韓国国会は、3月24日国会本会議において勤労基準法、産業安全保健法、雇用保険および産業災害補償保険の保険料徴収等に関する法律、勤労者退職給与保障法、産業災害補償保険法、外国人勤労者の雇用等に関する法律、賃金債権保障法等の七つの労働関係法の改正案を可決しました。以下では、上記のうち職場でのいじめおよび顧客の暴言から労働者を保護する改正法律である勤労基準法および産業安全保健法の改正案についてご説明します。

 

1. 職場いじめに関する勤労基準法の規定に違反すると過料が課されます

職場いじめを禁止し、いじめが発生したときの措置に関する規定が2019年1月15日新設されましたが、これまで関連規定の不十分な点等が指摘されてきました。その代表的なものとして、職場いじめに関する規定に違反した場合、これを制裁する規定がないということを挙げられます。

今回の改正法では、これを補完し、①使用者のみならず、②該当事業の労働者である、使用者の親族(大統領令により定める親族)が職場いじめ行為をする場合に1千万ウォン以下の過料を賦課できるものとしており、①使用者が職場いじめ行為の調査、被害労働者に対する保護措置、加害労働者に対する懲戒等の適切な義務措置を履行しない場合や、②調査過程において知り得た秘密を漏らす場合には、500万ウォン以下の過料を賦課できるものとしています。

現行法では、過料賦課の規定がないため、職場いじめにより労働庁に陳情がなされたとしても、勤労監督官は行政指導しかできませんでしたが、改正法により過料を賦課できるようになりました。

上記以外に、客観的調査義務および調査者の秘密保持義務等の規定が追加されました。かかる規定は、2021年9月24日から施行される予定です。

 

2. 一般労働者に対しても顧客暴言等に関する保護措置をとらなければなりません

現行の産業安全保健法は、顧客の暴言等(顧客の暴言、暴行、その他の適正範囲外の身体的・精神的苦痛を誘発する行為)から「顧客応対労働者」を保護の対象としており、主に直接顧客と対面するか、情報通信網を通じて顧客に商品を販売またはサービスを提供する業務に従事している労働者のみを対象として、顧客の暴言等に関する事業主の措置基準を定めていました。

これと異なり改正案は、顧客応対労働者のみならず、業務と関連して顧客から暴言等を受ける労働者もまた保護の対象としています。具体的に改正案は、①業務と関連して他人からの暴言等により健康障害が発生したり、発生する著しい虞がある場合には、顧客応対労働者のみならず、全ての労働者に対して、②事業主は、業務の一時的中断または転換等の大統領令により定める必要な措置(以下「必要な措置」といいます。)をとらなければならず、③また、該当労働者からの必要な措置の要求に対して、解雇または不利な処遇ができないものと定めています。

これは、①業務と関連して顧客の暴言等により労働者に健康障害が発生したり、発生する著しい虞がある場合において求められる必要な措置が十分に履行されないときに、事業主に対して1千万ウォン以下の過料が賦課され得るという点(第175条第4項第3号、第41条第2項)と、②該当労働者からの必要な措置の要求に対して、解雇やその他の不利な処遇を行う場合、1年以下の懲役または1千万ウォン以下の罰金刑(第170条第1号、第41条第3項)に処することができるという点を考慮すると、事業主における格別な注意が必要です。

企業らは、上記のような内容を考慮し、勤労基準法および産業安全保健法改正案の施行への対策を徹底する必要があるものと思われます。

法務法人(有)世宗は、職場いじめおよび産業安全保健法につき、多方面でリーガルアドバイスをご提供しております。上記内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。

 

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