2024年8月28日付のニュースレター(上場企業における企業価値の向上のための企業バリューアップ・プログラムの導入・進行)において、韓国の企業バリューアップ・プログラムの導入およびその進行現況についてご説明させていただきました。

上記に続き、2024年9月24日に韓国取引所(以下「KRX」といいます。)は、企業バリューアップ・プログラムに関連し、追加の「コリア・バリューアップ指数(以下「バリューアップ指数」といいます。)の構成銘柄および選定基準を発表しました。これにより、9月30日から国内外の投資家らに対してリアルタイムでの指数が提供され、11月中には指数先物およびETF上場が行われる予定となっています。KRXは、バリューアップ指数の開発を通じ、国内証券市場の再評価とバリューアップ文化の拡散が期待できるようになったと明らかにしています。

これに関し、今回のニュースレターでは、バリューアップ指数の概要、銘柄の構成および選定の方法、優遇事項、他の指数との比較等についてご説明させて頂きます。

 

1.バリューアップ指数の概要

バリューアップ指数は、PBR、ROE等のバリューアップ関連指標が優秀レベルにある合計100企業の時価総額を加重適用する方法によって構成されています。基準時点となる2024年1月2日の価格を1,000ポイントとし、毎年1回(毎年6月の先物満期日の翌取引日)企業の構成と割合を再調整します。当該指数においては、サムスン電子、SKハイニックス等の時価総額が高い企業も含まれているものの、KOSDAQ市場の企業も含まれています。

2.バリューアップ指数の銘柄構成および選定方法

バリューアップ指数は、有価証券市場とKOSDAQ市場の上場銘柄とが均衡を保ちつつ、多様な産業群別にその代表銘柄をバランスよく分散させることで、韓国経済と産業構造とを代表できるように設計されています。

<バリューアップ指数の構成銘柄における産業群別の分布>

区分 情報
技術
産業財 ヘルス
ケア
自由
消費財 
金融/
不動産 
素材 必須 消費財 コミュ
ニケー
ション
エネル
ギー
合計
銘柄数 24 20 12 11 10 9 8 5 1 100

これに次ぎ、市場の分布をみてみると、有価証券市場とKOSDAQ市場の上場銘柄数の割合が約7:3の割合で構成されています。

銘柄の選定は、様々な評価指標を適用した五段階スクリーニングを通じて行われます。

<審査の対象および除外銘柄>

項目 細部内容
審査の対象 有価証券市場およびKOSDAQ市場の上場銘柄(普通株)
除外銘柄 新規上場銘柄、流動比率100%未満、管理銘柄、投資注意喚起銘柄、 実質審査対象、最近の事業年度の資本食い込み、その他の不適合銘柄

<銘柄の選定方法>

구분 주요 내용
1 市場代表性 時価総額 上位400位以内
(時価総額約5,000億ウォン以上、全体累積時価総額の90%水準)
2 収益性 最近2年連続赤字の企業または、最近2年損益合算時における赤字企業ではないこと
3 株主還元 最近2年連続配当または自社株の消却を行った企業
4 市場評価 最近2年平均PBR基準、全体または産業群における上位50%以内の企業
5 資本効率性 (上記1~4段階の要件を備えた企業のうち)
最近2年平均ROE基準、産業群別のROE上位企業100社の企業を最終選定

 

3.バリューアップへの早期参加および表彰企業の優遇策

KRXは、企業らのバリューアップ・プログラムへの参加を督励するため、バリューアップ早期開示企業および表彰企業に対する優遇策を設けました。段階別に適用される特例編入およびインセンティブ案については、次のとおりです。

1段階:早期公示企業の特例編入

2024年9月23日までにバリューアップ計画の早期開示を行った企業に対して特例編入を実施し、編入となった企業は2年間指数内に維持されます。ただし、収益性、時価総額、流動性等の最低条件を満たした場合に編入が可能となります。

2段階:表彰企業の特例編入

2025年6月からバリューアップ表彰企業に対して特例編入を実施し、編入となった企業は2年間指数内に維持されます。また、開示の履行企業は審査基準が緩和されることでインセンティブが提供されるものの、反対に開示を履行しない企業については、審査基準が強化されペナルティが課されます。

3段階:開示履行企業中心の指数構成

2026年6月からは、開示の履行企業を中心に指数を構成し、開示不履行の企業については、優先的に指数から除外されることも有りえます。

<バリューアップ・プログラムの特例編入の要件>

項目 細部内容
時価総額 時価総額上位700位以内
収益性 2年連続赤字不該当
流動性 取引代金上位80%以内
その他の条件 流動比率10%未満、管理銘柄、投資注意喚起銘柄、実質審査対象、資本食い込み等の不適合銘柄に該当しないこと

 

4. 他の指数との比較

KRXによると、バリューアップ指数は、過去のシュミレーション結果においてKOSPI200、KRX300に比べ良好な成果を見せており、適正レベルの銘柄交換比率とターンオーバーの比率を維持しながら、ETF運用の安定性も同時確保されているものと評価されます。

<バリューアップ指数および市場代表指数の期間別収益率の比較(2024年8月末)>

区分注) 最近5年 最近3年 最近1年
バリューアップ指数 43.5% △7.0% 12.5%
KOSPI 200 33.7% △16.5% 4.3%
KRX 300 34.3% △14.4% 4.9%

注) 最近5年/3年/1年前の定期変更時点(6月)を基準とする収益率の算定

指数の安定性の側面において見てみると、年平均の銘柄交換比率は21.2%、ターンオーバーの比率は14.5%でバランスのとれた水準の安定性を保っていると評価されます。

<バリューアップ指数の安定性>

区分 銘柄交換比率* ターンオーバー比率**
バリューアップ指数 21.2% 14.5%

*銘柄交換比率:定期変更時の交換銘柄数を構成銘柄数で除した割合
**ターンオーバー比率:定期変更時の交換銘柄の時価総額を全体の構成銘柄の時価総額で除した割合

 

5. 示唆点

今回のコリア・バリューアップ指数の発表とバリューアップ開示企業に対する特例の適用は、企業におけるバリューアップ計画の策定と開示履行を活性化するうえで貢献するものと思われます。特に、バリューアップ指数の発表前に、バリューアップ開示を履行し、バリューアップ指数に編入された7つの企業*の他、バリューアップ開示を履行しなかった93の企業の場合、指数編入を維持するため、今後バリューアップ開示を履行することを積極的に検討する可能性があります。また、時価総額の割合(4.7%)に比べ高い数(33%)の企業らが、指数に編入されるKOSDAQ上場法人の場合、より積極的にバリューアップ開示について検討する必要があります。

* DBハイテック、ヒュンダイ自動車、新韓持株、 メリッツ・ファイナンス持株、ウリ金融持株、ミレアセット証券、キウム証券

さらに今後、国民年金等の機関投資家らが株式型ファンドの運用にバリューアップ指数の活用を積極的に考慮するものと見られるところ、企業がバリューアップ計画を開示しない、または履行しない場合には、指数から排除されたり市場において否定的な評価を受ける可能性があります。

よって、企業においては、バリューアップ計画の具体的な策定、クリーンな開示、並びに開示内容の積極的な履行を通じて市場における信頼を獲得し、これによる指数の編入および長期投資誘致のチャンスの獲得に向け最大限取り組む必要があるものと思料されます。


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