メタバース産業の振興に向けた基本法として、2022年1月に発議された法案が2022年3月30日付で科学技術情報放送通信委員会に上程されました。
-
「メタバース産業振興法案」(以下「メタバース産業振興法」といいます。)は、2022年1月11日に金ヨンシク議員(国民の力)の代表発議として、「仮想融合経済発展および支援に関する法律案」(以下「仮想融合経済発展法」といいます。)は、2022年1月25日に趙スンレ議員(民主党)の代表発議により各々発議され、2022年3月30日付で国会の科学技術情報放送通信委員会に公式上程されました。
二つの法案は共通してメタバース関連の産業、サービス、企業競争力等の振興のための法的基盤を設ける内容を盛り込んでおり、主な内容およびその示唆点については、次のとおりです。
1. 主な内容
(産業発展の支援) 2法案いずれも、メタバース産業の発展のための支援に関して規定しています。
-
(メタバース産業振興法)メタバース産業の振興のために租税の減免、金融支援その他の必要な支援を行えるという条項を設けています(案第15条)。
-
(仮想融合経済発展法)仮想融合事業者 に対して行政的、財政的支援、租税の減免、金融および創業支援を行えるという条項を設けています(案第12条~第15条)。
(ユーザーの保護) 2法案いずれも、メタバースのユーザー保護に関して規定しています。
-
(メタバース産業振興法)メタバース・ユーザーを保護するため、政府をもって健全なメタバース利用文化の定着に向けた教育・弘報、被害の予防および救済等の事業を推進するものとしています(案第26条)。
-
(仮想融合経済発展法)メタバース・ユーザーに生じ得る被害等を防止するため、ユーザー保護および個人情報保護に関する事項を規定しています(案第32条、第33条)。
(自律規制) 2法案いずれも、メタバース・サービスにおける自律規制を促進するための規定を設けています。
-
(メタバース産業振興法)科学技術情報通信部は、一定の要件を備えた団体をメタバース自律規制団体に指定し、指定された自律規制団体がメタバース・サービス運営準則を定め、メタバースで自律規制と関連する業務を行うものの、科学技術情報通信部が自律規制団体に対して業務実施方法の改善等、必要な監督を行うものとしています(案第30条~第32条)。
-
(仮想融合経済発展法)メタバース事業者は、科学技術情報通信部の認可を得て協会を設立することができ、協会は、ユーザーを保護し安全かつ信頼できる仮想融合機器または仮想融合サービスを提供するため、仮想融合事業者の行動綱領を定めて施行できるものとしています(案第23条、第24条)。
(規制不明確性の解消のための「臨時基準」) 仮想融合経済発展法は、適合する基準がない、またはそのまま適用することが不適切・不明確な場合、関連産業に臨時で適用する基準・ガイドライン等を設けるプロセスを設置しています。
-
メタバース・サービスの開発等のために必要な法令等がない、または不明確な場合、科学技術情報通信部長官は、職権またはメタバース事業者等の提案により、関連産業分野に臨時で適用する基準(臨時基準)を定めることができます(案第30条)。
(メタバース貨幣) メタバース産業振興法は、メタバース貨幣の意味を定義し、その発行・流通に関する法的根拠を設けています。
-
メタバースサービス提供者は、ユーザーとの約定により、メタバース貨幣を発行することができ、この場合、メタバース貨幣のユーザー1人当たりの発行最高限度およびその他の制限に必要な措置は、大統領令で定めるものとしています(案第21条第1項)。
-
さらに、メタバースサービス提供者に対し、メタバース貨幣の両替システム構築の義務、ギャンブル等の射幸行為の防止義務、未成年者保護の安全装置構築の義務等を賦課しています(案第23条、第24条)。
2. 示唆点
国内外の企業らがメタバースを未来の注目株として認識しているなか、これまで国内では、科学技術情報通信部におけるメタバース・アライアンス*の結成、常任委レベルでのメタバース懇談会、メタバース関連法の制定に向けた公聴会の開催など、メタバース産業振興に関して活発な議論を行ってきました。
このような背景のもと、本格的な産業振興のための法的根拠づくりに向け、二つの法案が設けられ国会の常任委へと上程されました。
- *科学技術情報通信部は、2021年5月18日付で仮想融合経済発展戦略の後続措置として、メタバース関連企業らが集まり、メタバース生態系の活性化に向けた協力について議論する場を設けた。
-
尹当選者は、メタバース技術革新のための特別法の制定、メタバース電子政府の構築、ブロックチェーンおよびメタバース関連のスタートアップ育成等を公約として提示しており、2法案に対する検討はより本格的に行われるものと予想されます。
上記の2法案がいずれも、メタバース産業の振興のための法的基盤づくりに向けたものであるため、今後の国会審議も同時に進められるものと思われます。
-
現在発議・上程されている上記の2法案の内容を考慮すると、今後メタバースに関する規制は、臨時基準等を活用した「自律規定」が用いられる可能性が高いです。
-
ただし、上記法案がそのまま通過となる場合、メタバース産業に従事する事業者に対し、ユーザーの保護、メタバース貨幣等に関連する各種義務が課されるため、今後の立法過程に注目し、意見を積極的に述べる必要があります。
-
また、上記法案らは、ゲーム産業法、特定金融情報法上の既存の規律体系と一部背馳する条項らが盛り込まれており、メタバース世界において通用されるであろうブロックチェーンおよび仮想通貨の技術、NFT等についても、具体的な検討が不十分であるという批判が上がっており、この点からも、立法の過程を注視していく必要があります。
About Shin & Kim’sメタバース+NFTチーム
法務法人(有限)世宗の「メタバース+NFTチーム」は、知識財産権、情報保護、フィンテック、仮想資産、公正取引、立法諮問、租税等の関連分野の専門家により有機的に構成されています。メタバース、NFTに関連する立法、行政上の各種規制(税務、独占規制等を含む。)、ゲーム関連の法律、著作権等のIPイシュー、個人情報イシュー、E-commerceのイシュー等において、最適なソリューションをご提供させて頂いております。
上記の内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。
※ 法務法人(有)世宗のニュースレターに掲載された内容および意見は、一般的な情報提供の目的で発行されたものであり、ここに記載された内容は、法務法人(有)世宗の公式的な見解や具体的な事案についての法的な意見ではないことをお知らせ致します。
1 仮想融合経済発展法は、『仮想融合技術』を「ユーザーの五感を仮想空間へと拡張したり現実空間と混合し、人間とデジタル情報との間の相互作用を可能にする技術」として定義しており、『仮想融合事業者』は、仮想融合機器または仮想融合サービスと関連する産業を営む者を意味します。



