○ 個人情報保護委員会は、2022年4月28日に「仮名情報処理ガイドライン」を改正しました。今回の改正は、産業現場や専門家らの意見を反映することにより、個人情報処理の過程に生じ得る不確実性を解消し、これを通じて情報保有機関の積極的な仮名情報の活用を誘導するためのものです。

※ 改正されたガイドラインの全文は、2022年5月2日に個人情報保護委員会ホームページを通じて公開された

○ 個人情報保護委員会をはじめとして政府は、去る2020年8月の個人情報保護法改正を通じて導入された仮名情報制度により、より安全なデータ活用を試みようと努力しており、今回の改正もまた、その一環であると見ることができます。

○ 改正「仮名情報処理ガイドライン」の主な内容は、次のとおりです。

 

1. 主な内容

[改正「仮名情報ガイドライン」の主な内容]

(仮名処理)仮名処理のために必要な事前手続きの「危険性の検討」と「仮名処理の方法および水準検討」の方法を適用事例、点検表等を通じて具体的に提示

  • 仮名処理後に行われる「仮名処理適正性の検討」の結果が「不適正」となる場合に必要な再点検の手続き(目的の再設定、追加の仮名処理等)等も細分化

段階 検討内容 不適正時の措置事項
(i) 事前準備の段階 必要書類が法・制度の目的に適法作成されているかの検討 当該資料の補完作成等の再点検
仮名情報利用提供申請書、仮名情報安全措置の義務履行確約書等
 
(ii) 目的の適合性 保護法で定める目的(統計作成、科学的研究、公益的記録保存等)に符合するかの検討 目的の具体化および再設定
仮名処理および結合目的の証憑資料等
 
(iii) 危険性の検討 危険性の検討点検表および結果報告書に基づく検討 識別危険性の再検討、結果報告書の補完等
個人情報類型の分類表、活用データ要求の水準表、識別危険性検討の結果報告書等
 
(iv) 項目別の仮名処理計画の適正性 項目別の仮名処理の方法および水準を適正に計画したかの確認 項目別の仮名処理計画の補完
項目別の仮名処理計画の定義表
 
(v) 仮名処理結果の適正性 仮名処理計画により実際に仮名処理がなされたかの確認 仮名処理の再遂行または部分的な追加仮名処理
仮名情報処理の基礎資料の明細書等
 
(vi) 目的達成の可能性 仮名処理された情報が当初の目的を達成できたのかの検討 項目別の仮名処理計画の補完、追加の仮名処理等
仮名処理および結合目的の証憑資料等

(仮名情報の結合・搬出)外部結合(Outer Join)等の結合後に搬出可能な情報(結合類型)を視覚化して明確に案内

結合
類型
結合・搬出対象の情報(色の濃い領域) 説明(A結合申請者の基準)
内部結合
(INNER JOIN)
• A情報-B情報-C情報の積集合 
• 結合申請者全て(A-B, A-B-C)が共通(結合キー)により保有する情報を結合して搬出
外部結合
(OUTER JOIN)
• A情報にB情報・C情報を結合
• 結合申請者(A)が提供した情報を中心に、結合された情報とA情報の結合されていない情報を搬出

(参考)その他に仮名情報処理の手続き別の検討事項、必要資料等に対する参考事例を仮想シナリオに基づき提示

  • また、仮名情報の処理および結合に関連して頻繁に提起されるセンシティブな情報および固有識別情報の仮名処理の可否、仮名情報の有償販売の可否等に関する質疑応答を収録

 

2. 示唆点

○ 現在のようなデータ経済時代において、データの積極的な活用は、国家の経済と企業にとって必要不可欠なものと言えます。データ共有と結合を通じた追加の価値創出に向け、2020年8月に仮名情報制度が導入されたものの、初期の段階では、期待に対し活用実績が低調なものとなっていました。これにつき、大統領直属の4次産業革命委員会は、活用の阻害要因を分析し、これに対する改善策を提案するため、2021年7月に「仮名情報活用促進対策」を発表したりもしました。

○ 今回の改正「仮名情報処理ガイドライン」を通じて、企業はより安全に個人情報・仮名情報・データを活用できるようになるものと思われ、今後もこれに関連する政府の主要動向につき、持続的に把握する必要があるものと言えます。

 

About Shin & Kim’s ICT Group

法務法人(有)世宗は、個人情報分野における独歩的な専門性と人的ネットワーク(元行政安全部次官の金榮浩顧問、元科学技術情報通信部次官の崔在裕顧問等)を擁しており、企業らのための個人情報保護法とGDPRをはじめとする国内外の個人情報規制、個人情報漏洩事件への対応、個人情報保護コンプライアンス体系の樹立等の個人情報保護に関する専門的アドバイスをご提供しております。特に、データ三法の改正および下位法令の制定、関連制度改善において、民間領域において主導的な役割を担っているところ、ICT産業の全般に対する規制動向の把握や官公庁向けの業務、立法コンサルティング、規制の影響力の分析と企業の戦略づくり等に対するリーガル・アドバイスをご提供しております。より専門的な内容やご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。

 

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