2025年1月21日、政府と関連機関(金融委員会、金融監督院、韓国取引所、金融投資協会)は、株式市場における質的水準の向上に向け「IPOおよび上場廃止制度改善方案」を発表しました。このうち上場廃止制度改善方案は、上場維持の要件を強化し、上場廃止手続きに関しては効率化を図ることにより、株式市場から成果の低い企業を適時に撤退させ、上場企業におけるバリューアップを本格化させるというのが主な内容となっています。

これにより上場廃止の事由若しくは上場適格性の実質審査事由が発生した場合、上場の維持が以前に比べて相当難しくなるものと予想されます。このような状況の発生が懸念される上場企業は、あらかじめ豊富な業務経験と専門性を備える法律事務所からアドバイスを受け、迅速に事由発生の経緯とその原因について分析し、これに備えた対策づくりを行っておくことが非常に重要です。

本ニュースレターでは、上場廃止制度改善方案の主な内容と企業に及ぼす影響と留意事項についてご案内させていただきます。

 

1. 上場維持の要件強化(2025年第2四半期)

ア.財務的要件の水準引上げ

(時価総額要件基準の強化)定量要件として市場評価関連の時価総額基準を段階的に引き上げてKOSPI500億ウォン、KOSDAQ300億ウォンを目標とします。

  • KOSPI:50億ウォン(現行)→200億ウォン(2026年)→300億ウォン(2027年)→500億ウォン(2028年)
  • KOSDAQ:40億ウォン(現行)→150億ウォン(2026年)→200億ウォン(2027年)→300億ウォン(2028年)

(売上高要件基準の強化)定量要件として企業実績関連の売上高基準を段階的に引き上げてKOSPI300億ウォン(時価総額1,000億ウォン未満のみ適用)、KOSDAQ100億ウォン(時価総額600億ウォン未満のみ適用)を目標とします。

  • KOSPI:50億ウォン(現行)→100億ウォン(2027年)→200億ウォン(2028年)→300億ウォン(2029年)
  • KOSDAQ:30億ウォン(現行)→50億ウォン(2027年) →75億ウォン(2028年) →100億ウォン(2029年)

(企業に及ぼす影響・留意事項)上記のとおり、定量要件が引き上げられると、2024年基準として約200社の上場企業が上場維持の要件に満たないものと推定されます。このような企業らとしては、時価総額と売上高が最低基準以上になるよう維持するための先制的努力が必要となります。ただし、この場合、人為的な株価UPや売上増大による不公正取引や会計粉飾の問題へと拡大しないように注意しなければなりません。またこれとは別に、営業利益関連の管理銘柄指定事由についても留意する必要があると思われます。


イ.監査意見未達成要件基準の強化

(2回連続監査意見未達成の場合、即時上場廃止)監査意見未達成(限定、不適正、意見拒否)を2回連続受けた場合、 即時廃止となり(回生・ワークアウト企業に対しては例外を認める。)、異議申立は許容されません。

(企業に及ぼす影響・留意事項)現在としては、監査意見未達成の場合、異議申立を通じて改善期間を与え、翌々の監査意見がでるまで続開等を通じて上場を維持することが可能であったものの、今後は2回連続未達成の場合には即時上場廃止となるため、再監査または次期監査意見の適正を必ず得る必要があります。改善方案による場合、監査意見未達成に関連して対応時間が相当短縮されるため、監査意見未達成となった企業の場合には、直ちにその解消に向けて全力を注ぐ必要があると言えます。これとは別に、監査意見未達成となった企業が再監査または次期に監査意見適正となった場合、上場廃止の事由は解消されるとしても、上場適格性の実質審査の対象となる点に留意する必要があります。 

 

2. 上場廃止手続きの効率化(2025年第1四半期)

ア.審議段階および最大改善期間の縮小

(二審制への縮小、最大改善期間の短縮)上場適格性実質審査においてKOSDAQの場合、審議段階が現行の三審制から二審制へと縮小され、最大改善期間は下記のごとく短縮されます。また改善期間追加付与の性格の続開については許容されず、一審の審議結果が明確である場合、二審において追加改善期間の付与が行われません。

  • KOSPI:4年→2年、KOSDAQ:2年→1.5年

(企業に及ぼす影響・留意事項)上場適格性実質審査の対象となった場合、迅速に改善計画の策定・提示をしなければなりません。改善計画は現実的かつ具体的でなければならず、改善期間を与えられた場合には、改善期間中に必ずその履行を完了しなければなりません。実質審査の対象となった企業においては、専門家である法律事務所の助言等を得て実効性のある改善計画を作成し、改善期間の付与及び該当改善期間内に履行を完了できるよう最善を尽くす必要があります。


イ.形式的・実質的な事由重複発生時における審査並行

(重複発生時における並行審査)現在は、形式的な上場廃止の事由と実質審査の事由が重複して発生した場合には、形式審査のみを進めて実質審査は中断するものとなっていますが、改善方案では2つの審査を並行して進めます。これにより、いずれか一つの審査において上場廃止の決定が下される場合には、当該企業は市場から撤退することとなります。

(企業に及ぼす影響・留意事項)形式審査と実質審査が並行して進められると、上場廃止の決定にかかる期間も事実上短縮される結果をもたらすものと思われます。形式的な上場廃止の事由が生じた場合、実質審査の事由が追加で発生しないよう注意を払う必要があり、実質審査の事由が追加発生した場合には、別途それに対する迅速な対応と改善計画の策定が必要です。したがって、形式的上場廃止事由が発生した場合、専門的な法律事務所のサポートを得て、事前に実質審査事由の発生の可能性についても点検しておく必要があります。

 

3.  結び

今回の制度改編は、韓国上場企業におけるバリューアップのための強力な政府の意思が反映されたものとして、上場維持の要件を強化し、上場廃止の手続きを簡素化することにより、基準に達していない企業を適時に撤退させるためのものです。これにより、上場廃止の事由若しくは上場適格性実質審査の事由の発生が懸念される企業としては、これによる不利益を受けないよう、事前にコンサルティング等を通じて現状の点検を行い、これへの対策づくりをしておくことが何よりも重要です。

法務法人(有限)世宗の上場維持専門対応チームは、上場適格性の実質審査、会計、不公正調査等の資本市場専門弁護士である黃度允チーム長、韓国取引所有価証券市場企業審査委員として活動している俞武映弁護士を中心に、資本市場および様々な分野における業務経験を有している弁護士らと、韓国取引所出身の顧問と金融監督院出身の専門委員らで構成されており、総合的な法律サービスを提供しています。

特に弊社の上場維持専門対応チームは、上記制度の改善方案が発表された後、最初の取引再開の事例づくりを行い成果を上げています。弊社の上場維持専門対応チームは、クライアントの要請があれば、直ちに迅速かつ正確な原因の解明を行い、原因に応じた対応の方向性を具体的に提示することにより、多数の上場企業における取引を再開に導いたり、改善期間の付与を獲得するなどの様々な成功事例を生み出しており、企業に寄り添いながら危機を克服し、持続的に企業が成長できる動力基盤づくりに向けて最善の努力を尽くしてきました。