[1]「エネルギー環境変化による再生(可能)エネルギー政策改善方案」発表の背景
産業通商資源部は、2022年11月3日(木)に第1次新再生(可能)エネルギー政策審議会を開催し、「エネルギー環境変化による再生エネルギー政策改善方案(原文のまま、以下原文で表記。)」を発表しました。同部は、「エネルギー環境変化による再生エネルギー政策改善方案」において2017年12月から施行されてきた「再生エネルギー3020(原文のまま、以下原文で表記。)」およびこれまでの再生可能エネルギー政策に対する評価に基づき、今後、国内の再生可能エネルギー政策における全般的な方向性を再設定する内容を提示しました。
今回の「エネルギー環境変化による再生エネルギー政策改善方案」は、現在は主に再生可能エネルギーの割合縮小にフォーカスを当てて議論されていますが、太陽光発電・風力発電等の国内の再生可能エネルギー産業の全般につき、包括的な影響を及ぼし得る法制度の変更に関する内容が相当盛り込まれているため、国内の再生可能エネルギー発電事業者らは、今回の政策の改善方案に関する綿密な検討と先制的な対応策づくり等を考慮する必要があるものと思われます。以下では「エネルギー環境変化による再生エネルギー政策改善方案」に盛り込まれている主な政策およびそれによる示唆点についてご説明させて頂きます。
[2]「エネルギー環境変化による再生可能エネルギー政策改善方案」の主な内容およびその示唆点
ア.従来の再生可能エネルギー政策の評価
主な評価 |
評価内容 |
太陽光 |
- 小規模(1MW)太陽光を主として普及したため非効率増大
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風力 |
- 風況計測機の乱立により計測機のみを設置して売買する計測機先占現況が蔓延しており、過多な先占プレミアムが発生している
- 風況計測機における優先順位の基準が曖昧で、風況計測機有効地域に対する過度な拡大解釈等による風力発電事業者間での紛争が増えている。
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電力系統・支援負担 |
- 先に立地選定をし、後に系統連系を行うことによる特定地域の偏り(全南・全北・忠南等に全体設備の50%以上が編重している)
- 「1MW以下無制限速度制度」等により再生可能エネルギー系統の補強コストが増加し、かつ接続遅延が起きている
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住民の受入性 |
- 農村太陽光関連の住民における反発および賛成派と反対派による葛藤が増し、大規模な塩害農地における太陽光設置により賃借農民と土地所有者における葛藤が生じている
- 無秩序な山地太陽光の拡大により安全事故の懸念が増している
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イ.再生可能エネルギー政策の方向性
政策の分類 |
政策の内容およびその示唆点 |
中大型の太陽光開発の促進 |
[政策の内容]
- 再生可能エネルギー「固定価格契約入札制度」に関連し、区間別の入札*を廃止し、設備規模とは無関係に、コストが低い設備から落札されるように制度を改善する
* 100kW未満、100kw~500kW、500kW~3MW、3MW以上
[示唆点]
- 設備規模よりも太陽光発電設備の費用の効率性が落札の如何を決定する核心的要素として作用する可能性が高いように思われ、これにより中大型太陽光設備を中心とする太陽光発電市場が改編されるものと期待される
- 現在頻繁に見受けられる、実質同一人によって支配されているものの、名義のみを変えて多数の小規模太陽光発電所を運営している慣行が改善されるものと期待される
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洋上風力乱立の管理 |
[政策の内容]
- 洋上風力発電事業の管理に関連し、下記の制度が新規で導入される予定である
①風力発電の許認可の過程で財務能力・履行可能性・住民受入性につき厳格な基準を適用し許認可の取消根拠規定を設ける
②計測機設置許可後の一定期間(例:3年)以内に発電事業許可の義務化を通じた敷地先占を防止する
③計測機有効地域における最大面積を縮小し、事業者における紛争発生の可能性を最小化する
④計画立地開発方式*の導入および大規模な風力団地に対する共同接続方式への転換
* 政府主導により風力発電の立地発掘を行い、地区の指定および当該地区内における許認可の一括支援等を推進する方案
[示唆点]
- 風力発電関連の許認可が従来のものと比べて相当厳格になるものと予想される
- 風況計測機の有効範囲を計測機基準の正方形面積の最大100㎢へと拡張した告示変更の後、多くの洋上風力団地において事業者における有効範囲の重複問題が生じているものの、優先権判別の基準が明確でなく、多くの法的問題が惹起されているが、これに対する基準定立がなされるものと期待される
- 計画立地開発方式が導入される場合、従来の個別許認可を通じて進められていた風力発電事業者らにおける相対的な収益性の低下、従来の個別許認可地域と計画立地地区との重複の問題(特に従前の事業者が風況計測機を設置していたり、設置する予定で許認可を得ている水域を計画立地に指定してしまうなど)等が主なイシューとして挙がるものと予想される
* 政府は、現在国会に発議されている「風力発電普及促進特別法案」の修正案を設ける方法により、計画立地開発方式を具体的なものとする計画である
- 今後風力発電許認可の取消規定、風力発電の義務化期間、計測機の有効地域、計画立地開発関連の内容が具体的にどのような方法で法制化されるのかについて注意深く見守る必要がある
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発電事業許可時における系統要件の強化 |
[政策の内容]
- 2023年1分期(1~3月)内に、系統連携過密地域(全南、全北、慶北等)を対象として接続運営の実態等について調査し、1MW以下の太陽光発電機における無制限接続制度の日没および太陽光発電事業者における系統連携コストの負担方案を検討する
- 長期的に、発電事業許可時における系統受入限界量を反映した地域別の許可クォーター制度の導入を検討する
[示唆点]
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再生可能エネルギー事業者における系統責任性の強化 |
[政策の内容]
- 一定規模以上の再生可能エネルギー発電事業者の場合、電力市場に入札するものとし、電力市場で中央給電発電機と同等の責任を与える方案を導入する
- 特に、2023年済州島地域において再生可能エネルギー発電事業者の電力市場参加の方法をテスト推進し、後の2025年頃に、全国へと拡大する方針である
[示唆点]
- 発電源別に入札市場が分離されていない場合、再生可能エネルギー事業者の場合、投資コストによる入札単価が高くなり、入札脱落の可能性が出てくるため、事業性に大きな変化が予想される
- 電力市場参加の義務が賦課される再生可能エネルギー発電事業者の規模が決定されていない状態であるが、今後は電力入札に参加する場合、事業性にどのような影響を及ぼすかについて検討が必要となる
- 産業通商資源部は、再生可能エネルギー発電事業者の電力市場参加の方案に関連し、今後公聴会若しくは説明会等を行う計画であると発表しているため、関連事業者においては意見取纏めの手続きに積極的に参加する必要がある
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RPS制度終了の検討 |
>[政策の内容]
- RPS制度の終了およびこれに代わる新たな再生可能エネルギー入札市場の開設等の導入を検討する
[示唆点]
- 再生可能エネルギー政策の重要な軸であるRPS制度が終了となる場合、再生可能エネルギー事業構造に変化が必ず起こるため、今後の政策の方向性について注意深く見守っている必要がある
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住民の受入性の改善 |
[政策の内容]
- 官民における地域協議会の構成、発電事業の段階別に事業者・自治体の遵守事項を具体的に規律する「住民受入性向上ガイドライン」を2022年下半期に提示する
- 太陽光発電等の場合、居住地域から最大100m以上の離隔距離を維持すること等の内容を盛り込んだ「離隔距離ガイドライン」を設ける計画である
[示唆点]
- 住民受入性向上ガイドラインが具体的なものとなる場合、再生可能エネルギー発電事業推進の日程が長期化する懸念がある
- 離隔距離規制の一元化により再生可能エネルギー開発がより容易になるものと期待されるが、住民受入性の向上がどのような影響を及ぼすかについては検討が必要である
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*より詳細な内容については、産業通商資源部の報道資料リンクをご参照ください。
上記の内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。弊社法務法人(有限)世宗のプロジェクト・エネルギーグループは、Chambersにおけるプロジェクト・エネルギー分野でのBand 1 teamとなっており、新再生可能エネルギー関連の法令および制度、資源企業の買収合併、発電所およびプラント建設関連の許認可・ファイナンス等のエネルギー産業の全般に関して、最も専門性の高いアドバイス等をご提供させて頂いております。