大法院は最近、告発人が個人情報が含まれる証拠資料を添付し告発状を捜査機関に提出した行為につき、個人情報保護法第59条第2号にて禁止する個人情報「漏洩」に当たると判断しました(大法院2022年11月10日宣告大法院2018ド1966判決、以下「対象判決」といいます。)。今後の告訴・告発時または捜査途中に、捜査機関に対して証拠資料を提出するにあたり、個人情報保護法違反の問題が発生し得るだけに、上記判決の内容を熟知しておく必要があります。
1.事案の概要
地方小都市所在の農協に勤め退職したAは、自らが勤務していた農協組合長のBが、農協協同組合法違反等の疑いがあるという内容の告発状を警察署に提出する過程で、①Bが共同販売場の内部で仲介卸売を通じて果物を購入する姿が録画されているCCTV(監視カメラ)録画資料等の述べ13件のCCTV録画資料、②業務上知り得たDの氏名、花束等の配達を受け取る者の氏名・住所等が記載されているフラワーデリバリーの内訳書、③ご祝儀・香典の送金内訳が記載されている仮想口座入金依頼書および仮想口座入金他行送金の伝票、取引内訳確認書、④支払会議書等の資料とともに提出しました。
Bは、Aの告発により罰金刑の処罰を受けましたが、Aも上記のような個人情報が含まれる資料を捜査機関に提出したことを理由に、個人情報保護法違反で立件・起訴されました。
※ Aに対して提供された個人情報保護法違反に関連する規定は、下記のとおりです。
[個人情報保護法] 第59条(禁止行為) 個人情報を処理するか処理した者は、次の各号のいずれかに該当する行為をしてはならない。 5.第59条第2号に違反して業務上知り得た個人情報を漏洩するか権限なしに他の者が利用するように提供した者およびその事情を知りながらも、営利または不正な目的で個人情報の提供を受けた者 |
2.法院の判断
一審において、Aと弁護人は、①個人情報保護法第59条第2号、第71条第5号により処罰の対象となるためには、「営利または不正な目的」がなければならず、②Aの行為は、刑法第16条の法律の錯誤に当たり、③刑法第20条による社会常規に違背しない正当行為に該当すると主張したものの、法院はこれを受け入れず、Aに対して罰金500万ウォンを言い渡しました。
しかしながら、控訴審では、『個人情報保護法に基づく個人情報の漏洩には、告訴・告発に伴い捜査機関に個人情報を知らせる行為が含まれない』と判断し、一審の有罪判決を破棄し無罪を宣告されました。
本件は結局、検事の上告により大法院の判断を仰ぐことになったものの、大法院は下記の判決の要旨のごとく、『違法性が阻却され得るかとは別に、一旦、個人情報保護法にて禁止する個人情報「漏洩」に該当する』という旨で控訴審判決を破棄し、事件を再度控訴審へと差し戻しました。
[判決の要旨]
|
3.対象判決の意義
対象判決は、告訴・告発時または捜査途中、個人情報が含まれる資料を捜査機関に提出せざるを得ない現実とはかけ離れた判決であるという批判が可能であるように思われるが、ただ「違法性が阻却され得るかについては、別の問題」であると判示しただけに、依然として無罪の判断がなされる余地があります。
今後、個人情報が含まれる資料を捜査機関に提出する場合には、個人情報保護法違反により立件される可能性を排除できないだけに、より慎重になる必要があり、資料の提出をするに先立ち、下記のような内容等を検討する必要があるものと思われます。
[資料提出前の検討必要事項]
|
※個人情報保護法にて定める「個人情報」、「処理」の定義は、下記のとおりです。
[個人情報保護法] 第2条(定義)同法にて用いる用語の意味は、次の通りです。 1.「個人情報」とは、生きている個人に関する情報として、次の各号のいずれかに該当する情報をいう。 ① 氏名、住民登録番号および映像等を通じて個人を識別できる情報 2.「処理」とは、個人情報の収集、生成、連携、連動、記録、保存、保有、加工、編集、検索、出力、訂正、復旧、利用、提供、公開、破棄、その他のこれに類似する行為をいう。 |
上記の内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。