2018年に施行されていた『資源循環基本法』を全部改正した『循環経済社会転換促進法』(以下「本法律案」といいます。)が去る2022年12月28日付で国会の本会議を通過し、2022年12月31日に公布されました。2024年1月1日から施行される予定の本法律案は、廃棄物の発生抑制と適正な処理に焦点を当てていた資源循環基本法とは異なり、生産・流通・消費等の全ての過程において、循環経済社会への転換促進に貢献することを主な目的としています。
今般のニュースレターでは、本法律案の主な内容とその示唆点について検討させて頂きます。
[1]本法律案の主な内容
本法律案は、大きく▲循環経済基本計画の樹立(第2章、第10条~第12条)、▲循環経済促進施策(第3章、第13条~第20条)、▲循環資源および循環資源認証製品の使用促進(第4章、第21条~第26条)、▲循環経済の新技術・サービスに対する規制特例(第5章、第27条~第34条)、▲循環経済の基盤づくりおよび支援(第6章、第35条~第43条)で構成されています。本法律案の内容のうち、特に注目すべき内容は、次のとおりです。
分類 | 細部内容 |
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全過程の循環経済体系構築のための制度 | |
循環経済成果管理 |
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製品循環利用の促進 |
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循環利用性の評価 |
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流通循環利用の促進 |
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持続可能な製品使用 |
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循環資源認定関連の制度 | |
循環資源の認定 |
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循環資源の告示 |
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循環資源使用の促進 |
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規制サンドボックス関連の制度 | |
迅速処理 |
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規制特例 |
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臨時許可 |
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[2]示唆点
国際社会は、製品の生産、消費、廃棄という線形的な構造から脱し、製品の生産・流通・消費の全ての過程において廃棄物の発生を抑制し、再利用および回収等を促進する循環経済へと転換するための努力を行っています。欧州連合(EU)は、2015年「循環経済パッケージ(Circular Economy Package)」を、2020年「新循環経済の行動計画(The New Circular Economy Action Plan)」を発表するなど、循環経済への転換に向けた履行措置を樹立しており、英国、日本等の主要国の場合にも、関連立法および政策等を通じて循環経済への転換を推進するための政策的意思を明らかにしています。我が国もまた、2021年「韓国型(K)-循環経済履行計画」を発表するなど、循環経済への履行を促進するための細部政策課題を掲げています。本法律案は、従来の政策的努力に加え、資源の効率的な利用および循環利用を活性化するための法的基盤を設けたということに、その意義があると言えます。
本法律案は、資源循環基本法に基づき実施されていた「有害性および循環利用性の評価」を「循環利用性の評価」に改正し、製品等の「有害性」ではない「循環利用性」に重点を置いた評価を行うようにすると同時に、循環利用性関連の評価項目を拡大*し、一定基準を満たす生産・輸入・流通事業者をもって、循環利用の促進のための遵守事項の遵守に向けて努力させるようにするなど、事業者に対して新たな義務を賦課しました。
*本法律案は、(i)循環原料または環境に優しい素材・工法の使用に関する事項、(ii)修理の容易性に関する事項、(iii)全過程において循環利用の可能性に関する事項、(iv)全過程における炭素排出の影響に関する事項を評価項目に追加しており、下位法令を通じて追加の評価項目を定められるように規定し、評価項目の追加拡大の可能性を持たせています。
なお、本法律案は、循環資源の認定制度等の資源循環基本法に基づく制度を改善し、循環経済の新事業を育成するための規制サンドボックスを導入しました。先に、循環資源の認定に関連し、本法律案は、事業者の申請を通じ、個別の循環資源を認定していた既存制度に告示を通じた認定を追加し、循環資源の認定方法を拡大運営することができる法的根拠を設けました。特に、循環資源の認定可能の範囲を拡大するため、その認定基準を緩和した改定資源循環基本法の施行令が、去る2023年の1月1日に施行されたという点を考慮すると、後続告示により、循環資源として認められ廃棄物管理法の規制対象から省かれる物質または物もやはり増加するものと判断されます。また、情報通信融合法、産業融合促進法等に基づいて認定されていた規制サンドボックス関連の制度の運営根拠が、本法律案にも盛り込まれることにより、循環経済分野の特性を考慮した規制特例の付与もまた活発になるものと予想されます。
まとめると、本法律案は、事業者に対して新たな義務を賦課すると同時に、循環資源認定の基準を緩和して経済的価値のある廃棄物を活用できる機会を増やし、規制サンドボックスの導入を通じて、循環経済分野における新技術とサービスをより積極的に推進できる与件を設けたと言えます。本法律案が、本法律案に基づく義務を負う事業者の範囲と義務の具体的な内容を大統領令におよび環境部令等に委任しているということを考慮すると、事業者は下位法令の整備動向を綿密にモニタリングし、自身に賦課され得る義務の内容について把握し、これに対する先制的な対応策づくりを行う必要があると思われます。さらに、事業者としては、自身が排出する廃棄物が循環資源に該当する可能性があるか、自らが推進を試みる事業が迅速処理・規制特例・臨時許可等の要件を満たしているかにつき、正確に判断して当該制度を積極的に活用することのできる方策につき、模索を進めていく必要があります。
弊社の環境チームは、循環資源認定制度等の様々な環境規制に関連するリーガルサービスにとどまらず、環境関連の事業に対する規制特例認定推進等の新事業に関連する法的サポートもご提供しているところ、上記のイシューつき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。