『産業技術の流出防止および保護に関する法律』(以下「産業技術流出防止法」という。)は、2023年1月3日に改正され、2023年4月4日から施行されていますが、これに関連し、特に法第14条(産業技術の流出および侵害行為の禁止)の改正内容に注目する必要があります。

改正前の法第14条第2号は、産業技術に対する秘密保持義務を有する者が、「不正な利益を得るか、産業技術の保有者に対して損害を与える目的」から産業技術を流出するなどの行為を、法第14条第6号および第6号の2は、「国家核心技術を外国で使用するか、使用させることにする目的」から法上の求める申告ないし承認を得ていないか、不正な方法により申告ないし承認を受け、海外における買収·合併等をする行為を規定していました。

このように、改正前の法においては、上記のような規制対象の行為につき、行為者の「目的」を求めたものの、改正法においては、「目的」ではない単なる「故意」(すなわち「知っていながらも」)のみを要求するものへと、これを変更しています。

つまり、改正前の法によると、上記の行為らは、目的犯として、故意の他にも特定の目的があることを検察側において立証すれば、処罰することができました。しかしながら、最近頻繁に起きている技術流出の犯罪と先端技術の重要性を考慮し、産業技術侵害行為の成立要件を認識しているだけでも、処罰ができる行為犯として大きく緩和したものです。

従来の大法院(最高裁に当たる)での判例は、行為者が産業技術であることを認識し、産業技術を流出するなどの行為をしたという事実だけで、「外国で使用するか、使用させることにする目的」や「不正な利益を得るか、損害を与える目的」があったとは推定することができず、目的があったかは、行為者の職業、経歴、行為と動機および経緯とその手段、方法並びに産業技術の保有企業と産業技術を取得した第三者との関係等を総合し、社会通念に照らして合理的に判断しなければなりませんでした。しかしながら、このような法改正により、今後は行為者が産業技術であることを認識し、同法が禁止している行為をしたという事実のみで処罰ができるようにしたものです。

産業技術保有者の「損害の発生」は、産業技術が外部に流出したという事情だけでも認められる場合があるということを考慮すると、役職員の転職、下請け等に関連して紛争が増加する可能性があるため、企業らや労働者いずれも、これに対して積極的に備えておく必要があります。特に企業においては、海外企業とのM&Aや投資、技術の売却、ライセンス等を進める場合、国家核心技術が海外企業へと移転する可能性があるか否かにつき、事前に綿密な確認を行う必要があります。

一方、2022年2月3日に制定され2022年8月4日から施行されている『国家先端戦略産業競争力の強化および保護に関する特別措置法』(以下「国家先端戦略産業法」という。)に関連し、『国家先端戦略技術の指定等に関する告示』が2023年6月2日に制定·告示され、同日より施行されています。

同告示は、別表を通じて、国家先端戦略技術の細部水準を定めていますが、具体的には、半導体の分野における8技術、ディスプレイ分野の4技術、二次電池分野の3技術、バイオ分野の2技術として、これによると、「上記各技術に特化され量産を目的として開発されるか、量産に使用される技術」についても、「国家先端戦略技術」に該当します(同告示第3、4条)。国家先端戦略産業委員会は、2023年5月26日の会議において、従前の半導体、ディスプレイ、二次電池に加え、バイオ分野を国家先端戦略技術として追加しているところ、今後、未来の自動車、ロボット、防衛産業、電子力発電等の追加の遺憾についても、検討する予定となっています。

また、同告示は、国家先端戦略技術に該当するか否かの判定申請の資料(同告示第5条)、海外の買収合併等の事前検討の資料(同告示第6条)、国家先端戦略技術の判定手続き(同告示第7条)等についても、規定しています。

参考までに、第1次国家先端戦略産業の育成の基本計画によると、550兆ウォン以上の予算が民間投資される予定であり、先端産業の立地支援のための国家産業団地の造成、優秀人材の養成に向けた『(仮称)先端産業人材革新特別法』の制定の推進、技術流出における量刑基準の引上げ推進、業種別の特性化大学院の指定推進等が予定されています。

世界的に、経済安保の強化がなされている中、我が国では、昨年に国家先端戦略産業法が制定され、日本では、2022年に経済安全保障推進法の制定、米国では2022年に輸出統制改革法に基づき、半導体およびソフトウェアの品目を輸出統制の対象として追加指定しています。このような世界的な流れに歩調を合わせ、我々の企業においても、産業技術、国家核心技術または国家先端戦略技術に関連する取引の場合、産業技術流出防止法だけでなく、国家先端戦略産業法上の規制対象に該当するか否かについて綿密に検討しなければならず、さらにこれら取引が上記のような海外国家における規制の対象になるのかについても、注意深く検討していく必要があると言えます。