今年から国内では、米国自動車技術者協会 (SAE)基準の自律走行レベル3段階の乗用車が市場展開されるなど、本格的な自律走行時代の幕開けとなる予定であるところ、2022年4月20日からは、自律走行システムと自律走行自動車等の自律走行に関連する定義規定、自律走行自動車ドライバーにおける遵守事項とその違反による処罰の根拠等を新設した道路交通法の一部改正案(法律第18491号、2021年10月19日公布)(以下「本件改正案」といいます。)が施行されます。その具体的な内容については、次のとおりです。
1. 主な内容
- 自律走行システムと自律走行自動車等の規定新設
本件改正案は、「自律走行自動車」を(i)『自動車管理法』第2条第1項の3に基づく自動車(すなわち、ドライバーまたは乗客の操作なしに自動車による運行が可能な自動車)とし、(ii)自律走行システムを備えている自動車として定義されました(第2条第18の3号)。ここでの「自律走行システム」とは、『自律走行自動車常用化促進および支援に関する法律』第2条第1項第2号に基づくシステム(すなわち、ドライバーまたは乗客の操作なしに周辺状況と道路情報等を自ら認知・判断し、自動車を運行できるようにする自動化の装備、ソフトウェアおよびこれに関連する全ての装置)を意味し、同システムは行政安全部令を通じ、完全自律走行システム、部分自律走行システム等とにその種類が細分化される予定です(第2条、第18条の2号)。さらに、道路で自律走行システムを用いて車馬または路面電車を使用することもまた、「運転」の定義に含まれるように規定しました(第2条第26号)。
- 自律走行自動車ドライバーの遵守事項およびその違反に対する処罰根拠の制定
行政安全部令にて定めることとなる完全自律走行システムを備えていない自律走行自動車ドライバーは、当該システムの直接運転要求に遅滞なく対応し、操向装置、制動装置等を直接操作して運転する義務を負い、これに違反する場合には、20万ウォン以下の罰金や拘留または過料に処されます(第50条の2第1項、第156条第6の2号新設)。
また、ドライバーが自律走行システムを用いて運転する場合、運転中の携帯電話の使用、放送等の映像受信や再生をする装置の使用および操作を禁止する道路交通法第49条第10号、第11号、第11号の2の規定が適用排除されるものとして、自律走行自動車ドライバーの義務を緩和することにより(第50条の2第2項新設)、自律走行システムを使用する自律走行自動車のドライバーは、運転中の携帯電話使用や映像等の視聴が可能になります。
2. 示唆点
今年下半期から国内外の完成車メーカーらがレベル3段階技術を搭載している自律走行自動車を本格的に市場に発表するものと予想されるところ、本件改正案は、このような自律走行レベル3段階システムが搭載されている 車両発売に対応するために先手の措置をとったものと判断されます。
このように、本件改正案は、自律走行レベル3システム搭載車両の国内常用化における土台づくりをするという点で、大きな意味があるところ、関連事業者として、後続で行われる行政安全部令(すなわち、道路交通法施行規則)の改正の経過についても、注意深く検討していく必要があるものと思われます。
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