[1]共有水面法改正案の国会本会議通過
昨年の12月18日付で『共有水面の管理および埋立に関する法律』の一部改正法律案(以下「改正共有水面法」といいます。)が国会の本会議において可決され、2022年12月27日に公布されました。改正共有水面法は、共有水面管理庁が共有水面の占用・使用の許可を行う場合に考慮すべき立地の基準を明示的に導入しました。改正共有水面法は2023年6月28日に施行される予定となっています。
[2]改正案の内容
従前の共有水面法 | 改正された共有水面法 |
第12条(占用・使用許可等の基準 共有水面管理庁は、第8条と第10条により占用・使用許可をしたり、占用・使用の協議または承認を行うときに、その許可や協議または承認により被害が予想される権利として、大統領令にて定める権利を有する者(以下「共有水面の占用・使用関連の権利者」といいます。)がいれば、その許可や協議または承認をしてはならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合には、この限りではない。 1.共有水面の占用・使用関連の権利者が、当該共有水面の占用・使用に同意した場合 2.国家や地方自治団体が国防または自然災害の予防等の大統領令にて定める公益事業のために占用・使用しようとする場合 |
第12条(占用・使用許可等の基準) ①共有水面管理庁は、第8条と第10条により占用・使用許可をしたり、占用・使用の協議または承認を行うときには、次の各号の事項を考慮しなければならない。 1.共有水面の占用・使用の面積、期間、方法等の適正性 2.『海洋空間計画および管理に関する法律』に基づく海洋空間計画との符合の如何 3.海洋環境、海洋生態系、自然景観、海上交通安全、共有水面の管理・運営および国家安保等に及ぼす影響 4.漁業活動等の水産業に及ぼす影響 5.第8条第7項により利害関係人の意見取纏めをした場合、その結果 6.その他に必要な事項として、大統領令にて定める事項 ②(省略、従前の第12条の本文および但書と同じ) |
[3]示唆点
従前の共有水面法は、共有水面に新・再生(可能)エネルギーの設備や建築物等を設置しようとする場合、共有水面管理庁から共有水面の占用または使用の許可を得るものと規定しながらも、共有水面に関する権利者の同意を得ることの他には、別途で占用・使用の許可の基準が提示されてはいませんでした。これにつき、ハ・テギョン議員をはじめとする議員10名は、2022年6月25日に別名「海上風力乱立防止3法」の一環として、共有水面管理庁に立地基準を樹立することができる権限を与えると同時に、共有水面管理庁所属の共有水面管理委員会を置き、共有水面の占用・使用の許可の際に審議・議決を経るものとする共有水面法の一部改正法立案を提案しました。
ただし、農林畜産食品海洋水産委員会の審査過程にて、軽微な占用・使用の行為についても基準を樹立し、委員会の審議・議決を経るようにすることは、過度な規制として作用し得るという点、すでに環境影響評価等の海上(洋上)風力関連の法令に基づき、立地の適正性について事前検討する制度が設けられおり、重複規制に当たる可能性があるという点が指摘されており、これを反映し、共有水面管理庁が共有水面の占用・使用の許可を行う際に考慮すべき基準を法律に明示するものへと方案の修正がなされました。
改正共有水面法については、共有水面の占用・使用の許可に対する基準を提示することにより、許可に関連する予測可能性を高めたとする評価が出ているものの、依然として、そのような明示的基準の導入により、共有水面の占用・使用の許可に対する規制が強化されたという懸念も挙がっています。以下では、改正共有水面法における占用・使用許可の基準のうち、主な内容について簡単に検討してみます。
(1)海洋空間計画との符合の如何(第2号)
改正共有水面法は、海洋空間計画および管理に関する法律(以下「海洋空間計画法」といいます。)に基づく海洋空間計画との符合の如何を考慮するものとしています。従来は、海洋空間計画法に基づき漁業活動保護区域として指定されている区間について、明示的に共有水面の占用・使用許可を制限する規制が存在しなかったものの、改正共有水面法に上記規定が導入されることにより、今後は、海洋空間計画上の漁業活動保護区域として指定されている区域において海上風力事業のための共有水面の占用・使用許可を取得することが、より難しくなるものと思われます。
(2)利害関係人の意見取纏めの結果(第5号)
改正共有水面法は、第8条第7項により、利害関係人の意見取纏めを行った場合、その結果を考慮するものとしています。2022年1月4日の共有水面法改正により、共有水面管理庁が占用・使用の許可を行う場合、漁業者等の利害関係人の意見聴衆をしなければならないという規定が第8条第7項に新設されたものの、そのような意見取纏めの結果を許可手続きに反映する経路は別途設けられていませんでした。そのため、改正共有水面法には、それに対する考慮が明示的に取り入れられました。従前の共有水面法においては、占用・使用の許可の際に共有水面管理庁が利害関係人の意見聴取の手続きを経れば問題なかったものの、今後は、改正法に基づき、事業者が当該意見聴取の結果による措置を行ったかについても、積極的に考慮されるものと見られ、これにより、海上風力発電事業を進める過程で住民の受入性の確保にあたり、より留意すべきであると思われます。
(3)共有水面管理庁に裁量権を与える事項(第1号、第3号、第4号)
改正共有水面法に導入された一部基準の場合、共有水面管理庁に相当な裁量権を与え、事実上、共有水面管理庁に対して、海上風力発電所の立地基準を設けられる権限が与えられたものと評価されています。特に、共有水面の占用・使用の面積、期間、方法等の適正性(第1号)ないし海洋環境、共有水面の管理・運営等に及ぼす影響(第3号)、漁業活動等の水産業に及ぼす影響(第4号)という多少抽象的な基準が導入されていながらも、これを評価できる具体的な方法は設けられておらず、これの評価過程において、共有水面管理庁による裁量介入の余地が相当大きいものと予想されます。
(4)占用・使用許可の基準追加の可能性(第6号)
改正共有水面法は、第1号から第5号の基準の他にも、大統領令を通じて立地基準を定められるものと規定しており(第6号)、共有水面法施行令の改正等を通じ、追加の立地基準が設けられる可能性があります。施行令等が改正され立地基準が確定されるまでは、自治体が共有水面の占用・使用の許可に消極的な立場を取る可能性があるものと予想されるところ、大統領令の制定の動向についても、注視していく必要があるものと判断されます。
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