2022年12月には、企画財政部および政府部処(部署のこと)において、今後のESG関連の業務遂行に向け、2022年に進められたプロジェクトの結果物について順次発表されました。特に、企画財政部は、2022年12月18日に、関連部処合同でESGインフラ高度化方案を公開していますが、ここには、ESG公示内容の整備、中小・中堅企業の支援、ESG投資の活性化、ESG情報・人材支援体系の構築、公共部門のESG経営および投資先導方案等が盛り込まれています。

ESGインフラ高度化方案の内容のうち、2023年に企業らが注目すべき内容としては、ESG公示と供給網の実査対応、ESG債権発行であり、特に、証券の発行、投資および評価に関連する市場参加者は、その中でも、ESG公示とESG債権発行基盤の構築に関する内容に注視すべきであると思われます。

これにつき、今般のニュースレターは、供給網の実査対応K-ESGガイドラインの紹介に次づき、ESG公示制度の整備とESG債権発行の基盤となる関連ガイドラインの最近の動向についてご案内させて頂きます。

 

1.ESG公示制度の整備

(1)国内ESG公示の義務化日程

現在、持続可能経営報告書の任意公示 →(2025年)一定規模(例:資産2兆ウォン)以上の持続可能経営報告書の義務公示 →(2030年)全てのKOSPI上場企業として予定されています。

(2)国内ESG公示基準づくり

国際的にIFRS(国際会計基準)財団は、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)を設立し、ESG公示の国際標準化を推進しています。ESGインフラ高度化方案においては、ISSBのESG公示国際標準化の動向をモニタリングし、国内における産業与件を考慮して国内のESG公示基準づくりを推進することを発表しました。同公示基準は、韓国取引所のESG情報公開ガイダンス、『資本市場と金融投資業に関する法律』等の関連法令等の改正を通じて行われるものと展望されます。

(3)公示負担緩和の方案

現在、企業のESG関連の一部情報は、持続可能経営報告書、企業支配構造報告書の形で公開されており、また一部の項目は、環境情報公開制度、雇用形態現況公示制度、企業集団現況公示制度のように、各個別法令に基づく部処別の公開制度を通じても公開されています。これに関連し、政府は、内容が類似する項目は名称を一元化し、内容が重複している項目については、いずれかの公開制度にて公開した場合には、他の公開制度でも公開したものと見做す「義務履行見做し」規定を漸進的に導入し、公示負担を緩和する予定であると発表しています。

 

2. ESG債権発行基盤の構築

(1)緑色分類体系の改正

環境部は、2021年12月、緑色金融の活性化とグリーンウォッシング(緑色偽装行為)防止に向けた韓国型緑色分類体系ガイドラインを発表しています。緑色分類体系は、環境に優しい経済活動に対する明確な原則と基準を提示するものとして、活動基準、認定基準、排除基準、保護基準の4つの基準に合致する場合、環境に優しい経済活動として分類されるようにしたもので、緑色部分(温室効果ガスの削減、気候変動の適用、水、循環経済、汚染の防止および処理、生物多様性等の分野)の64、転換部門(中小企業事業所における温室効果ガスの削減活動、液化天然ガスおよび混合ガス基盤エネルギーの生産、液化天然ガス基盤水素の製造、エコ環境な船舶建造および船舶運送)の5つの、延べ69の経済活動について規定しています1

2022年12月23日に発表された改正緑色分類体系指針書は、下記の表のような共通分野、原子力の研究・開発・実証、原発の新規建設および継続運転、災害の防止および気候の予測施設の新設等の内容を盛り込んでおり、今回の改正を通じ、緑色分類体系の経済活動は、67の緑色部門と7の転換部門により合計74の経済活動へと変更されました。

<緑色分類体系の改正および新設された主要の経済活動>

部門 分野 経済活動 説明
緑色部門 共通 革新品目の製造 緑色分類体系関連の革新品目を生産する設備を構築、運営する活動
革新品目の素材・部品・装備の製造 緑色分類体系関連の革新品目に必要な素材・部品・装備を生産する設備を構築、運営する活動
研究開発 研究・開発・実証 研究・開発・実証(RD&D; Research, Development and Demonstration)に関連する諸般活動
気候変動の適用 災害防止および気候予測施設・システムの構築・運営 台風、洪水等の気候変動による災害防止または気候の予測施設・システムを構築、運営する行動
転換部門 温室効果ガスの削減

原子力基盤のエネルギー生産(新規建設)

電力、熱のうち一つ以上を生産、供給するために原子力を利用する発電設備、熱併合の発電施設、熱生産設備を構築・運営する活動
※2045年までに建設許可を得た設備に対して認定

原子力基盤のエネルギー生産(継続運転)

設計寿命機関が満了となり継続運転を目的として原子力を利用する発電設備、熱併合の発電設備、熱生産設備を改造する活動
※2045年までに継続運転の許可を得た設備に対して認定


(2)緑色債権ガイドラインの改正

環境部は、2022年12月16日付で韓国型緑色債権ガイドラインを改正し、これを2023年1月1日から施行するものとしました。今回改正された緑色債権ガイドラインは、2022年12月23日に公開された改正韓国型緑色分類体系ガイドラインを反映し、緑色債権の発行に適用できるよう、緑色分類体系に適合しているか否かを判断する「適合性の判断手続き」を主な内容としており、かつ、外部検討機関の登録制度、緑色債権の事後管理(モニタリング)体系、緑色債権の発行に必要な標準手続きと様式も盛り込んでいます。

環境部は、緑色債権ガイドラインと緑色分類体系を通じ、グリーンウォッシングを防止することにより、緑色債権の信頼性が高まるものと展望しており、今年から緑色債権の活性化に向けたコスト支援事業等を推進するものと予想されます。また、緑色分類体系が本格的に適用される2023年より、緑色経済活動に対する投資の活性化のためのコスト支援、教育、広報等が重点的に推進される予定であり、緑色分類体系の拡散に向けた緑色債権以外にも貸付、投資等の与信として適用が拡大されるものと思われます。

(3)社会的分類体系(ソーシャルタクソノミー)の研究および社会的債権ガイドラインの制定

政府は、現在具体化されている緑色債権発行のインフラ確保以外にも、社会的債権の発行促進に向け、2023年中に、社会的分類体系の研究および社会的債権ガイドラインを制定し、環境(Environmental)と社会(Social)を融合した持続可能債権ガイドラインづくりも進める予定です。

 

上記の内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。

1韓国型緑色分類体系(K-Taxonomy)ガイドラインの内容および示唆点 (shinkim.com)