* 「政府における太陽光発電運営実態調査による補助金還收処分等の制裁の可能性およびその限界」に関連しては、2022年10月5日付の弊社ニュースレターをご参考ください。
1.国家財政犯罪合同捜査団の発足および国務調整室腐敗予防推進団における合同点検の結果発表
去る9月30日付で大検察庁には、ソウル北部地方検察庁において検察・国税庁・関税庁・金融監督院・預金保険公社等の政府全体の専門人材により構成される「国家財政犯罪合同捜査団」を発足させました。国家財政犯罪合同捜査団は、税収・税出の犯罪に対する捜査能力と専門性を兼ね備えた検事と捜査官、国税庁・関税庁・金融監督院・預金保険公社の専門家等、総勢30名余りが協業を通じて租税・財政犯罪とマネーロンダリング関連の犯罪を「ファストトラック」を通じて捜査する方針で、国税庁等から派遣された専門家らが犯罪嫌疑を発見・分析し、資金の追跡と課税資料の通知、不正な蓄財財産の還收等をサポートすると、検察は資料分析と強制捜査、起訴、公訴維持等の業務を進めていく予定であると明らかにしました。
上記の国務調整室政府合同腐敗予防推進団(以下「国務調整室腐敗予防推進団」といいます。)は、全国226の地方自治団体のうち12の地方自治団体を対象として、太陽光発電に関連する「電力産業基盤基金事業」の運営実態に対する第一次合同点検を行い、延べ2,267件(2,616億ウォン)の違法・不当事例を摘発し、不当支給された補助金を還收する等の対応策を講じると公表しており、その後続措置として、電力産業基盤基金事業において支出される補助金と貸付支援を違法・不当受領したことに関与した総376名(1,265件)につき、大検察庁に捜査依頼をしたと明らかにしました。
さらに、監査院は、太陽光事業に関連し、金融監督院を相手に太陽光の貸付資料を要請するなどの予備監査に乗り出しており、今後、直接現場を訪問して監査を行う予定であるとして報道されました。
結局、国家財政犯罪合同捜査団の発足により、今後、太陽光等の新・再生可能エネルギー金融支援事業等の電力産業基盤基金事業に関連する違法・不当事例につき、政府全体で迅速かつ厳重な調査・捜査が進められるものと思われます。
2.国務調整室腐敗予防推進団の合同点検結果の類型分析-刑事的イシュー
ア.違法・不適正貸付(新再生可能エネルギー金融支援事業):総1,406件(1,847億ウォン)
(1)政府は、2019年から2021年まで、延べ6,509件の太陽光発電施設等の新・再生可能エネルギー事業に対し、約1兆1,000億ウォンの金融支援事業を行ってきましたが、国務調整室腐敗予防推進団の合同点検において、電子税金計算書の代わりに、紙の税金計算書を提出した後に貸付を受けた事例、工事費用を水増しして割増された貸付を受け取った事例、虚偽のきのこ栽培施設と昆虫飼育施設を建設した後、その上に太陽光施設を作って貸付金を受け取った事例、電気分野の技術士等ではない施工業者の見積書のみを使って電気工事費用の内訳を確定して不当または超過貸付を受け取った事例、電気工事業の無登録業者と契約をしたり下請の規定に違反している事例等、延べ1,406件の違法・不適正貸付の事例が確認されたと発表しました。
(2)発電施工業者が実際の金額よりも水増しされた電子税金計算書を発給し、発電事業者をもって金融機関から過度な貸付金を受け取らせた後に、これを取り消す、または縮小して再発給するなど、虚偽書類を用いて貸付を受けた場合、これは韓国エネルギー公団の新・再生エネルギーセンターまたは金融機関を被害者とした詐欺罪、租税犯処罰法違反罪が成立し得ます。また、電子税金計算書の発給義務に違反し、紙の税金計算書を発給した場合、このような行為だけでは刑事処罰の対象ではないものの、万が一、内容に虚偽の記載があったのであれば、詐欺罪、租税犯処罰法違反罪が成立し得ます。
(3)さらに、農地に不法で太陽光施設を設置した場合には、詐欺罪、農地法違反罪が成立することがあり、施工業者等の見積書だけで電気工事費用の内訳書を確定して作成した金融支援事業資金支援の申請書類を、韓国エネルギー公団新・再生エネルギーセンターに提出して金融機関から貸付を受けた場合には、詐欺罪、電力技術管理法違反罪が成立し、また、電気工事業無登録業者に下請を出した場合には、電気工事業法違反罪が成立することになります。なお、農地法、電力技術管理法、電気工事業法の両罰規定に従い、法人の代表者や法人についても処罰を受ける可能性があります。
(4)これに関連し、国務調整室腐敗予防推進団は、合同点検摘発事例のうち、太陽光事業に関連する虚偽の税金計算書発給により141億ウォンの不当貸付を受けた14名(99件)を詐欺および租税犯処罰法違反の嫌疑、きのこ栽培舎等の偽装太陽光施設を設置し、総額34億ウォンの融資を受けた17名(20件)は詐欺および農地法違反の嫌疑、無登録業者に対して太陽光設置工事を依頼したり不法に下請に出して金融支援を受けた333名(1,129件)については、電気工事業違反の嫌疑により大検察庁に捜査依頼をしたと明らかにしました。
イ.補助金の違法・不当執行(発電所周辺地域支援事業等):総845件(583億ウォン)
(1)政府は、発電所周辺地域支援事業のうち、所得増大事業の項目により支援できない融資事業を執行し、事業費の残額を返還せずに、事業費を執行したものと虚偽の報告をした事例、道路・修理施設の整備工事を不当に少額分割して随意契約を結んだ事例、補助金支援の対象でない他の地域の町会館建設に補助金を使用した事例など、合計845件の補助金違法・不当執行事例が確認されたと発表しました。
(2)新・再生可能エネルギー設備等の補助金は電力産業基盤基金から充当するものとして、 補助金管理に関する法律が適用されます(補助金管理に関する法律第2条第1号、国家財政法別表2)。これにより、上記のように、虚偽または不正な方法を通じて補助金を受け取る場合と、補助金を他の用途で使用した場合には、詐欺罪、補助金管理に関する法律違反罪が成立し得、補助金管理に関する法律の両罰規定に従って法人の代表者や法人もまた処罰される可能性があります。
ウ.入札談合等の違法・特例事例:総16件(186億ウォン)
(1)政府は、韓国電気安全公社が発注した電気安全点検装備の購買入札にサクラ役の業者を参加させて予定価格よりも高い金額で入札させるなど、価格談合を行った事例、地方自治団体が太陽電池モジュールを調達・購買する過程で、当初の購買要求書とは異なる物品が入ってきたにも関わらず、適正なものとして納品検査をし設置を進めるなど、特定業者の装備を特恵で購買した事例等も確認されたと発表しています。
(2)上記のごとく、入札過程においてサクラ役の業者を参加させ価格談合を行った場合には、入札妨害罪、独占規制および公正取引に関する法律違反罪が成立し得るため、独占規制および公正取引に関する法律の両罰規定により法人の代表者や法人についても処罰される可能性があります。
3.結論
国務調整室腐敗予防推進団が太陽光等の電力産業基盤基金事業の運営実態について点検し、その後続措置として大検察庁に捜査依頼を行ったのは、全国226の地方自治団体のうち12箇所のみを対象とした見本調査の結果によるものに過ぎません。
したがって、新たに発足した国家税制犯罪合同捜査団は、今後全国の地方自治団体、韓国エネルギー公団、韓国電力の電力基金事業団、金融機関等から関連資料を受け取り、太陽光等の新・再生可能エネルギー金融支援事業等の電力産業基盤基金事業に関連する全般的な違法・不当事例は勿論のこと、租税・財政犯罪とマネーロンダリング犯罪を「ファストトラック」を通じて本格的に捜査していくものと思われます。
法務法人(有)世宗の刑事グループは、検察・警察および法院等において租税・財政犯罪は勿論のこと、マネーロンダリング犯罪、不公正取引事件等に関する調査と捜査および裁判の経験を有する多数の専門家らを擁しており、特に太陽光事業にかかる多数の刑事事件を担当してきた経験も持っており、公法紛争グループおよびエネルギー産業チームとも有機的な協業を通じ、関連紛争に対して総合的なアドバイスを提供しています。上記の国家財政犯罪合同捜査団における捜査対応および補助金還收処分等につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。