1. はじめに

李在明政権の「より強化された」商法改正案が国会本会議を通過しました。この度可決された商法改正案は、7月に公布された改正商法(2025年7月22日法律第20991号として改正されたもの、以下「7月改正商法」といいます。)において省かれていた▲大規模上場会社における集中投票制の義務化、▲監査委員の分離選出の拡大を主な骨子としており、施行は公布日から1年後の予定となっています。

今回の商法改正に伴い、企業と経営陣は、7月改正商法で導入された▲電子株主総会の義務化、▲監査委員選任時の合計3%の議決権制限(従来の個別3%規定の廃止)等と併せて、少数株主の権利が大幅に強化された新たな経営環境に直面することになりました。特に、7月および今回の商法改正により小口株主運動がさらに活発化する中、株主総会の運営方法にも相当な影響を与えるものと思われます。大規模上場会社の場合、今回の商法改正により、理事会(取締役会)および監査委員会の構成だけでなく、その実際の運営戦略にも大きな変化が起こるものと予想されます。

本ニュースレターでは、本会議で可決されたその後の商法改正案の主要内容を整理し、7月および今回の商法改正が企業経営に与える影響と実務上の考慮事項について具体的にご案内させて頂きます。

 

2. 大規模上場会社の集中投票制の義務化

集中投票制とは、株主が有する議決権を特定の理事(取締役)候補に集中的に行使できる制度です。従来の商法では、会社が定款に集中投票の排除条項を定めることで集中投票制を回避することができたため、実際に集中投票制を採用する上場会社は、全体の5%にも満たない状況でした。しかしながら、今般の商法改正により、資産総額2兆ウォン以上の大規模上場会社の場合、定款で集中投票を排除することができなくなりました。 

今回の集中投票制に関する改正内容が注目されているもう一つの理由は、集中投票制が2027年1月1日より施行予定となっている電子株主総会制度と直接関連している点にあります。集中投票方式は、一般投票方式と比べて投票および集計に大幅に時間がかかり、その過程で実務上相当な混乱が生じることもあります。ところが、電子株主総会において集中投票を電子的な方法で実現するためには、単純なシステム構築を超えて、株主とその代理人のユーザー体験(UX)まで考慮した運営体制を整備する必要があるため、実施初期の段階では、現場での株主総会よりもはるかに多くの問題点と混乱が発生する可能性があります。参考までに、電子株主総会の開催義務のある対象会社は大統領令に委任されており、まだ確定には至っていないものの、大規模上場会社となる可能性が高いと予想されています。 

一方、7月改正商法では、電子株主総会制度を導入する際に、ドイツなど一部の国家において採用している電子通信エラー等の不可抗力的な技術的問題によって議事進行に支障が生じた場合、これを株主総会決議の瑕疵と見做さないいわゆる「決議効力免責規定」は含まれていません。したがって、今後の施行令立法の状況を注視する必要があるものの、現時点では、電子システム上の技術的問題により議事進行の中断や参加が制限された場合、これは株主総会の決議の取消または不存在の事由となる構造的リスクを抱えています。 

このような点から、集中投票制と電子株主総会の並行導入は、企業にとって単なる法令遵守の次元を超え、総会運営に何ら問題が生じないよう、事前の徹底した点検とリハーサル、システム復旧および二重化戦略を含む多角的な実務上の対応が求められることに留意する必要があります。 

 

3. 大規模上場会社における監査委員分離選出の拡大

上場会社は、株主総会で理事(取締役)を選任した後、選任された理事(取締役)の中から監査委員会委員を選任することが原則となっています。しかし、監査委員分離選任制度は、監査委員会委員となる理事(取締役)を一般の理事(取締役)とは分離し、最初から監査委員会委員となる理事(取締役)として選任する方式です。現行商法では、上場会社が監査委員会を設置する場合、監査委員会委員のうち少なくとも1人は分離して選任するものと定めており、定款に規定がある場合には、2人以上を分離して選任することも可能です。 

ところが、今回の改正商法では、監査委員のうち少なくとも2名は一般理事(一般取締役)と分離して選任し、定款規定により最大3名まで分離選任が可能となるよう規定されています。経済改革連帯の分析によると、分離選任をすべき監査委員の数を2人に拡大し、それに集中投票制を適用すれば、外国人株主が監査委員会に理事(取締役)を即時参入させられる会社が全体の約32%に達するほど、少数株主の参入の可能性が大幅に高まります。 

特に、監査委員の分離選任制度の拡大は、2025年7月の改正商法で導入された「筆頭株主合計3%ルール」と融合する場合、その影響力はさらに拡大する虞があります。従来は、筆頭株主とその特別関係人は「社外理事(社外取締役)である監査委員」を選任する場合、各自別途で3%ずつ議決権を行使することができたのに対し、7月改正商法は、2026年7月23日以降に開催される株主総会からは、これらが保有する株式をすべて合算して3%までしか行使できないように制限しています。これにより、少数株主が連合する場合、1人ではなく2人の理事(取締役)を理事会(取締役会)/監査委員会に送り出すことも可能になります。このような場合、大多数の上場企業が監査委員会を3人体制で運営している現状において、相当な変化が生じるものと予想されます。 

 

4. 結び

今回の改正商法の規定は、商法施行令で定義されている大規模上場会社(直近事業年度末現在の資産総額が2兆ウォン以上の上場会社)を対象としているものの、最近、これに関する商法施行令の改正の動きも見受けられるため、今後の商法施行令の改正動向に注目する必要があります。

今回の商法改正案の国会通過は、単なる制度変更に留まらず、理事会(取締役会)および監査委員会の構成およびその実際の運営方法、さらには全体的な企業統治構造にまで直接的・間接的な影響を及ぼすものと見込まれます。企業としては、7月の商法改正および今回の商法改正内容が会社のガバナンス構造に与える影響および効果を詳細に分析し、必要に応じてこれに対応するための内部体制の整備を検討していく必要があります。 


法務法人(有)世宗の企業支配構造戦略センターは、改正商法に関連し、定款・理事会(取締役会)規定の事前点検、監査委員選任方式の再設計、集中投票制導入に伴うリスク分析、支配構造改革のシナリオ設計など、様々な課題・問題について豊富な実務経験と業界トップクラスの分析力を備えています。特に、当社の企業支配構造戦略センターは、改正商法の立法趣旨と実務上の争点を総合的に検討し、企業が変化のゴールデンタイムを逃さず実質的なリスクに効果的に対応できるよう、各企業別のアドバイス等を提供しています。企業支配の改編を準備中または株主総会戦略の見直しが必要な企業の場合、今こそ先制的な制度改革に対応できる最適なタイミングです。