1. はじめに
ついに商法改正案が国会本会議を最終的に通過しました。第21代大統領選挙以降『共に民主党』において推進してきた商法改正案が与野党の合意により、法制化に向けた第一歩を踏み出すことになりました。今回通過した商法改正案は、▲取締役の株主に対する忠実義務の明示、▲上場会社における社外取締役の名称を独立取締役への変更、▲監査委員の選出時、大株主および特殊関係人の議決権を3%に制限するいわゆる「3%ルール」の強化、▲大規模上場会社における電子株主総会の導入義務化を主な骨子としています。
特に、今回の改正商法は、去る3月に国会を通過したものの、前大統領権限代行の拒否権行使により白紙となっていたもので、従来の改正案よりもさらに強化された条項を含んでいる点で注目を集めています。取締役の株主に対する忠実義務条項は公布後直ちに施行される一方、電子株主総会の導入は2027年1月から、残りの条項は1年間の猶予期間を置いて施行される予定です。今回の改正商法には、大規模上場会社の集中投票制(累積投票制)の義務化、分離選出任された監査委員の人数を拡大する案は含まれていません。当該制度は、公聴会等を経て後日検討することで合意されたため、今後の追加改正が行われる可能性があります。
李在明(イ・ジェミョン)政権発足後、初の与野合意法案として可決された商法改正により、企業のコーポレートガバナンスと株主権益の保護において画期的な変化が予想されます。これにより企業としては、このような制度の変化にどのように備えるべきでしょうか。本ニュースレターでは、可決された商法改正案の核心内容と主な示唆点についてご案内させて頂きます。
2. 取締役の忠実義務:会社から株主への対象拡大
従来の「会社」に限定されていた取締役の忠実義務の対象を「会社および株主」へと拡大する内容です。改正前の商法第382条の3は、取締役が「会社」のために忠実に職務を遂行する義務のみを規定しており、一般株主の利益を十分に保護できないという批判があり、判例においても、取締役は会社の事務処理者に過ぎない、または会社に直接的な損害はなかったという理由で、株主の利益が侵害された事例において、取締役の責任を否認する場合が多く存在していました。そのため今回の改正商法は、取締役の忠実義務の対象を「会社および株主」へと拡大し、取締役が一般株主の利益も積極的に保護するようにする内容を明示しました。
これにより、少数株主や機関投資家の影響力が強化され、株主代表訴訟や株主直接訴訟等の取締役の責任を追及する訴訟や業務上背任罪告発などの紛争が増加するものと予想されます。特に、系列会社間における合併・分割等の組織再編に関する意思決定と関連し、大株主と一般株主との間で立場の対立が激しい場合、事案によっては刑事問題にまで発展する可能性があります。会社としては、このような改正商法の下において、株主間の立場が大きく対立し得る事項については、意思決定のプロトコルの事前整備が必要です。また、実際にそのような事項について意思決定を行う際には、諸事情を十分に考慮し、それが会社に与える影響だけでなく、一般株主に与える影響も十分に検討し、さらに、一般株主に発生する不利益を補うことができる策も講じるなど、法的紛争の発生を最小限に抑える努力が必要であり、十分な情報に基づき、株主全員の利益を考慮して意思決定を行ったという点についての疎明資料を十分に備えておくことが一層重要になっています。また、積極的なIR活動など、少数株主との透明なコミュニケーションを通じ、あらかじめ株主を説得しておくことで、不必要な葛藤や紛争を事前に遮断する努力を行うべきであるものと思われます。
3. 上場会社社外取締役の独立取締役への名称変更・比率の拡大
改正商法は、上場会社における取締役会の独立性を高めるための方案の一環として、既存の上場会社の「社外取締役」制度の名称を「独立取締役」に変更し、独立取締役の取締役会内の義務選任比率を従来の1/4以上から1/3以上に引き上げる内容に改正されました。独立取締役(independent director)は、会社内の代理人問題、特に、所有と経営の分離による経営陣の代理人問題を最小化し、株主保護を目的として米国で始まった制度です。これまで、韓国の社外取締役(outside director, external director)制度は、実質的な独立性が欠如した経営陣の追認機関に過ぎないという批判を受けてきました。
今回の改正商法は、既存の上場会社の社外取締役の要件と欠格事由をほぼ維持しつつ、用語を「独立取締役」に変更し、独立性と責任をより明確にすることを目的としています。ただし、実質的な変更があるわけではなく、基本的に既存の社外取締役の概念は維持され、上場会社特例規定上の社外取締役が独立取締役に置き換えられる構造です。欠格事由等の実質的な要件には大きな変化がないため、今回の改正は用語の整備と独立性の強調に重点を置いたものと評価されますが、商法施行令の改正を通じて独立取締役の資格要件や欠格事由が強化される可能性もあるため、今後の商法施行令改正の動向を注意深く見守る必要があります。
4. 上場会社監査委員の選任・解任時の3%ルールの拡大適用
今回の改正商法には、前回の改正案には含まれていなかった上場会社の監査委員の選任・解任時における「3%ルール」に関する内容が追加で盛り込まれている点に注目すべきです。現在、商法上、一定規模以上の資産を保有する上場会社が義務的に設置しなければならない監査委員会の場合、「社外取締役」である監査委員を選任・解任する際には、筆頭株主が所有する株式と特殊関係人らが所有する株式とを合算せず、それぞれ3%ずつ議決権を行使することができるのに対し(個別3%)、「社外取締役ではない」監査委員を選任・解任する際には、筆頭株主が所有する株式と特殊関係人らが所有する株式とを合算して最大3%までしか議決権行使ができないように規定しており(合算3%)、ほとんどの会社は、監査委員の選任・解任時に「社外取締役である監査委員」を選任する形で監査委員の選任を行っています。
改正商法により、社外取締役(独立取締役)である監査委員の選任・解任議案の場合でも、筆頭株主は常に特殊関係人らが所有する株式と合算して最大3%までしか議決権を行使することができなくなったため、監査委員の選任・解任に対する筆頭株主の影響力が大幅に低下する可能性があります。また、これまでにも監査委員の選任・解任の件は議決定足数の不充足が問題となっていましたが、合算3%ルールが全面的に適用されると、このような問題が深刻化するおそれがあります。
5. 大規模上場会社における電子株主総会の並行開催の義務化
従来、電子株主総会の開催は取締役会決議事項となっていましたが、2027年からは大規模上場会社の電子株主総会の開催が義務化されます。
現在、一部の上場会社で施行されている電子株主総会は、電子株主総会に出席した株主がリアルタイムで議決権を行使することができない、現場並行型の株主総会のうちの「参観型株主総会」でしたが、改正商法は、電子株主総会に出席した株主もリアルタイムで議決権を行使して決議過程に参加できるものとし、現場並行型株主総会のうち「参加型株主総会」の実施を明文化しました。電子株主総会導入の義務化により、株主総会への参加がより容易になり、少数株主の株主総会参加率が向上することで議決権集中現象の緩和が予想されます。これに関連して、遠隔出席株主が実際の株主であることをどのように確認するのか、また、質問権と同意権をどのように保証するのかが新たに解決すべき問題として浮上しています。会社としては、一次的にITインフラの構築等の技術的な下準備を徹底することは勿論のこと、電子株主総会の導入に伴う株主総会の運営方法の変化にも備える必要があります。
6. おわりに
李在明(イ・ジェミョン)政権の「第1号民生法案」として推進された今回の商法改正は、与野党の合意によって可決されました。集中投票制と分離選出監査委員の拡大は、今後の公聴会を通じて議論することとしながらも、核心的な条項については合意に達しており、企業経営の不確実性に対する懸念と株主の権益保護の必要性との間でバランスを取りました。改正商法は、単純な立法上の変化にとどまらず、コーポレートガバナンスのパラダイム転換と取締役の認識の変化を予告しています。取締役における忠実義務の強化等の改正条項はいずれも、少数株主の権限の強化と大株主および経営陣の牽制という共通した目標を持っており、これは今後の取締役会運営や株主総会戦略に直接・間接的な影響を及ぼすものと思われます。
法務法人(有)世宗の企業支配構造(コーポレートガバナンス)戦略センターは、改正商法に関連し、定款・取締役会規定の事前点検、監査委員選出方法の再設計、集中投票制の導入に伴うリスク分析、支配構造改編シナリオの設計など、多様な問題等に関して蓄積された実務経験と業界最高水準の分析能力を備えています。特に、法務法人(有)世宗の企業支配構造戦略センターは、改正商法の立法趣旨と実務上の争点を総合的に検討し、企業が変化のゴールデンタイム内に実質的なリスクに効果的に対応できるよう、各企業別のニーズに応じたコンサルティングを提供しています。支配構造改編を準備中であったり、株主総会戦略の再整備が必要な企業の場合、今こそ制度変化に先制的に対応できる最適なタイミングであると思われます。
今後、改正商法における取締役の忠実義務や電子株主総会、主要条項別実務適用ガイドライン等については、以降数回にわたって、取り上げることといたします。







