企画分析
[米国のヘンリー制裁と中国大手銀行への二次制裁の可能性] ドル覇権と中国の反外国制裁法秩序が衝突する時代、韓国企業・金融機関におけるリスクとその対応
I. 概要:制裁システムに対する中国による史上初の正面からの対応
2026年4月24日、米国財務省外国資産管理室(OFAC)が中国の石油精製会社である恒力石化(ヘンリー・ペトロケミカル、大連所在)を「特別指定制裁対象」(SDN: Specially Designated Nations and Blocked Persons)リストに掲載したことで、米中間の地政学的対立が金融分野へと波及する新たな分岐点に直面しています。米国は、恒力石化がイラン軍傘下の石油販売組織を通じて「シャドーフリート」方式により数十億ドル規模のイラン産原油を購入したものと判断し、恒力石化と取引を行う第三国の企業・金融機関に対しても、米国の金融システムへのアクセスを遮断する二次制裁(secondary sanctions)を適用すると公表しました。
注目すべき点は、これに対して中国が単なる抗議にとどまらず、史上初めて自国の法律を発動させて正面から対抗したことです。中国商務部は、2021年の制定以降、事実上Dormant Lawとして扱われていた反外国制裁法(「外国の法律及び措置の不当域外適用を阻止する規定(ブロッキング規定)」:(原文:阻断外国法律与措施不当域外适用办法))を初めて発動し、中国国内の個人・企業・金融機関が米国の制裁を承認・執行・遵守することを禁止しました。これまで米国の制裁について非難の発言のみを行っていた中国が、国内法規を動員してまで公然と制裁秩序に反旗を翻したことで、米国のグローバル支配の制度的インフラである制裁システムそのものが試練にさらされている局面です。
米国の金融制裁が致命的である理由には、国際取引のドル決済の構造にあります。国際取引の大半はドルで行われており、この場合、その取引代金の最終決済は、米国の銀行間決済ネットワーク(CHIPS)と連邦準備制度の帳簿上で完了します。韓国企業が中国企業に対してドルで代金の送金を行う場合でさえ、双方の取引銀行はそれぞれニューヨークに拠点を置くコルレス銀行(correspondent banks)を経由して初めて、ドル建ての代金を決済することができます。したがって、米国が特定企業のドル決済を阻止すれば、その企業は1ドルの取引でさえ履行できなくなり、二次制裁により、この取引遮断を第三国の企業・銀行にまで拡大します。このような米国の制裁は、単なる口座凍結にとどまらず、事実上、国際貿易への参加権の剥奪として機能することになります。
6月14日に米国とイランとの間で暫定覚書(MOU)が締結され、イランの石油販売が一時的に許可されたものの、核心的な対立事項であるイランの非核化と米国の制裁解除を含む本交渉は、その後60日間にわたって行われる予定であり、事実上「60日間の休戦協定」と評価されています。果たして、双方が合意に達することができるか、現時点では楽観視することができず、その過程で衝突による破局の可能性も排除できません。 本ニュースレターでは、ヘンリー制裁が中国の大手国有銀行に波及した場合のシナリオと、韓国企業・金融機関におけるエクスポージャーおよび対応課題について分析します。
II. 事案の構造:ヘンリー制裁と米中攻防
1. 恒力石化に対する海外資産管理室(OFAC)による制裁対象指定と取引清算(wind-down)の許可
海外資産管理室は、イランの石油・化学部門を標的とした大統領令(EO)13902に基づき、2026年4月24日付で中国第2位の民間石油精製会社である恒力石化(Hengli Petrochemical (Dalian) Refinery Co., Ltd.)を制裁対象に指定しました。これは、恒力石化が2023年以降、イラン産原油を大量に購入したことを理由としており、同社に加え、約40社の海運会社・船舶についても制裁対象として指定されました。恒力石化は、米国が制裁対象とした中国の民間石油精製会社の中で最大規模の企業です。海外資産管理室は、指定と同時に一般許可(General License V)を与えることにより、2026年5月24日までに既存の取引を清算(wind-down)できるように許可したものの、恒力石化が受け取る代金は、米国内の凍結された利付口座に振り込むことを条件としました。既存の取引を秩序立てて終了させることは許可するものの、恒力石化における取引代金の使用を阻止するというものです。
2. 二次制裁の警告と金融機関への圧力
スコット・ベッセント財務長官はこれに先立ち、2026年4月15日、金融機関がイラン関連の取引を支援した場合、二次制裁のリスクがあるとする警告書簡を2つの中国銀行に送付したと明らかにしました(銀行名は非公開)。これに次いで、海外資産管理室は4月28日付で金融機関全般に対し、中国の小規模民間製油企業「ティーポット」関連の取引に対する二次制裁のリスクを公式に警告するとともに、リスクベースの管理、製油会社に対する実地調査の強化、コルレス銀行が制裁遵守の期待事項を中国側に伝達することを要求しました。同警告では、フロントカンパニー(偽装会社)、仲介業者、シャドーフリート、船舶間積み替え、虚偽文書、船舶識別情報の改ざんを主な回避手段として指摘しました。公開された集計によると、4大国有銀行(中国工商銀行・中国建設銀行・中国銀行・中国農業銀行)は少なくとも2018年まで恒力石化に融資を行っていたものと確認されていますが、こうした融資行為につき、制裁発効後においては二次制裁の対象となる可能性があります。
3. 中国のデュアルトラック対応:非対称的な指示
中国の対応は、対外的な主権擁護の宣言と、対内的なマクロ金融の安定確保という、やや相反するように見える2つの目標を同時に目指す、精巧なデュアルトラック構造となっています。商務部は5月2日、反外国制裁法を初めて発動し、企業に対して米国の制裁に従わないよう強制するとともに、米国の制裁を遵守するために恒力石化恒力石化との取引を断った企業に対しては、中国の裁判所で民事上の損害賠償請求を行うことができるようにしました。しかし、その一方で、金融規制当局である国家金融監督管理総局(NFRA)は、労働節(メーデー)の連休直前に大手国有銀行に対して口頭で指示を出し、恒力石化等に対する新規の人民元建て与信は停止するものの、既存の融資の回収や満期短縮は求めないよう指示しました。
この「新規停止+既存維持」という非対称性は、米国の制裁に対して精巧に設計された意図的な対応措置です。新規融資は、海外資産管理室が制裁要件とする「新規の重大な取引」に該当し、リスクへの露出度が高いのに対し、既存融資の単なる保有ははるかに受動的なものです。北京当局は、既存融資の回収や満期短縮を認めないことで、対制裁法規の執行という政治的な体面を保ちつつ、新規融資を遮断することにより米国の制裁の決定的な引き金を回避する方式を採用し、システム上重要な国有銀行がドル決済へのアクセス権を喪失しないよう保護しようとする、計算された妥協案を選んだものと評価されます。
III. 制裁の法的構造:段階的なはしご
米国が中国の国有銀行を「制裁する」ということは単一の行為ではなく、水準別の段階となり、どのような証拠が確保されるかによって、米国がどの段階に達するかが決定されます。
1. 何がトリガーとなるか
制裁に踏み切る大義名分となる引き金(トリガー)は二つありますが、その重みは相互に異なります。第一に、既存の融資の維持は解釈が分かれるグレーゾーンとなります。行為および海外資産管理室(OFAC)の解釈事例によると、制裁発効後、満期を1日でも延長したり、金利・担保条件を変更したりする行為、あるいは既存の融資限度額の範囲内であっても資金の引き出しを許可する行為は、事実上新規融資であると解釈される可能性があるため、リスクが高まります。ただし、こうした行為はイランとの直接的なつながりが弱いと見なされるため、通常は段階の下位(警告・罰金・条件付き制裁)にとどまる可能性が高いです。
第二に、イラン産原油の決済・迂回輸出・フロントカンパニーを通じた取引は、イラン石油取引の「故意かつ重大な促進」という制裁発動要件に該当し、欺瞞行為は核心的な加重要素となるため、米国が制裁の「段階(はしご)」の中~上位段階へと直行する正当な理由となります。また、こうした取引が人民元で行われる場合においても、制裁対象との取引を促進したものと解釈される可能性があります。
2. 2つの核心的な手段:CAPTAと全面制裁対象
CAPTA(Correspondent Account and Payable Through Account)制裁は、米国内の外国為替取引口座(CA)および支払代理口座(PTA)の開設・維持を禁止する、または極めて厳しい条件を課す措置であり、事実上、ドル決済へのアクセス権を制限するものです。グローバル銀行にとっては「準死刑」に相当します。
全面制裁対象(資産凍結)は、銀行自体を制裁対象として指定し、世界中の米国管轄下の資産を凍結するとともに、米国を経由するすべての取引を禁止する最高レベルの措置となります。イランやロシアの主要銀行に適用されたことはありますが、中国のビッグ4銀行のように、グローバル・システム上重要な銀行(G-SIB)に適用された前例はありません。
一方、海外資産管理室の「50%ルール」に基づき、制裁対象が直接・間接を合わせて50%以上の株式を保有する法人は、リストに載っていなくても自動的に遮断対象として扱われるため、恒力石化の親会社・系列会社・オフショア貿易法人に対する慎重な点検が必要です。
IV. シナリオ別の分析
現時点では、米国は直接的な制裁措置よりも、米国内のコルレス銀行に対し、中国銀行との取引フィルタリングの強化を要請するものと思われます。このような場合、ニューヨークに拠点を置く為替取引銀行は、中国のビッグ4銀行から送金されるドル送金、貿易金融、L/C、保証、原油関連の決済において、恒力石化・イラン・シャドーフリート・フロントカンパニーに関連する顧客・契約・取引内容をより厳格に選別することになるでしょう。
万が一、中国の4大銀行が恒力石化に対して新規の資金流動性を供給した、あるいはイラン産原油の決済・迂回取引を処理したという証拠が確保されれば、その程度に応じて次のような制裁が講じられ、それに伴う衝撃が発生します。
1. シナリオA — 外科的な条件付き制裁(最も有力)
中国のビッグ4銀行の本体ではなく、実際に取引処理をした特定の支店・オフショア子会社・決済部門をピンポイントで指定するか、CAPTAを「厳格な条件付」の形で適用するか、海外資産管理室・ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)との大規模な和解金による処理を行う方式です。中国工商銀行(ICBC)が2024年1月、ニューヨーク支店のマネーロンダリング防止(AML)コンプライアンス不備により、海外資産管理室から約3,200万ドルの罰金を科された前例からも分かるように、米国はビッグ4の米国内拠点を通じた監督・執行のレバレッジをすでに保有しています。このルートでは、当該銀行は直ちにコンプライアンス体制の再整備を行い、恒力石化・イラン関連取引から自主的に撤退しなければならず、このような場合、市場への衝撃は限定的かつ一時的なものにとどまります。韓国への影響は微々たるものですが、コルレス・人民元口座に対する韓国金融機関によるスクリーニングは強化されます。
2. シナリオB — CAPTAの全面遮断(ドル決済ネットワークの断絶)
中国のビッグ4銀行に対する米国内での為替取引口座の開設・維持を全面的に禁止する措置であり、制裁対象の資産凍結にまでは至らないものの、事実上、ドル決済へのアクセス権を遮断するものです。過去にこのような制裁が課された中国銀行は、2012年の崑崙銀行など周辺部の小規模銀行に限定されていたため、これは史上初となる強力な措置となるでしょう。この場合、ドル建ての貿易金融・信用状・ドル建て債券の償還処理が麻痺し、国際的な顧客の離脱が起こることにより、通常の営業活動までもが萎縮することになるでしょう。北京当局はこれを金融主権の侵害とみなして全面的な報復に転じる可能性が高く、中国人民銀行(PBOC)がドルの流動性を緊急支援すると同時に、関連取引を「人民元国際決済システム」(CIPS)へと迂回させようとするでしょう。中国貿易の約71%がドル決済で行われているため、その衝撃は世界中の貿易決済・ドル短期資金市場に波及することになり、これが、米国がこの段階へと容易に踏み込めない理由となっています。韓国への影響も甚大です。韓国企業の中国現地法人が当該銀行を主要取引銀行として利用している場合、ドル建て貿易代金の決済経路が遮断され、人民元や第三の銀行への緊急迂回を余儀なくされ、韓国ウォン・人民元直接取引の市場形成(中国銀行のソウル支店が担当)にも支障が生じ、韓中貿易金融全般における摩擦コストが上昇することになるでしょう。
3. シナリオC — 全面制裁対象の指定(金融の核心オプション)
中国のビッグ4銀行の本体を制裁対象として指定し、全米における管轄範囲内の資産を凍結する段階に至り、ここからは「恒力石化制裁」ではなく、米中金融のデカップリングの引き金となるでしょう。取引を行っていた世界中の金融機関が同時にエクスポージャーの回収に乗り出すことでシステミックな連鎖反応(Contagion)が発生し、50%ルールに基づき海外子会社・現地法人も広範囲にわたり遮断されます。しかしならが、中国ビッグ4銀行に対する遮断は、世界中が「ドルシステムが武器化され得る」という教訓を肌で感じられるようにし、脱ドル化を加速させる構造的な逆風も生じるものと見込まれます。韓国にとっては、貿易決済インフラの再編、ウォン・株式市場の急落、中国現地法人の資金逼迫、サプライチェーンへの同時的な打撃が重なる最悪のシナリオとなります。このため、シナリオCは相互確証破壊(MAD)の領域にあり、台湾有事など決定的な安全保障上の事案と結びつかない限り、米国が単独で実行に移す可能性は極めて低いです。
V. 韓国企業・金融機関に対する示唆と点検課題
現時点において、韓国企業・金融機関の観点においてより差し迫ったリスクとしては、ビッグ4銀行からの影響よりも、恒力石化(および親会社・系列会社・オフショア法人)自体が制裁対象であるという事実です。万が一、韓国の金融機関が恒力石化関連の代金をドル・コルレス銀行を経由して処理することになれば、それ自体が一次制裁違反のリスクにさらされるため、取引相手のスクリーニング基準日を2026年4月24日に設定して点検する必要があります。
一方、中国の銀行が米国の制裁に違反したという証拠が確保されたとしても、米国の選択としてはシナリオAが最も有力であり、Bは条件付き、Cはその確率が低くなるでしょう。最も可能性が高いのは、「米国はAで制裁を行い、B・Cのカードを交渉のレバレッジとして温存し、中国は新たなエクスポージャーを抑制して正面衝突を回避する」というものです。
この場合、韓国側のエクスポージャーは、おおむね4つの経路で発生します。直接取引よりも間接取引、特に中国銀行の特定支店と第三国の仲介業者が結びついた構造がリスクに晒されます。(i)企業間取引経路(中国の石油精製・石油化学の顧客、中国産PTA・PX・MEG・ナフサなどの購入、恒力石化グループの最終需要者)、(ii)金融取引経路(中国四大銀行が発行したL/C・保証・送金・シンジケートローン)、(iii)海運・物流・保険ルート(シャドーフリート、船舶自動識別システム(AIS)の不透明な活動、船舶間積み替え、P&I・再保険)、(iv)契約・法的ジレンマルート(米国の制裁遵守条項と中国の対制裁法規との間の二重の制約)です。
実効的な対応策としては、事前に韓国側のエクスポージャーと代替決済ルートをシナリオA・Bを基準としてマッピングするコンティンジェンシー・プランの策定です。直ちに着手すべき優先課題は、以下の5つとなります。第一に、エクスポージャーが最も大きく、かつ見落とされがちな事項である、中国現地法人の主要取引銀行のマッピングです。第二に、恒力石化およびその系列・迂回法人に対するスクリーニング(基準日4月24日、50%ルール・持分再編の迂回を含む。)です。第三に、シナリオBによる機能麻痺を防ぐための代替コルレス・決済ルートの事前確保となります。第四に、契約上の制裁条項と中国の反制裁法規が衝突する二重拘束の特定です。第五に、制裁段階の転換時に即座に対応できるよう、モニタリングのトリガーと報告体制を確立することです。
VII. 結論
恒力石化に対する制裁により表面化しているのは、個別の石油精製会社への制裁を超え、米国の「ドル秩序」と中国の「反外国制裁法の秩序」が正面から衝突し始めたという事実です。北京による「新規融資の中断・既存融資の維持」という設計は、米国を最も低いレベルのシナリオ領域に縛り付けようとする意図的な仕掛けであり、米国もまた、ビッグ4銀行のグローバルなシステム上の位置付けゆえに、はしごを登れば登るほど(段階UP)自らのコストが急増し、相互自制が強制されます。その結果、当面は正面衝突を避ける暗黙の均衡が維持される可能性が高いものの、これはトランプ・習近平による交渉、イラン情勢、満期延長に対する海外資産管理室の解釈、ビッグ4の欺瞞行為の立証の有無によって大きく揺らぐ虞のある不安定な均衡となります。ドル決済への依存度が高く、同時に中国が製造業のサプライチェーンにおいて大きな比重を占める韓国企業や銀行は、双方からの圧力を同時に計算しながら、危うい綱渡りをせざるを得ません。今後は、個別の規制遵守や短期的な調達先の多様化にとどまらず、エクスポージャー・マッピングや決済の緊急対応策を先制的に備えた、総合的なリスク管理体制の構築に着手する必要があります。
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☞ How We Can Help 法務法人(有)世宗の通商産業政策センターは、恒力石化(ヘンリー)制裁の局面にさらされている韓国企業・金融機関に対し、次のような法的助言を提供させて頂きます。 第一に、制裁エクスポージャーの診断およびエクスポージャーマップの作成を支援します。最も見落とされがちな中国現地法人の主要取引銀行、コルレス・人民元決済への依存度、恒力石化および親会社・系列会社・オフショア法人(基準日2026年4月24日、50%ルール含む。)を統合的に特定してリスク等級の分類を行います。 第二に、決済・流動性に関するコンティンジェンシープランを設計します。CAPTAによるコルレス遮断(シナリオB)を想定し、代替決済・コルレスラインを事前に確保するとともに、ドル遮断時の人民元(CIPS)・第三通貨による迂回ルートや、決済通貨の転換(USD→CNY/KRW)に伴う為替ヘッジの再設計、資金の凍結(trapped funds)への対応についてアドバイスを行います。 第三に、契約上の制裁条項を整備し、二重拘束の対象について点検を行います。二次制裁・CAPTA・50%ルールを網羅する制裁条項、第三者への支払い・通貨変更の事前承認権、不可抗力・履行拒否・解約条項を強化し、米国の制裁遵守と中国の反外国制裁法違反が衝突する二重拘束の対象を特定します。 第四に、貿易金融・取引審査プロトコルを整備します。中国銀行が発行するL/C・保証・送金について、発行銀行・支店・申請人・受益者・物品・船舶・原産地を統合的に点検し、フロントカンパニー・シャドーフリート・船舶間積み替え・原産地再ラベル付けなどの回避手段に対応するフィルタリング・エスカレーション基準を策定します。 第五に、危機対応および政策モニタリングの支援を行います。制裁指定・取引拒否・資産凍結が発生した際、取引の整理・報告・支払保留・当局との協議に関連するサポートを行い、米中間の通商・金融・技術規制の動向や段階転換のトリガーを継続的に追跡し、投資戦略および政府の対応全般にわたる適時適切な分析を提供します。 |
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グローバル通商産業イシュー FOCUS1
カザフスタン、原油から新都市まで―協力の地平を広げる
ホルムズ海峡は、韓国の原油輸入量の約70%が通過する要衝です。集中の度合いが非常に高いため、逆説的に「別のルート」を模索する必要性が高まっています。キム・ジョングァン産業通商部長官が12日に亘る巡訪の最初の訪問先としてカザフスタンを選んだ理由はここにあります。カザフスタンは「中東離れ」による原油調達先の多様化における最重要候補であり、資源や新産業分野において協力が可能な戦略的パートナーです。
1. 2年ぶりに再開された最高レベル協議体
キム長官は6月7日から9日まで、アスタナで「第11回韓国・カザフスタン貿易・経済および科学・技術協力共同委員会」を主宰しました。同共同委員会は、両国の貿易協定に基づき設置・運営されている最高レベルの協議体であり、韓国産業通商部長官とカザフスタン産業建設部長官がそれぞれ首席代表を務めています。第11回会議は2024年5月の第10回会議以来2年ぶりに開催され、これまで蓄積された協力課題についての点検を行いました。
2. 「CEPA」で貿易の枠組みを再構築
今回の会議の核心としては、「韓国・カザフスタンCEPA(包括的経済パートナーシップ協定)」の締結推進について公式に議論した点にあります。CEPAは関税引下げと投資保護を包括する事実上の自由貿易協定であり、成立すれば両国の経済協力の水準を一段階引き上げる制度的基盤になり得ます。双方は、電子・自動車・プラントなど、すでに現地に進出している韓国企業の事業上の課題を解消するためにも協力することに合意しました。
3. 黒海へと開かれた原油の道
エネルギー協力は、今回の訪問における最も喫緊の議題でした。キム長官は、カザフスタンのアッケンジェノフ・エネルギー大臣と会談し、去る4月のカン・フンシク大統領特使のカザフスタン訪問以降、進められてきた原油導入の推進状況を点検し、双方は原油の需給安定化に向けて継続的に協力することで合意しました。
カザフスタン産原油が注目される理由は、その輸送ルートにあります。カザフスタン西部のテンギズ(Tengiz)油田で生産された原油は、CPC(Caspian Pipeline Consortium)のパイプラインに沿って、ロシアのの黒海沿岸にあるノヴォロシースク港に到達し、そこから韓国へと向かいます。全長1,511kmに及ぶこのパイプラインは、1990年代後半に建設され、2001年から稼働しており、ホルムズ海峡を経由しない「中東回避」の多様化ルートとして、具体的な代替案として浮上しています。
4. プラントと発電、韓国企業の受注機会
資源協力は韓国企業の受注につながります。双方は、韓国企業が受注したカラチャガナク地域ガス処理プラント事業の円滑な推進を支援することに合意しました。カラチャガナクはカザフスタンを代表する大規模なガス・コンデンセート生産地であり、この地域の処理インフラ拡充は、韓国のEPC(設計・調達・施工、Engineering、Procurement、Construction)企業にとって意義深い受注案件となります。エキバストス発電所における近代化事業の早期推進についても協力することで合意しており、発電設備分野においても韓国企業への機会となる道が開かれます。
5. 資源を超え新産業へ
今回の会議がさらに注目される理由は、協力の重点が資源だけに留まらなかった点にあります。カザフスタンが重点的に推進しているアラタウ新都市開発に関連し、韓国のスマートシティ開発経験を共有し、韓国企業の参加策について議論しました。特に、新都市内の都市航空交通(UAM)分野において、両国企業間の協力を推進するものとして合意し、未来のモビリティに至るまで協力の幅を広げました。
デジタル・知的財産権分野においては、知的財産の保護と偽造品の根絶に向けた協力を継続するものとし、環境分野では、パリ協定に基づく温室効果ガスの国際削減事業、水管理技術、森林回復・気候変動対策に関する協力についても議論されました。
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☞ How We Can Help カザフスタンとの協力は、原油輸入という単一の取引を超え、貿易協定・資源開発・プラント受注・新産業への進出・知的財産・炭素規制が複雑に絡み合った複合的な課題になります。幣所の通商産業政策センターは、韓国企業のビジネスチャンス獲得に向けた3つの役割を果たします。 第一に、貿易協定・通商および資源開発投資に関する法律諮問です。韓国・カザフスタンCEPAの進展に備え、関税・原産地・投資保護条項の活用戦略を策定し、テンギズ油田やCPC送油パイプラインインフラなど、海外資源開発事業における持分取得・合弁構造について助言を行います。石油精製会社や総合商社がカザフスタン産原油を輸入する際に締結する売買契約における価格連動方式、一定量の引受義務条項、並びに黒海・ノヴォロシスク経由の輸送過程における保険・物流リスクの配分に至るまで包括的に扱います。 第二に、プラント・発電プロジェクトおよび新産業への進出に関する法律諮問です。カラチャガナク地域ガス処理プラント、エキバストス発電所の近代化といったEPC事業における受注契約・下請け・現地許認可、および紛争解決の枠組み関連の支援を行います。アラタウ新都市開発や都市航空交通(UAM)などの新産業に進出する建設・モビリティ・スマートシティ企業に対しては、合弁法人の設立、現地の規制対応、技術ライセンス契約について助言を行います。 第三に、知的財産の保護および環境・規制に関する法律諮問です。偽造品の根絶や「K-ブランド」の無断流用に対応する知的財産ポートフォリオの管理を支援し、パリ協定に基づく温室効果ガスの国際削減事業を推進する際には、事業構造の設計や、各国の温室効果ガス削減目標・排出権取引制度との整合性の確保について助言を行います。水管理・森林再生など、グリーンビジネスへの進出に必要な行政・規制に関する検討も幅広く提供しています。 |
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グローバル通商産業イシュー FOCUS 2
中国の希土類の武器化に対する日本の対応と韓国への示唆
高市早苗首相が2025年11月、台湾の有事事態を日本の存立危機事態として言及したことを受け、中国は2026年1月6日、日本の軍事最終使用者・軍事的用途向けのすべてのデュアルユース品目の輸出を禁止しました。中国における「レアアースの武器化」に対する日本の対応は、韓国政府や企業にとっても示唆するものがあります。
1. 衝動的な報復ではなく制度化された統制
中国によるレアアース規制は、衝動的な報復ではなく、輸出管理法(2020年12月1日)および両用品目輸出管理条例(2024年12月1日)に基づいて運用されています。商務部と税関総署は、2025年4月4日の公告第18号により、ジスプロシウム・テルビウム等の中・重希土類7種に対して直ちに許可制を課しました。10月9日には5種を追加し、17種のうち12種について、その対象を域外適用(中国産が0.1%以上)へと拡大しました。中国産のレアアースを0.1%以上使用する場合にも適用されるようになったものです。規制の適用としては全面禁輸ではなく、承認率を調整する「数量調整型の統制」方式を採用しています。
2. 日本を標的とする刃
高市首相の発言を受け、中国は2026年1月6日から、民間用と軍事用が融合するすべてのデュアルユース品目の輸出を禁止しました。ジスプロシウム・テルビウム・ガリウムなどの対日輸出は、2025年12月以降事実上途絶えています。中国の対日レアアース輸出は、2026年4月に前年比80%以上急減しました。11月の米中合意により10月の措置は1年間猶予されたものの、4月4日の7品目許可制は猶予対象外となるため、現在も存続しています。
3. 日本による多層的対応とその限界
日本は備蓄によって時間稼ぎを行いつつ、調達先の多様化やリサイクルの活用によって対応しています。例えば、日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と双日はオーストラリアのライナス社に共同投資し、初めて中国以外からジスプロシウムを確保しました。
一方で、レアアースを使用せざるを得なかった技術の使用を減らす、あるいは全く使用しない方向へと、技術転換を図っています。その代表的な例が永久磁石です。永久磁石(NdFeB)は電気自動車・ハイブリッド車のモーターに使用されますが、これにはジスプロシウムやテルビウムといった希土類が用いられていました。大同特殊鋼(Daido Steel)がホンダと共に量産に成功した磁石は、レアアースを一切使用せずにモーターの性能を発揮できるよう設計を変更した事例となります。
2010年、日本は中国との間で尖閣諸島をめぐる外交的対立を経験しています。当時、中国は日本に対してレアアースの輸入禁止措置を講じました。日本はこのとき初めて、中国の「レアアースの武器化」を経験することになります。その後、日本は希土類の中国への依存度低減に向けて着実に努力を重ね、その結果、中国への依存度は90%から60%前後まで低下しました。
しかしながら、依然として代替が難しく、全量を中国に依存している品目があります。ジスプロシウム、テルビウムがその代表的なものです。総量に関連する多角化には部分的な成果が見られるものの、いくつかの重要品目においては、依然として中国への依存度が圧倒的です。
4. 日本の対応が韓国に与える示唆
現在、韓国は尖閣諸島をめぐる紛争発生以前の2010年の日本の状況に近いと言えます。韓国貿易協会によると、レアアースを含む永久磁石における中国輸入依存度は87.9%で、日本の31.
1%と比較すると約2.8倍高い数値となります。レアアースに対する国家的な対応は、2023年の重要鉱物確保戦略の発表以降にスタートしているため、日本と比較するとその出発が13年遅れていることになります。
韓国は工業用尿素の対中依存度が97.7%でした。2021年には尿素水(アドブルー)不足の混乱に見舞われました。安価で入手しやすい素材であるほど、単一国への依存度が高くなり、その一点が途絶えれば産業全体が停止してしまうという教訓を学んだのです。
希土類に対する日本の対応は、備蓄、調達先の多様化、リサイクル、レアアースを使用しない方向へとの技術革新に集約されます。最近、高市首相はG7会議を控え、共同備蓄を提案しました。韓国もまた、国際的な連携を含め、備蓄、調達先の多様化、リサイクル、技術革新に関し、政府と企業レベルでの模索を進めていく必要があります。
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☞ How We Can Help 法務法人(有)世宗の通商産業政策センターは、中国によるレアアースの武器化と日本・韓国における対応という流れに対し、通商・契約・政策金融を網羅する以下の3つの法的助言を提供させて頂きます。 第一に、輸出管理・制裁コンプライアンスおよび通商救済です。4月の許可制(7種)、10月の拡大(12種)、0.1%のデミニミス(非課税基準)、域外適用、50%ルール、対日二重用途禁輸に関する品目該当性の判定および中国産価値の比重算定、最終ユーザーに関する実態調査、韓国の対外貿易法上の戦略物資の検討についてご案内します。WTO紛争(中国・希土類DS431・432・433の判例)およびGATT第11条・安全保障例外との整合性の分析、アンチダンピング・相殺関税等の輸入側の通商救済措置についても扱います。 第二に、サプライチェーン契約に関する法律諮問および重要鉱物の取引設計です。輸出管理による履行不能・履行遅延のリスクを不可抗力および事情変更(ハードシップ)条項によって分散させ、価格調整・再交渉・通知のメカニズム設計を行います。日本、豪州、米国の企業のうち、希土類の採掘および精錬を行っている代表的な企業として、JARE、米国国際開発金融公社(DFC)、MP Materialsがあります。これらの企業に対する株式投資、合弁・オフテイク契約を参考に、鉱山・鉱業公団・輸出入銀行の政策ファイナンスと連携させるとともに、米国のFEOC(懸念される外国事業体(現時点では中国、イラン、ロシア、北朝鮮))規制に基づく中国系株式構造の再編についても扱います。 第三に、経済安全保障に関する法制度への対応、備蓄および資源化です。韓国の代表的な法制度としては『「サプライチェーン安定化基本法』、『国家資源安全保障特別法』、『素材・部品・設備特別法』があります。これらの法律に基づく重要品目の指定への対応や、基金、税制、補助金の活用について法的アドバイスを行い、廃磁石・廃バッテリーの永久磁石資源化に関する規制特例や許認可との連携を図ります。さらに、米中規制の動向や、韓国が資源の戦略地政学的関与に関するフォーラム(FORGE)の議長国として果たす役割など、多国間連携に対する継続的なモニタリングを行い、リスクをビジネスチャンスへと転換させるパートナーの役割を担います。 |
| 通商産業政策センター(Center for Trade, Industry and Public Affairs) 法務法人(有)世宗の通商産業政策センターは、単純な法律リスクを検討するだけでなく、企業において、急変するグローバル地政学・通商・産業環境を機会転換できるようにサポートする総合戦略コンサルティング組織となります。経済安全保障・輸出統制・関税等の各国における規制の影響を政策的コンテキストを通じて構造的に分析し、その中で企業の海外進出戦略・投資構造・供給網の再編、紛争解決に向けたソルーションを統合設計することがセンターの重要な役割です。防衛産業、エネルギー・インフラ、造船、バッテリー、半導体、AI等の戦略産業分野を重点的に取り扱い、米国・EU・中国の3大圏域をはじめとする主要国家における規制リスクの統合管理を行います。 |











