韓国政府は、2024年改正税法に対する後続施行令改正案(以下「改正案」といいます。)を2025年1月16日に発表し、2025年2月5日までに立法予告を経た後、2月中に公布・施行する予定です。国際租税分野の主な改正事項およびその示唆点は、次のとおりです。

 

1.主な改正事項

ア.居住者判定基準の補完1

韓国の所得税法においては、個人が国内(韓国)に住所を置いているか、1年のうち183日以上居所を置いている場合には居住者と見做します。改正案によると、今後は1年のうち183日以上国内に居所を置いている場合の他にも、前年度から引き続き183日以上国内に居所を置いている場合にも、居住者と見做されることになります。

また、国内に居所を置いていた個人が、一時出国をした場合、その出国した期間についても国内に居所を置いているものと見做しますが、改正案においては、一時出国と見做す事由を施行規則にて具体的に規定するよう委任規定を追加しました。

同改正内容が確定となる場合、居住期間の計算規定は、改正案施行日が属する課税期間より適用されるものの、これにより居住者として認められるのは、2026年1月1日以降開始する課税期間より適用されます。

イ.海外金融口座申告義務違反の過料緩和および賦課基準の具体化2

海外金融口座の未申告・過小申告に対する過料の場合、従前の10~20%の累進率構造を10%の単一率構造へと調整し、その限度を20億ウォンから10億ウォンに引き下げました。

未疎明・虚偽疎明の場合、申告義務の違反金額に適用される過料率についても、従前の20%から10%へと緩和し、国税庁訓令に規定されている加重・減軽の基準を施行令に規定して賦課基準を具体的なものにしました。

 同改正内容が確定となる場合、2025年1月1日以降に申告義務が生じる分より適用されます。

ウ.グローバルミニマム課税の具体的な制度補完

2024年の税法改正を通じ、OECDモデル規定・注釈書および行政指針を反映するものとしてグローバルミニマム(国際最低)課税の改正が行われたことにより、次のような具体的な主要規定が施行令に追加されました。

1) 連結売上高調整事項の具体化3

グローバルミニマム課税の適用対象は、最終親企業の連結財務諸表上の売上高が直前の4事業年度のうち2以上の事業年度に各々7億5千万ユーロ以上の多国籍企業グループとなります。改正案では、このような最終親企業の連結売上高の算定に関し、次のように具体的に規定しています。

グローバルミニマム課税の適用対象判断のための連結売上高は、最終親企業の連結財務諸表上の売上高には含まれなかったものの、他の申告(届出)構成企業の財務諸表上の売上高に含むことができる次の金額を合算して算定:(i)連結損益計算書に別途表示されている通常の事業活動において発生する様々な種類の収益および(ii)特別収益および非経常収益と投資純利益。金融企業の場合には、最終親企業の会計基準上の売上高に算入される項目別に、通常表示する方法に従って総額または純額を含む。

同改正内容が確定となる場合、改正案施行日以降に申告する分より適用されます。

2) 調整対象租税計算時における欠損取扱特例の適用方法の具体化4

申告(届出)構成企業がグローバルミニマム課税制度が適用される最初の適用年度に欠損取扱特例の適用を選択する場合、当該所在地国については、調整対象租税を計算する際、総繰延法人税調整金額を反映する代わりに、欠損が生じた事業年度の当該欠損金額の15%を繰延法人税資産として見做すことができます。

その後、純グローバルミニマム課税所得金額が発生した後続事業年度に、純グローバルミニマム課税所得金額の15%と特例により設定した繰延法人税資産の残額のうち、いずれか低い金額を特例により設定した繰延法人税資産の使用と見做して構成企業中の一つの調整対象租税に加算します。

万が一、申告(届出)構成企業が特例の適用を取り消す場合、特例により設定した繰延法人税資産の残額は消滅し、当該取消事業年度より調整対象租税を計算する際に、総繰延法人税調整金額を反映します。このとき、取消事業年度を最初の適用年度と見做して最初の適用年度特例(最初の適用年度開始日に計上・公示された全ての繰延法人税資産・負債を基礎価額とし、その後総繰延法人税調整金額を計算)を適用することができます。

同改正内容が確定となる場合、改正案施行日以降に申告する分より適用されます。

 

2.示唆点

今回の国際租税分野の施行令改正案には、納税義務の範囲等を決定する居住者判定基準を調整しており、制度導入後初の施行を目前にしているグローバルミニマム課税制度の不備点を補完し、域外税源管理という目的で申告義務に違反する場合には、高い料率と限度が適用されていた海外金融口座の申告不誠実過料を相当部分緩和しています。

このような改正内容が施行された後、居住者の判断基準およびグローバルミニマム課税制度に関する税法上の争点があったり、海外金融口座の申告不誠実が問題となる場合には、専門家から改正法令に関連する判例および課税実務等についてのアドバイスを得て、関連の不利益が発生しないように注意する必要があります。

 

1  所得税法施行令第4条第2項、第3項。
2  国際租税調整に関する法律施行令第147条第1項、第2項。
3  国際租税調整に関する法律施行令第101条第1項。
4  国際租税調整に関する法律施行令第113条の2。