先日、検事における直接捜査開始の範囲を縮小させる内容等が盛り込まれた改正検察庁法および刑事訴訟法が2022年5月3日付で公布されました。改正法律は、公布から4ヶ月後の2022年9月の初旬から施行される予定となっており、その主な内容の変化については、次のとおりです。

[改正案の概観]

1. 改正の核心内容
① 検事における直接捜査開始の犯罪範囲の縮小(6大犯罪→2大犯罪)[検察庁法]
② 自身が捜査開始した事件に対する公訴提起の禁止[検察庁法]
③ 司法警察官の一般送致事件に対する補完捜査条項はそのまま維持し、その他の送致事件の場合、同一性を害しない範囲内でのみ補完捜査が可能[検事訴訟法]
2. その他の改正内容
① 検事の直接捜査開始の範囲に属する「警察公務員の犯罪」における「警察公務員」に「特別司法警察官」を含め、「高位公職者犯罪捜査処所属の公務員」を追加[検察庁法]
② 司法警察官の不起訴処分通知に対する異議申立人の範囲から「告発人」を除く[刑事訴訟法]
③ 捜査中の事件の犯罪嫌疑を明らかにするための目的の別件捜査の禁止および別件証拠等を通じた当該事件の自白や供述の強要禁止[刑事訴訟法]
④ 検察総長は、検事の直接捜査開始の範囲に属する犯罪に対する捜査を開始できる部の職制と所属検事等の現況を四半期別で国会に報告[検察庁法]

 

1. 検事の捜査開始犯罪範囲の制限等

改正検察庁法は、検事の直接捜査開始の範囲を従前の6大犯罪(腐敗(不正等)犯罪、経済犯罪、公職者犯罪、選挙犯罪、防衛事業犯罪、大型惨事犯罪)から2大犯罪(腐敗犯罪、経済犯罪)へと縮小させるものの、選挙犯罪については、2022年6月1日の第8回地方選挙を考慮し、2022年12月31日までは従前と同様に捜査を開始できるものとしました。

検事の捜査開始が可能な腐敗犯罪と経済犯罪の具体的は範囲については、下記の表のとおりです。

主要犯罪 具体的な犯罪
腐敗犯罪 「主要公職者」の収賄、特定犯罪加重処罰等に関する法律上の収賄·斡旋受財、医療·薬品関連のリベート、外国公務員に対する収賄、政治資金の不正授受、弁護士法違反、金融機関役職員·監査人·会計士·会社発起人の背任受財等
経済犯罪 利得額5億ウォン以上の詐欺·横領·背任、3000万ウォン以上の密輸入·密輸出、5000万ウォン以上の関税脱税等の関税法違反、払戻税額5億ウォン以上の租税犯処罰法違反、時価操作等の金融証券犯罪、産業技術·営業秘密の外国流出、不当な共同行為、不公正取引行為、不当な下請代金の強要、虚偽·誇張·誹謗広告の行為、財産の国外移し、対外貿易法違反、麻薬類の輸出入等

一方、改正法律においては、従前から捜査開始の範囲に属していた「警察公務員の犯罪」の箇所は、警察公務員に特別司法警察官(以下「特司警」といいます。)を追加し、高位公職者犯罪捜査処(以下「公捜処」といいます。)所属の公務員の犯罪も追加していますが、これは公職者犯罪が捜査開始の範囲から除外されることで、特司警と公捜処所属の公務員の犯罪に対する捜査の空白をなくすための措置として解釈されます。

改正前 改正後
第4条(検事の職務)
① 検事は、公益の代表者として次の各号の職務と権限がある。
1.犯罪捜査、公訴の提起およびその維持に必要な事項。ただし、検事が捜査を開始できる犯罪の範囲は、次の各目のとおりである。
ア.腐敗犯罪、経済犯罪、公職者犯罪、選挙犯罪、防衛事業犯罪、大型惨事等の大統領令で定める重要犯罪
イ.警察公務員が犯した犯罪
ウ.ア目·イ目の犯罪および司法警察官が送致した犯罪に関連して認知した各当該犯罪と直接関連性がある犯罪
第4条(検事の職務)
① 検事は、公益の代表者として次の各号の職務と権限がある。
1.犯罪捜査、公訴の提起およびその維持に必要な事項。ただし、検事が捜査を開始できる犯罪の範囲は、次の各目のとおりである。
ア.腐敗犯罪、経済犯罪等の大統領令で定める重要犯罪
イ.警察公務員(他の法律により、司法警察管理の職務を行う者を含む。)および公捜処所属公務員(『高位公職者犯罪捜査処の設置および運営に関する法律』に基づく派遣公務員を含む。)が犯した犯罪
ウ.ア目·イ目の犯罪および司法警察官が送致した犯罪に関連して認知した各当該犯罪と直接関連性がある犯罪

 

2. 検事における自身の捜査開始した事件での公訴提起の禁止

従前の検事の起訴範囲には何らの制限も存在しなかったものの、改正検察庁法は、検事が直接捜査開始をした犯罪については、公訴を提起できないものとしました。これは、検事が直接捜査を開始した犯罪については、中立的な地位で捜査を進めるというよりは、起訴の予断を持ちつつ捜査を行う可能性があるため、このような予断に基づく起訴を遮断するための措置と見られます。

改正前 改正後
<新設> 第4条(検事の職務)
② 検事は、自身が捜査開始した犯罪については、公訴を提起することができない。ただし、司法警察官が送致した犯罪については、この限りではない。

 

3. 一部の送致事件における補完捜査の範囲制限

従前の検事は、司法警察官の送致する事件の補完捜査に関連し、補完捜査の範囲に特別な制限がありませんでした。しかし、改正される刑事訴訟法は、① 検事が司法警察官に特定事件に対する是正措置を要求した後、是正措置が履行されないと判断して送致を求めた事件(同法第197条の3第6項)、② 検事の管下捜査官署の逮捕·拘束場所の観察過程において送致を命じた事件(同法第198条の2第2項)、③ 告訴人等の異議申立てにより送致された事件(同法第245条の7第2項)については、「同一性を害しない範囲」内でのみ捜査ができるものと制限する規定を新設しました。

当初の改正案の原案には、司法警察官の一般の起訴意見送致事件(同法第245条の5第1号)に関する補完捜査についても「同一の犯罪事実の範囲内でのみ」捜査できるものと制限を加える規定が盛り込まれていたものの、検事の捜査のうち「共犯が確認」されたり「追加の被害事実」が見受けられる等の状況になった場合に、効率的な対処が難しく、これにより国民の生命と財産の保護が疎かになり得るというコンセンサスの形成により、最終修正案では上記部分が省かれることになりました

改正前 改正後
第196条(検事の捜査)
検事は、犯罪の嫌疑があると思料されるときには、犯人、犯罪事実と証拠を捜査する。
<新設>
第196条(検事の捜査)
① 検事は、犯罪の嫌疑があると思料されるときには、犯人、犯罪事実と証拠を捜査する。
検事は、第197条の3第6項、第198条の2第2項、第245条の7第2項により、司法警察官から送致された事件に関しては、当該事件と同一性を害しない範囲内で捜査することができる

 

4. 異議申立人の範囲での「告発人」の除外

従前の刑事訴訟法は、司法警察官が起訴意見により送致する事件(同法第245条の5第1号)を除いた残りの事件(同法第245条の5第2号)に関し、告訴人等の事件関係者ら に対して「事件を検事に送致しない趣旨とその理由」を通知するものとし(同法第245条の6)、この場合、告訴人等は、当該司法警察官の所属官署の長に対して異議の申立てができ(同法第245条の7第1項)、この場合に司法警察官は、事件を検察に送致しなければなりませんでした(同法第245条の7第2項)。

しかしながら、改正される刑事訴訟法は、上記のような異議申立てを行える事件関係者の範囲から「告発人」を省き、これ以上告発人は、自らが告発した事件の捜査を担当した司法警察官が事件を不起訴処分にしたとしても、異議申立てができないようになりました。

改正前 改正後
第245条の7(告訴人等の異議申立て)
① 第245条の6の通知を受けた者は、当該司法警察官の所属官署の長に対し、異議申立てすることができる。
第245条の7(告訴人等の異議申立て)
① 第245条の6の通知を受けた者(告発人を除く。)は、当該司法警察官の所属官署の長に対し、異議申立てすることができる。

 

5. その他の改正内容

改正刑事訴訟法においては、捜査機関が捜査中の事件の犯罪嫌疑を明らかにするための目的から、合理的根拠なく行う別件の捜査を禁止し、別件捜査を通じて確保した証拠等による自白や供述の強要も禁止しています。

改正前 改正後
第198条(遵守事項) ①~③(省略)
<新設>
第198条(遵守事項) ①~③(現行と同じ)
捜査機関は、捜査中の事件の犯罪嫌疑を明らかにする目的で、合理的な根拠なく別件の事件を不当に捜査してはならず、他の事件の捜査を通じて確保された証拠または資料を挙げて関連のない事件に対する自白や供述を強要してはならない。

なお、改正検察庁法は、検察総長をもって検事の直接捜査開始が可能な犯罪を捜査する部署の職制と勤務中の検事等の現況について、四半期別で国会に報告するものとしました。

改正前 改正後
第24条(部長検事) ①~③(省略)
<新設>
第24条(部長検事) ①~③(現行と同じ)
検察総長は、第4条第1項第1号カ(アに当たる)目の犯罪に対する捜査を開始できる部の職制および当該部に勤務している所属検事と公務員、派遣の内訳等の現況を四半期別で国会に報告しなければならない。

 

1 告訴人·告発人·被害者またはその法定代理人(被害者が死亡した場合には、その配偶者·直系親族·兄弟姉妹を含む。)

 

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