法務法人(有限)世宗の『関税ニュースレター』は、主な関税の動向や最新のニュースを逸早く把握して綿密に分析を行い、輸出入企業、関係機関の意思決定にお役に立てるよう、その具体的な内容および関連の考慮事項についてご案内させて頂きます。 |
地域的な包括的経済連携(韓国名は「域内包括的経済同伴者協定」とされており、以下「RCEP協定」といいます。)とは、Regional Comprehensive Economic Partnershipの略語として、日中韓の三カ国、豪州・ニュージーランドおよび東南アジア諸国連合(ASEAN)締約国の総勢15カ国が参加するアジア太平洋地域における多国間自由貿易協定であり、韓国の場合、2022年2月1日から協定が発効されました。
これにより、関税庁は、RCEP協定の発効とともに、スムーズな執行に向け、関税行政の運営指針を公表し、以下では、RCEP協定の原産地規則に関連する主な内容を中心に検討していきます。
原産地規則の概要
RCEP協定においては、(i)いずれの当事国において完全に獲得・生産された商品(完全生産)、(ii)一つ以上の当事国からの原産地材料により、いずれの当事国で生産された商品(原産地の材料でのみ生産)、(iii)非原産地の材料を用いていずれの当事国において生産したものの、品目別の原産地規則の要件を満たす商品(品目別原産地基準の充足)を原産地商品として認めています1。
ここで、品目別原産地基準は、RCEP協定附属書3-ガに規定されていますが、韓国がすでに締結済みの他のFTAと類似するものの、最新の生産工程を反映し、地域内の供給活用の極大化等に向けて一部基準が緩和されました。
<主な業種別の原産地基準(PSR)構造2>
業種別 | 品目別原産地基準の構造 |
化学 |
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石油・衣料 |
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鉄鋼 |
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自動車 |
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機械、電気・電子 |
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農畜水産物 |
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加工食品類 |
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原産地証明書の発給(作成)
RCEP協定関税の適用を受けるためには、当該商品に対する原産地証明が行われる必要がありますが、原産地の証明は、(i)指定された機関から発給された証明書または、(ii)認証輸出者が自主作成した証明書(自律証明3)でなければならず、証明書は、英語で作成し、(i)署名版(紙)または(ii)電子版4の形態で発給することができます。
韓国の場合、税関または大韓商工会議所において原産地証明書を発給5します。原産地証明書の発給を申請しようとする者は、当該輸出品目の船積み前までに輸出届けの受理証明書の写し、インボイスまたは取引契約書、原産地疎明書、原産地確認書等の必要添付書類を準備し、発給機関に対して申請しなければなりません。なお、業者別またはRCEP品目別の原産地認証の輸出者は、添付書類の提出が免除されます。
業者別またはRCEP品目別の原産地認証の輸出者の場合、自律証明の原産地申告書の作成権限があり、現在、協定付属書3-ナ(最小情報要件)第2項に規定されている下記の情報6が盛り込まれたいかなる書式でも、使用可能となっています。自律証明の原産地申告書には、証明者の氏名とサイン、作成日が記載されていなければなりません。
<原産地申告書の最小情報要件>
① 輸出者の氏名および住所 ② 生産者の氏名および住所(知っている場合に限る) ③ 輸入者(荷受人)の氏名および住所 ④ 商品名、HS 6単位 ⑤ 認証輸出者の場合には、認証番号または輸出者および生産者の識別番号 ⑥ 固有の参照番号 ⑦ 原産地決定基準 ⑧ 原産地申告書に明示されている商品が協定第3章の全ての要件を満たすという認証された署名権者の証明 ⑨ 協定第2.6(関税車別)によるRCEP原産地国家 ⑩ FOB価格(原産地地位決定に地域内価値包含割合を用いた場合に限る) ⑪ 商品の数量 ⑫ 連結原産地申告書の場合、原本の発給番号発給日の最初の輸出国、RCEP原産地国家が適用可能な場合、最初の輸出当事国の認証輸出者の認証番号 |
また、原産地証明書は、発給または作成日から1年間有効で、韓国の場合、協定発効日の2022年2月1日から発給または作成が可能です。ただし、韓国の協定発効日において、未だに協定が発効されていない国家については、当該国家の協定発効日から発給または作成が可能となります。
協定関税の適用時点
RCEP協定関税は、韓国の協定発効時点である2022年2月1日零時以降から輸入申告される物品につき適用され、韓国の協定発効時点以降に作成または発給された原産地証明書に基づき、協定関税の適用申請が可能です。
ただし、RCEP協定による原産地商品として韓国の協定発効日当時に、(i)運送中の物品、または(ii)保税倉庫に保管中の物品、または(iii)自由貿易地域の指定および運営に関する法律第2条第1号による自由貿易地域にある物品の場合、原産地証明書が協定発効日から180日以内の2022年7月30日までに作成され、直接運送の立証書類とともに提出される場合に限り、2022年7月30日までに協定関税の適用を申請することができます。
協定関税の適用申請は、原則として、輸入申告が受理されるまでに行わなければならないものの、輸入申告の受理までに申請できなかった場合、輸入申告受理日から1年以内に事後申請をすることができます。
原産地証明の提出免除
課税価格が200ドル(USD)以下の輸入物品は、原産地証明の提出が免除されますが、次の場合には、原産地証明の提出を免除しないものと規定しています。
<原産地証明提出免除除外対象>
① 物品を分割して輸入するなどの物品の課税価格が200ドル(USD)を超えないように不正な方法を用いて輸入する物品の場合、または ② 当該輸入が当初計画されていた一連の輸入の一部を構成する場合 |
RCEP協定は、全世界の人口と交易量の相当部分を繋ぐ世界最大規模のFTAとして、韓国の輸出入企業らにとっては新たなチャンス要因になるものと見られます。特に韓国は、現在日本と個別のFTAを締結していなかったものの、日本もRCEP協定国として日本との交易物品についても特恵関税の適用が可能になったという点で、注目する必要があります。ただし、RCEP協定は、多国間FTAとして既存の二者間FTAとは異なる側面の細部的な原産地規則があり、関税節減等の効果を最大限に得るためには、原産地規則に関して綿密に確認する必要があるものと思われます。
よって、輸出入企業は、RCEP協定の積極的な活用に向け、法律専門家のアドバイスを通じてRCEP協定の原産地規則に関する細部確認を行い、特恵関税の適用から新たな活用モデルの開発およびそれによるリスク管理システムを備えておくことが何よりも重要であるといえます。
上記の内容につき、ご質問等がございましたら、下記の連絡先までご連絡ください。より詳細な内容について対応させて頂きます。
1 原産地商品の認定は、RCEP協定第3章(原産地規則)のすべての適用可能な要件を充足しなければならず、完全生産と原産地材料でのみ生産された商品は、当該商品の品目別原産地基準とは無関係に、原産地の地位が認められます。
2 関税庁の公表する「RCEP発行による関税行政運営指針」9頁のRCEP品目別の原産地基準の現況をご参照ください。
3 輸出者・生産者の自律証明(完全自律証明)方式は、協定発効後10年以内(カンボジア、ラオス、ミャンマーは20年以内)に施行されるものと規定され、我が国の施行時期は未定です。
4 輸入国で特例を適用する際に認められる原産地証明の電子版の形態は、締約国別に異なり、上記表は参照用として各締約国別の認定基準はRCEPのホームぺージにて確認する必要があります
5 各締約国別の原産地証明書の発給機関はRCEPホームページで確認できます。
6 今後締約国間の履行交渉を通じて標準書式が制定される予定です。
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