いわゆる「黄色い封筒法」と呼ばれる【労働組合及び労働関係調整法(以下「労組法」)改正案】が、2025年8月21日に国会本会議で採決される予定です。本改正案は、労働条件に影響を及ぼす事業経営上の決定についても労働組合が団体交渉を要求し、争議行為を行うことができるようにするなど、従来議論されてきた法案よりもさらに踏み込んだ内容となっています。
1. 主な改正事項
第一に、現行法では「使用者」は一般的に労働契約の当事者である企業およびその従業員と解釈されています。改正案では、「労働契約の締結当事者でなくても、労働者の労働条件について実質的かつ具体的に支配・決定し得る地位にある者」まで使用者の範囲を拡大しています。
第二に、現行法では、ストライキは「労働条件の『決定』に関する事項に限って」行うことができるとされています。ところが、改正案では、「労働条件に影響を及ぼす事業経営上の決定」や団体協定で定められた賃金、労働時間、解雇、安全衛生などについて、使用者が明確に違反した場合にも、ストライキを行えるようにしています。
第三に、改正案は、労働組合の違法ストライキに対する使用者の損害賠償請求を困難にする内容を含んでいます。使用者による労働組合活動の妨害等を目的 とした損害賠償請求権の行使を禁止するとともに、労働組合が使用者の不法行為に対抗するためにやむを得ず使用者に損害を与えた場合には、その損害賠償責任を免除する内容が盛り込まれています。仮に損害賠償責任が認められる場合でも、組合員個々の組合内での役割や参加の程度などを考慮して個別に賠償額を算定し、労働組合や労働者が裁判所に対して賠償額の減免を請求できるようにしました。
2. 今後の予想される状況
改正案が国会本会議で可決され、制定・施行される場合、下請け企業の労働組合が元請け企業に対して団体交渉を要求するケースが多数発生すると予想されます。これに対し、元請け企業が「自社は下請け企業の労働者の労働条件について実質的かつ具体的に支配・決定し得る地位にはない」と主張し、下請け企業の労働組合の団体交渉を拒否するケースが続出し、いわゆる「使用者性」を巡る紛争が多数発生することが見込まれます。
また、現場でのストライキが頻発する可能性が高く、違法な争議行為や職場の占拠といった事態が発生するおそれもあります。さらに、これまでストライキの対象とされてこなかった企業買収(M&A)や事業再構築、投資などの経営上の意思決定に対しても、労働組合が反対の立場からストライキを実施する可能性があります。
特に、元請け企業が下請け企業の労働者に対する「使用者」として認められた場合には、下請け企業の交代などの元請け企業の経営判断に対して、下請け企業の労働組合が反対ストライキを行う可能性も懸念されます。
3. 企業の対応策
改正案の制定および施行に関連して、企業は以下の点に留意する必要があります。
第一に、企業は、自社が下請け業者の労働者の労働条件について、実質的かつ具体的に支配・決定し得る地位にあると誤認されるおそれのある事実関係が存在しないかどうかを確認する必要があります。
第二に、下請け企業の労働組合から団体交渉の申入れがあった場合、労働組合が要求する各議題ごとに交渉義務が発生するか否かを精査し、その結果に基づいて交渉方針を策定する必要があります。そのためには、団体交渉を担当する組織の強化および担当人員の拡充が求められます。
第三に、経営上の意思決定を行う際には、それが労働条件に影響を及ぼすか否かを事前に検討し、影響を及ぼすと判断される場合は、労働組合との緊密な協議を行うことが求められます。
第四に、ストライキに対する事前の対応策を講じる必要があります。ストライキが発生した場合の労働組合の活動範囲や、使用者が取り得る対抗措置の内容について検討するとともに、違法ストライキに対する証拠の収集方法についてもあらかじめ準備しておくことが望まれます。
第五に、今回の改正案は使用者の範囲を拡大するものであり、労組法全体の体系的な改正には至っていません。そのため、本改正案が制定・施行された場合、その解釈に関して多様な議論が展開されることが予想されます。企業としては、こうした解釈論の動向を適切にモニタリングする必要があります。
法務法人(有)世宗労働グループは、2025年8月6日15時より、今回の労組法改正案に関する企業の対応戦略を検討するウェビナーを開催いたします。
本ウェビナーでは、最も重要な改正点である「使用者性の拡大」を中心に、具体的な法的解釈および実務対応策について解説する予定です。
ただし、本ウェビナーは韓国語で実施されますのをご了承ください。







