業績ではなく、今後の継続性、経営の安定性等の様々な側面を考慮し、上場廃止の如何に関して審査することにしました。
[実質審査転換対象の財務要件に関連する上場廃止事由]
対象事由 | |
有価証券市場 |
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KOSDAQ市場 |
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3.一部の形式的上場廃止事由に対する異議申立ての許容
上場会社がやむを得ない事情(例えば、海外子会社におけるデューデリジェンスの遅れ等)により定期報告書の提出期限内に提出ができない、または企業の存続能力とは直接の関連性がなく、取引量が不足している場合、従来は、異議申立ておよび改善の機会を与えずに、上場廃止の手続きを進めてきました。しかし、韓国取引所は、今回の改善方案を通じ、定期報告書の未提出および取引量不足の形式的上場廃止の事由については、異議申立てを許容するものとしました。
[形式的上場廃止事由のうち異議申立ておよび改善機会の付与の事由]
対象事由 | |
有価証券市場 |
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KOSDAQ市場 |
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4.その他の上場廃止事由の削除および合理化
韓国取引所は、今回の改善方案を通じてKOSDAQ上場会社に適用されていた上場廃止の実質審査事由である「5年連続の営業損失」要件および「2年連続の内部会計非適正」要件を削除し、経営陣の横領等の実質審査の事由が発生したときから5年が経過し、現在の企業状態に及ぼす影響が微々たる場合には、実質審査の対象から除外するものとするなど、一部の上場廃止事由の要件を変更する計画です。
[その他の上場廃止事由の削除および合理化]
対象事由 | 変更内容 | |
有価証券市場 | 株価の未到達 | 形式的上場廃止 ⇒ 廃止 |
KOSDAQ市場 | 5年連続 営業損失発生 2年連続 内部会計制度の非適正 |
実質審査事由 ⇒ 廃止 |
半期単位の資本浸食等の点検 | 形式的上場廃止 ⇒ 廃止(年単位の点検) (投資注意喚起銘柄指定への代替) |
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実質審査事由の発生後5年経過 | 実質審査対象から除外できる |
5.結論
最近のコロナウイルス・ショック、物価の高騰、為替レートおよび金利の引上げ等により多くの上場会社らが財政的な困難を抱えているところ、今回の改善方案により、今後は、上場会社において一時的に財務状況が悪化したとしても、直ちに上場廃止のリスクに直面するのではなく、財務構造等を改善し、営業の持続性を確保して上場適格性を維持できる機会を与えられることになったという点で、今回の改善方案には大きな意味があると言えます。法務法人(有限)世宗の上場維持専門対応チームは、これまで上場廃止に関連する様々なアドバイス等を提供してきた業務実績を有しており、韓国取引所出身の顧問をはじめとし、各分野別の専門家によって構成されているところ、今後、上場維持に問題を抱えていたり、上場廃止に関連してのご質問等がございましたら、いつでも下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。