1.背景

雇用労働部長官は最近、フリーランス・特殊形態労働従事者・プラットフォーム従事者等を保護するため、今年5月1日のメーデーに合わせていわゆる「労働法パッケージ」の立法推進を明らかにしました。「労働法パッケージ」は、労務提供者を勤労基準法上の勤労者として推定する「勤労者推定制」と、それでも勤労者として 推定 されない者を保護する「働く人の権利に関する基本法」を包括しています。勤労者推定制に関連して現在6つの勤労基準法改正案が国会に提出されているものの、報道によると、雇用労働部はキム・ジュヨン議員による代表発議案を基本とする立法を推進しています(以下「改正案」といいます。)。改正案に基づく勤労者推定制の主な内容とその示唆点は、以下のとおりです。

 

2.主な内容

1)「勤労者推定」の明文化および「証明責任の転換」

  • 現行制度においては、労務提供者が自ら勤労者であることを証明しなければなりません。
  • 勤労者推定制が導入されると、「他人の事業のために自らが直接労務を提供する者」(以下「労務提供者」といいます。)は一旦『勤労者』と推定され、労務受領者(以下「事業主」といいます。)が『勤労者ではない』ことを反証しなければ勤労者性が否定されません。
  • 勤労者推定制が導入されたとしても勤労者性の如何は、従前の大法院判例における勤労基準法上の勤労者性判断基準に従います。

2)適用範囲:勤労基準法関連の「民事紛争」

  • 改正案は『この法律(勤労基準法)に関連する紛争解決において勤労者と推定する』という規定を新設し(法第104条の2第1項)、提案の理由およびその内容において「民事的紛争」に勤労者性の推定を適用する内容になっています。賃金・退職金・各種手当の支給請求、懲戒解雇等の無効確認、損害賠償請求等がその代表的なものです。
  • 雇用労働部長官も最近のメディアインタビューにおいて『刑事処罰規定には適用しない』と明らかにしているものの、刑事告訴等も「勤労基準法に関連する紛争解決」の一環である点から、刑事訴訟への適用の有無については、今後の立法経過を見守る必要があります。

3)勤労監督官の資料提出要求および調査権限の明示

  • 刑事罰と連動する雇用労働部への陳情(申立)・告訴・告発等の事件において、勤労監督官は労務提供者の勤労者性を確認するため、労務受領者(事業主)に対して資料提出を要求することができます。
  • 労務受領者は正当な事由がない限り、勤労監督官の要求に従わなければならず、違反した場合には過料(500万ウォン以下)が賦課されることがあります。

 

3.示唆点および企業における対応策

  • 勤労者推定制が導入されたとしても、実際の勤労者性の有無については、既存の大法院判例における勤労基準法上の勤労者性判断基準に従うため、実体的な側面では、現在のケースと比べても大きな違いがないと見ることもできます。 しかしながら、勤労者推定制が導入されれば、労務提供者の勤労者性は一旦推定されるという点において、企業側としては、勤労者性を否定するために従前よりもはるかに強化された証明努力を傾けなければならないだけでなく、万が一、そのような証明努力にもかかわらず、法院が非勤労者性について確信を持てなくなると、最終的に勤労者性が認められる結果となるでしょう。
  • このように、勤労者推定制は、勤労者性の認定において労務提供者に有利に作用するため、現在も頻繁に勤労者性の如何に関する争いが発生している事業分野(例えば、社内協力会社を通じて製造または役務サービスの提供を受けている場合や、フリーランス・特殊形態労働従事者・プラットフォーム従事者等を主に利用している事業分野)では、そのような争いがより頻繁に発生する可能性があり、ひいては、そのような争いが集団化する様相を呈するケースも増えるものと予想されます。
  • したがって、上記のような形態で労務提供を受けている企業においては、勤労者推定制の導入に備え、社内協力会社やプラットフォーム従事者等との契約関係および労務提供の実質について再検討し、その検討結果に基づき、勤労者性推定を覆すうえで否定的に作用し得る業務の運営や人材運用の方式を改善するとともに、勤労者性推定を覆して独立事業者性を裏付ける様々な証明方法も事前に準備しておく必要があります。


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