1. NFT・メタバースにおける商標権争い

高級ファッションブランドのエルメス(Hermes)社が、許可も取らず「バーキン」バックのNFTを作りメタバース空間での販売を行った作家に対し、商標権等を侵害する行為だとして訴訟提起をした事件において、最近、それに対する一部決定が下されました。Nikeは、スニーカーズ転売プラットフォームであるStockXを相手取り、商標権の侵害、イメージ毀損等を理由に訴訟を申し立てました。その理由の一つは、StockXがNikeの許可なしに、Nikeの商標が入っているNFTを販売したというものです。Netflixは、全世界的に高い人気を誇っている「イカゲーム(Squid Game)」関連商標の出願・登録をしている状況でしたが、それにもかかわらず、Netflixとは無関係の者が生み出したイカゲームやイカゲーム・カードNFTが、世界最大のマーケットプレイスであるOpenSeaにおいて公然と取引がなされています。このように 、日増しに拡大を遂げるNFTとメタバース市場において、商標権は著作権と引けを取らないほど重要なイシューとして挙がっています。

 

2. NFT・メタバースにおける商標権侵害

他人の登録商標を単に使用したというだけでは商標権侵害は成立せず、「商標としての使用」という要件を満たす必要があります。また上記のような商標法の原則は、NFT・メタバースにおいても同様に適用されます。

商標法によると、他人の登録商標を許可なく「商品や商品の包装に表示」したり「商標が表示されている商品または商品の包装を流通させたり展示」する行為、並びに「広告等に表示するなどの行為」が侵害の問題が生じる商標使用行為となります。最近の商標法改正により、「電気通信回線を通じて提供される情報に電磁的な方法で表示する行為」も『表示』行為に含まれ、NFTやメタバース空間における商標使用の形態も『商標の表示』として明確に含まれることになりました。

しかしながら、他人の商標を上記の方法で利用したとしても、これが必ずしも商標権の侵害成立となるわけではなく、商標の使用が商品の出処を表示する機能を担う必要があるものの、実際の事案において、商品の出処の表示機能を行う使用なのかを区別するのが難しいケースが多々あります。

外国の事例ではあるものの、仮想空間やNFTにおける他人の登録商標の無断使用が、商標権の侵害に当たるかについて、例を挙げてみたいと思います。ブリザード・エンタテイメント社(以下「Blizzard」といいます。)のCall of Dutyというゲームで、軍用車両のハンヴィー(Humvee)の商標と車両外観が無断で使用され、ハンヴィーの商標権者は、Blizzardを商標権侵害として提訴しました。しかしながら、ニューヨーク州の連邦地方裁判所は、ゲームにおける他人の商標使用は、商品(軍用車両)の出処の表示として使用されたものではなく事実的表現のために使用されただけであると判断しました。一方、エルメス社の事件では、これとは異なる裁判所の判断が下されました。Metabirkinsという題目のNFTアート(当該作品は毛皮素材のバーキンバックの形状です。)を販売したことは、エルメス社の商標権侵害に当たるが、Metabirkinsは、単なるアート作品の題名に使用されたものではなく、当該NFTの出処を表示する機能を担うというものです。それ以外の当該作品は、エルメス社の人気と名声に便乗しようとしており、エルメス社が作り出したNFTであるかのように、消費者において誤認や混同を誘発するという点についても考慮がなされました。

 

3. NFT・メタバースにおける商標権保護

最近、国内外の大企業を中心に、メタバース世界における事業の拡張やメタバース世界における自社の商標権保護に向けた商標権出願が増えています。マクドナルド社は、仮想レストランの運営に関連する「仮想の食べ物・飲料製品、アートワーク、テキスト、オーディオ、ビデオファイルとNFTを含むダウンロード可能なマルチメディアファイル」等を指定商品とする11の商標を出願したとしています。

韓国の場合、周知著名な商標であれば、商標権の登録がなくとも、不正競争防止法に基づき仮想世界の中での盗用やNFTの無断作成から保護されるものの、未だに周知性が高くない商標の場合には、そのような盗用を防ぐためにも、商標権の登録は必要不可欠であるものといえます。また、周知性が高い商標であったとしても、それに対する立証責任はこれを主張する側にあるため、やはり、メタバース関連の商標登録をしておくことが、今後の紛争において有利になるものといえます。

ただし、登録をしただけで、仮想世界やNFTにおいて実際の利用がないのであれば、商標登録が取り消されることもあり、また、グラフィックの変更が容易であるという理由で登録商標を変更して使用する場合にも、商標登録の取消しがあり得るため、その実際の使用形態につき注意をしておく必要があります。

 

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