[1] 電力取引価格の上限に関する告示改正案の行政予告

産業通商資源部は、2022年5月24日「電力取引価格上限に関する告示」の一部改正案を行政予告しました(行政予告の期間は2022年5月24日から2022年6月13日の20日間)。行政予告の期間が終了すれば、規制改革委員会の審査を経て改正案が確定となります。

改正案は、韓国電力が発電事業者らから電力を購入した後に精算する価格である系統限界価格(以下「SMP」といいます。)につき、燃料が急騰するなど、緊急の事由が発生する際にその上限を設定する緊急精算上限価格制(以下「SMP上限制」といいます。)を導入するためのものとして、同制度が導入される場合、産業通商資源部長官は、石炭・LNG・石油等の燃料価格の不安によりSMPが急騰する場合、SMPの上限を一定水準で制限することにより、発電事業者に対する精算額を下げることが可能になります。

 

[2] 改正案の主な内容

電気事業法第33条第2項において、産業通商資源部長官は、電気使用者の利益保護のために必要な場合には、電力取引価格の上限を定めて告示できると規定しているところ、同改正案は、当該規定の委任を受けて制定されたものです。改正案の主な内容は、①施行条件、②上限水準、③施行方法、④適用対象等になります。

条項 区分 内容
第4条第2項 施行条件 電力価格が急騰するとき*
*電力価格が急騰するときとは、直前の3カ月間のSMP加重平均値が過去10年間(直前の4カ月~123カ月)月別のSMP加重平均値の上位10%に該当する場合を意味する。
第4条第3項 上限水準 過去10年間(直前の4カ月~123カ月)月別のSMP加重平均値の125%
第4条第4項 施行方法 ① 産業通商資源部長官は、施行日と上限価格を告示して電力取引所に通知
② 電力取引所は、通知を受けた内容を会員社に知らせ施行日から取引に反映
第4条第5項 適用対象 SMPで精算される全ての発電事業者*
*韓国電力発電子会社6社、区域電気事業者10社、集団エネルギー事業者27社、自家用電気設備設置者24社、その他の民間企業56社、新再生可能エネルギー発電事業者4,698社等の総勢4,821社

 

[3] 示唆点

産業通商資源部は、SMP上限制を導入する趣旨は、発電事業者の過度な超過利益を制限し、燃料価格が急騰する状況において、電気消費者に対して被害が転嫁されることを防ぎ、電気消費者を保護するためであるとしながら、発電事業者が支払うべき実際の燃料費は、別途補償する予定であるため、発電事業者が負う実質的な損失はないという立場を明らかにしています。

しかしながら、発電事業者らは、SMP上限制が適用される場合、SMPの精算収益は減少する反面、これに対する燃料費の実費補償は相対的に微々たるものであるという点から、これは最近深刻化している韓国電力の赤字を発電事業者がそのまま負担することになる構造だと反発しています。また、政府が人為的にSMPに介入することは、市場の歪曲を深めるだけであるという指摘に繋がっています。

新再生可能エネルギー発電分野に関連し、電気事業法は、新再生可能エネルギーについては、韓国電力が電力市場でSMPにより電気を優先して購買できるものとして規定しているところ(電気事業法第31条第4項)、従前にSMP+RECの固定価格契約を締結している事業者の場合、SMP価格とは無関係に、固定価格での精算が可能であるものの、固定価格契約を締結していない事業者の場合、SMP価格の上限が定められることにより、事業収益が減少する可能性があります。これにより、発電事業者らは、改正案の行政予告期間中における意見受入れの手続きだけでなく、行政予告期間以降の規制改革委員会の審議の動向についても注視する必要があるものと判断されます。

 

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